本誌『ベストカー』にて、毎号技術系の最新情報や気になる話題をお届けしている「近未来新聞」。
今回は自動配送ロボットの公道実験、日本の研究機関が発見した石油を作るプランクトン、中国の自動車走行データの取り扱いについてなどをお届け!
※本稿は2021年9月のものです
文/角田伸幸 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年10月10日号『近未来新聞』より
■無人ロボット公道実験 警察庁が指針を公開!
急増する宅配荷物をさばく救世主として、実用化が待たれる自動配送ロボット。7月にはホンダが楽天と組んで公道での実証実験を始めるなど、各社が取り組みを急いでいるが、このほど警察庁が、自動配送ロボットで無人の公道実験を行う際の道路使用許可基準を公開した。
基準にはロボットの定義や走行場所、許可の条件といったことが規定されているのだが、注目すべき点をまとめると以下のようになる。
●ロボットの大きさは車椅子が基準となり、長さ120cm、幅70cm以下。
●動力は電気モータとし、最高速度は時速6km。
●走行場所は歩行者に準じ、路肩または歩道とする。
●無人走行の前に監視者や操作者が付き添う有人走行を240時間以上行うこと。
●通信遅延などによってロボットが停止した場合は、現場に急行できるなどの安全確保措置が明確になっていること。
これらを読むと、無人配送ロボットの姿がだいぶ明確になる。しかしそれだけじゃない。筆者が画期的と感じたのは、左上の表のとおり無人配送ロボットを7つに区分けしたことだ。
区分では、7〜5は監視・操作者がロボットに付き添う近接型で、4〜2が今回の許可の対象となる遠隔型となる。遠隔監視も必要ない完全自律型は区分1となるが、これはまだ想定していないようだ。
今後は街角で、ちっちゃなロボットが走る姿を見ることも増えるはず。楽しみだ。
■日本が見つけた石油を作るプランクトンとは
お次は夢のある話。2013年、日本の海洋研究開発機構(JAMSTEC)が、豊橋技科大などと共同で北極海の植物性プランクトンの調査を行った。そこで採取したプランクトンの数種類が、なんと石油と同じ炭化水素を合成する能力を持っていたのだ。
ユーグレナのように、炭化水素を合成する生物自体は発見例がある。とはいえ炭化水素には連なる炭素の数で無数の種類があり、そのままでは資源として役立たない。
今回の発見が凄いのは、そのプランクトンが作る炭化水素が、まさにガソリンやディーゼルとなる炭素数とドンピシャリだったことだ。その一致具合は、プランクトンを発見したJAMSTEC関係者が「うっかり石油が混じっていると思った」と言ったほどだから、その凄さがおわかりいただけるだろう。
脱炭素の流れから冷たい視線を浴びる化石燃料だが、航空機などの分野では自動車のような電動化が難しく、当面その存在に頼らざるを得ない。仮に植物性プランクトンから石油が採れるとすればカーボンニュートラルなバイオ燃料となり、業界に絶大な恩恵をもたらすことは確実だ。
発見されたプランクトンは炭化水素の合成量が少なく、今後の改良が待たれる。とはいえ日本発の久々の快挙。ぜひ実用化させてほしい!
コメント
コメントの使い方