■ムダが多く理解しがたいオデッセイ販売終了 小さいクルマシフトが進むホンダ
上記のような車種の整理が進むと、国内で売られる全長が4400mm以上のホンダ車は、ステップワゴン、シビック、アコードのみになる。それ以外はすべて軽自動車とコンパクトな車種で占められる。
そしてこの状況は、今の時点でも相当に進んでいる。2021年に国内で新車として売られたホンダ車のうち、N-BOXが33%を占めた(直近の2022年2月は38%)。N-WGNなども含めた軽自動車全体になると、2021年に国内で新車販売されたホンダ車の57%に達する。そこにコンパクトなフィット、フリード、ヴェゼルを加えると85%になるのだ。
逆にステップワゴンやシビックなどの全長が4400mmを上まわる車種は、すべてを合計しても国内販売総数の15%に過ぎない。つまりオデッセイ、レジェンド、今後行われる可能性のあるCR-Vの廃止は、「ホンダ車のコンパクト化」をさらに推進させてしまう。
仮にホンダが現状を打開してミドルサイズ以上の車種を盛り返したいと考えていたら、少なくともオデッセイは廃止しない。堅調に売れているからだ。現行オデッセイの発売は2014年だが、2020年11月に、フロントマスクまで大幅に刷新するマイナーチェンジを実施した。その後の売れ行きは、コロナ禍の中でも伸びており、2021年の登録台数は2020年の2.2倍に達する。1カ月平均なら1760台だ。
この登録台数は決して多くないが、オデッセイの売れ筋価格帯が350~450万円に達することを考えれば、廃止するには惜しい販売実績だ。2020年11月に大幅なマイナーチェンジを実施して、売れ行きを伸ばしながら、1年後に廃止というのもムダが多く理解しにくい。
販売会社から見ても、オデッセイは堅調に販売できる粗利の多い商品になる。特にメーカーの資本に依存しない地場資本の販売会社は、オデッセイに力を入れることが多い。販売店では以下のように説明している。
「オデッセイには30年近い歴史があって知名度も高い。ホンダ車を使うお客様やご友人がLサイズミニバンを求められた時、オデッセイはちょうどいい選択肢になる。またオデッセイは、今も昔も走りのよさではライバル車をリードしている。走りで妥協しないミニバンが欲しいお客様は、歴代のオデッセイを乗り継がれている」
このようにオデッセイは、ユーザーと販売会社の両方から愛されている大切な商品なのに、ホンダは廃止した。
なぜオデッセイを廃止するのか、その理由をホンダの商品企画担当者や開発者に尋ねると「今まで生産していた狭山工場を閉鎖することになった」「オデッセイは高価格車だが、メーカーとしては意外に儲かっていない」といった話が聞かれる。
狭山工場の廃止は事実だが、同工場で生産していたヴェゼルは鈴鹿製作所に移され、新型ステップワゴンも埼玉製作所で生産する。それならオデッセイも、埼玉製作所に移して生産を続ける方法はあっただろう。
それをせずにオデッセイを廃止したのは、ホンダが国内市場を、軽自動車とコンパクトな車種で完結させようと考えているからだ。国内で売られるホンダ車の約60%が軽自動車で、そこにフィット+フリード+ヴェゼルを加えると85%に達するなら、この流れに逆らわず小さなクルマに集約すれば合理的と考えた。
ホンダのブランドイメージはすでにダウンダイジングを開始しており、この流れを汲み取れば、オデッセイなどに力を入れるのは確かにムダでリスクも伴う。
そして新型ステップワゴンは、外観を穏やかに仕上げてヴォクシー&ノアと異なるリラックスできる価値観を与えた。この考え方はライバル車との競争も避けられてメリットになるが、新しいステップワゴンを象徴するグレードのエアでは、安全性を高めるブラインドスポットインフォメーションなどの装備を装着できない。
そうなると結局は、必要な装備を得るために従来と同じスパーダを選ぶことになり、ヴォクシー&ノアと同じ土俵で勝負を強いられてしまう。
新型になったヴォクシー&ノアは、エンジン、ハイブリッドシステム、プラットフォームを刷新させ、安全装備と運転支援機能も進化させた。新型ステップワゴンがこの強豪に立ち向かうには、価値観の異なるエアを磨く必要があるのに、それができていない。
今のホンダ車は、居住性、内外装の造り、走行性能、乗り心地、燃費などについては、いずれも優れている。トヨタに負けることはない。しかし各グレードに装着される装備、価格設定、発売時期、販売方法などについては、ユーザーのニーズに沿っていないことが多い。
仮に新型ステップワゴンのエアが装備の乏しい状態で発売されると、個性を十分に発揮できない。ヴォクシー&ノア、2022年後半に登場する新型セレナとの競争に負けてしまう。シビックも売れ行きを大幅に伸ばせるとは思えないから、国内市場におけるホンダの小型化は、ますます進んでいく。
言いかえれば、ホンダがスズキやダイハツに近付くわけだが、この2社は古くから軽自動車を中心に扱ってきたから、販売店まで含めて低コストで成立している。ホンダがスズキやダイハツのように商売するのは簡単ではない。
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