■サンルーフはコンパクトカーにそぐわなくなった?
概況はさておき、ルーフが開閉する装置であるサンルーフの機能を具体的に説明していこう。
可動機能としてルーフパネルの一部(主に前席上部)にスライドやチルトアップ(ルーフラインから後部側が傾斜して上昇)を備え、スライド機能としてはパネルをルーフ内部に収納するタイプと外部にせり出させるアウタースライド式がある。
最近ではパネル部の素材はガラス製が多数を占め、はめ込み式とされて開閉できないタイプが多くなりつつある。ガラス製ルーフがややこしいのは、パネルが可動なのか否かという点で、個人的には開け閉めができないはめ込み式をサンルーフとは呼びにくい。
とはいえ、換気機能はもたずとも日射しを採り入れる効果はあるので、開放感は得られる。遮光するためのシェードも電動化されるなど、細かい進化も見逃せない。
メーカーとしてサンルーフを装備に設定するか否かは、軽自動車やコンパクトカーではサンルーフの装着が燃費性能、実際の燃費に関わってくる。ガラス化が進んだパネル素材も軽量化や多機能化が進み、生産面での扱いやすさも増している。
いっぽうで、システム全体としてはルーフパネルを利用したタイプで10kgを切る製品があれば、大型ガラスルーフのように20~30kgと嵩張るものもあるが、いずれにせよ重量増加は避けられない。
前述のように現在流行りのミドルクラスのクロスオーバー系SUVなどであれば、コンパクトモデルに比べて燃費への影響が少なくて済むので、メーカーが採用に関して腰が引けることはないだろうが、実燃費を重視する顧客が多い軽自動車やコンパクトカーでは設定しにくいことは確かだ。
■「ムーンルーフ」の謎とは?
ここでサンルーフの呼び方について捕捉しておくと、サンルーフとムーンルーフに機能的に違いがあるかといえばそうではなく、トヨタはサンルーフとほぼ同様の仕様の装備品をムーンルーフと呼んでいる。
加えておくと、「パノラマ」の呼称はガラス部の面積が広いこと(前席から後席前方あたりまで届くなど)を指し、「パノラマムーンルーフ」であれば前部が開閉できると捉えてよい。
どうやらトヨタがサンルーフの開発を進める過程で、他社との差別化のために可動式のガラス製サンルーフを「ムーンルーフ」と名づけたようで、現在ではメーカー各社がスカイルーフやパノラマガラスルーフなど、それぞれの特長を生かした名称でサンルーフを販売しているが、「数の力」の影響でムーンルーフの呼び名が広まったようだ。
結果として、トヨタ車では「パノラマムーンルーフ(チルト&スライド電動[フロント側]、ワンタッチ式、挟み込み防止機能付)」といった少々くどい機能説明が加わって、装備表に記載されている。
トヨタの資料によれば、ムーンルーフ、ツインムーンルーフ、パノラマムーンルーフの大まかな違いは以下のようになる。
・ムーンルーフ……フロントのみ
・ツインムーンルーフ……フロントとリア
・パノラマムーンルーフ……フロント~リアまで
■メーカーごとに変わるサンルーフ設定の傾向
それでは、日本メーカーのサンルーフの設定状況を確認してみよう。「設定あり」での表記は順に、車名、ルーフ種類、設定方式となる。なお、断り書きがなければ「メーカーオプション」は全グレードでの設定となる。
●トヨタ
主にグループ傘下の部品メーカーのアイシン精機が生産を手がける「ムーンルーフ」は、メーカーオプションとしての設定には、当然ながらメーカーとしての商品性に対する意図が現れてくる。
2020年以降に登場したモデルを見てみると、革新的といえるのは、ハリアーにトヨタで初採用された「調光パノラマルーフ」だ。ガラス製ルーフパネルを透明・白濁の各モードに切り替え可能。特殊フィルムを挟み込んだ複層構造の合わせガラス(ガラス素材メーカーのAGC製)を採用して実現した。
最新モデルといえるカローラクロスは、パノラマルーフ(電動サンシェード付)、廉価グレードといえるGを除いて設定。トヨタのラインナップでサンルーフを装備するSUV系車種では、最もコンパクトなモデルとなる。
●カローラクロス
2021年9月発売のクロスオーバーSUVであるカローラクロス。C-HRやプリウスとGA-Cプラットフォームを共有している。パノラマルーフ(電動サンシェード付&挟み込み防止機能付)を備えるクロスオーバーSUVとしては、トヨタでは最もコンパクトなモデルとなる。
続く表を見ていくと、北米など海外市場がメインとなるカムリやRAV4に「パノラマムーンルーフ」を設定していることがわかる(プラットフォームは共通のGA-K)。
ランドクルーザーとランドクルーザープラドは「パノラマ」ではない「チルト&スライド電動ムーンルーフ」を備え、ランドクルーザーには唯一標準装備としているグレードがある(ZXとGRスポーツ)。
アルファード&ヴェルファイアにはトヨタで唯一の「ツインムーンルーフ」を採用する(サイドリフトアップチルトシート装着車を除く)。ツインと呼ばれるのは前後で動きを個別に作動させることが可能の意。
このように、トヨタは「ムーンルーフ」をコンパクトクラスでは割り切って未設定としつつ、販売台数が見込める車種では設定グレードを細かく吟味して選択している。
●ハリアー
ハリアーにトヨタで初採用された「調光パノラマルーフ」(電動シェード&挟み込み防止機能付)。最上位のZグレードにメーカーオプションとされ、価格は18万円(税抜き)と最も高い価格設定となる。
アイシン精機と大手ガラス素材メーカーであるAGCが生産する複層ガラスパネルは日焼けの原因となる紫外線(UV)を約99%カット、日射しによる暑さの元である赤外線(IR)を90%カットするとしている。調光モード(白濁)と透過モード(透明)の調光(変化)スピードは世界最速を謳う。
●RAV4
全グレードでムーンルーフを設定するRAV4。パノラマムーンルーフ(チルト&スライド電動〔フロント側〕、電動シェード付き)をメーカーオプションとする(RAV4 PHVにも設定)。
価格は13万円(税抜き)。廉価グレードのXのみ「パノラマ」ではないチルト&スライド電動ムーンルーフ(価格:10万円、税抜き)を設定。
●ランドクルーザー300
ランドクルーザーは全グレードでチルト&スライド電動ムーンルーフを、中位グレードのVXとAXでメーカーオプション設定。トヨタのラインナップ唯一上位グレードのZXとGRスポーツで標準装備する。
◆設定なし
アクア、シエンタ、カローラ、カローラアクシオ、カローラスポーツ、カローラツーリング、カローラフィールダー、GRヤリス、パッソ、ヤリス、ルーミー、ノア&ヴォクシー、プリウスPHV、ハイエースワゴン、グランエース、C-HR、ハイラックス、ヤリスクロス、ライズ、プロボックス&サクシード、GRスープラ、センチュリー、ジャパンタクシー
◆設定あり
・プリウス:チルト&スライド電動ムーンルーフ、Aプレミアムにメーカーオプション
・カムリ:パノラマムーンルーフ チルト&スライド(電動)ワンタッチ式、レザーパケージにメーカーオプション
・クラウン:ムーンルーフ マイコン制御電動チルト&スライド、G、RSアドバンスにメーカーオプション
・ミライ:パノラマルーフ(電動ロールシェード付) Z&Zエグゼクティブパッケージにメーカーオプション
・アルファード&ヴェルファイア:ツインムーンルーフ(前:チルト、後:電動スライド、挟み込み防止機能付)、メーカーオプション
・カローラクロス:パノラマルーフ(電動サンシェード付)、廉価グレードGを除きメーカーオプション
・RAV4:パノラマムーンルーフ チルト&スライド電動(フロント側)(電動シェード付)、メーカーオプション
チルト&スライド電動ムーンルーフ 廉価グレードのXにメーカーオプション
・RAV4 PHV:パノラマムーンルーフ チルト&スライド電動(フロント側)(電動シェード付)、メーカーオプション
・ハリアー:調光パノラマルーフ 電動シェード付き、Zにメーカーオプション
・ランドクルーザー:チルト&スライド電動ムーンルーフ、ZXとGRスポーツに標準装備、中位グレードのVXとAXでメーカーオプション
・ランドクルーザープラド:チルト&スライド電動ムーンルーフ、メーカーオプション
●レクサス
いうまでもなく北米市場など海外での販売のメインとなるレクサスは、抜かりなく全車種で「ムーンルーフ」を採用している。LXは標準装備としているのはさすがの設定といえる。ちなみに、強烈なスポーツ性をウリとするFシリーズのRC Fには設定されていない。
●NX
レクサス初のPHEVとして登場したミドルクラスSUVであるNX。パノラマルーフ(IR・UVカット機能付 チルト&アウタースライド式、450hは未設定)とムーンルーフ(チルト&スライド式)の2タイプをメーカーオプションとして選択できる。
◆設定車種
IS:ムーンルーフ(チルト&スライド式)、4WDを除きメーカーオプション
ES:標準装備
LS:ムーンルーフ(チルト&アウタースライド式)、500hの“アドバンストドライブ”は標準、その他はメーカーオプション
LC:ガラスパノラマルーフ、Lパッケージに標準装備
RC:ムーンルーフ (チルト&アウタースライド式)、メーカーオプション
CT:ムーンルーフ (チルト&アウタースライド式) 、標準仕様を除きメーカーオプション
UX:ムーンルーフ (チルト&アウタースライド式) 、メーカーオプション
RX:パノラマルーフ(チルト&アウタースライド式、450hのFスポーツFWDのみ設定なし)、ムーンルーフ(チルト&スライド式)、メーカーオプション
NX:パノラマルーフ(IR・UVカット機能付 チルト&アウタースライド式、450hは設定なし)とムーンルーフ(チルト&スライド式)の両者をメーカーオプション
LX:ムーンルーフ(チルト&スライド式)、標準装備
コメント
コメントの使い方新型アウトランダーPHEVに付けた。 マイカーでは2代目プレリュード以来。高原をドライブするとき全開すると気持ちいいね。
床下にバッテリー重量があるから、トップヘビー感は全くない。
夏場の駐車で室内の換気を早めたい時も重宝する。つけてよかったと思っている。
ブッチャケいうと、洗車時の屋根面積が減ることもメリットとしてあった。
このクラスのSUVの屋根は広大だから、ガラス部分は適当にできるので楽。