プリウスα
ミニバンなのかステーションワゴンなのか、カテゴリー分類に困るプリウスα。しかし、それはオールマイティなクルマだったことを意味しているように思う。
大ヒットを記録したZVW30型プリウスのホイールベースを80mm延長し、拡大されたスペースに3列目シートを備え7人乗りとした。トヨタハイブリッドでは初めて、リチウムイオン電池を採用したクルマでもある。(5人乗りはニッケル水素電池)
販売店に対して、プリウス検討ユーザーから寄せられた「狭い」「使い勝手が悪い」等の不満を、一手に解消するクルマとした登場したプリウスαは、プリウスの武器である燃費の良さはそのままに、開放的な室内空間と多人数乗車を実現した。さらにシート位置を高くし、見晴らしを良くしたことで、運転のしやすさもプラスしている。
ウィッシュやストリームといった、背の低いミニバンが姿を消し、プリウスαも一代限りで生産を終えた。明確な区分けができず、行き先を見失った感が否めないが、プリウスαというカテゴリーを作ってもいいくらい、出来の良いクルマだった。
販売現場では、とにかく売りやすさが際立ったクルマだ。メーカーからは見限られたが、販売側には支持者が多く、フルモデルチェンジを期待されていた。ブームに流されず、安定して売れるクルマだっただけに、消滅は残念でならない。
FJクルーザー
観音開きドアや3本ワイパー、レトロスタイルのエクステリアに愛着を覚える。逆輸入車が人気となり、国内市場に本格導入された、北米向けSUVがFJクルーザーだ。
全長4635mm、全幅1905mmという迫力のボディに、4.0LのV6エンジンを搭載する。ランクルやプラドのように7人乗りは設定されず、あくまでも2列シートの5人乗りを貫いた。
丸形ヘッドランプや空力をほとんど無視したような角張ったエクステリアデザイン、混じりっ気のない純粋な赤・青・黄色のボディカラーからは、どこか懐かしさを感じられる。無骨に見えるクルマだが、経済成長していた日本の勢いを感じられるクルマだろう。今風に言えば、「エモい」という言葉がよく似合う。
機能性や効率といったものを無視した「遊び」の部分が、クルマの可能性を広げてくれる。昨今のクルマは完璧すぎて、ユーザーが「使う」ことしかできない。FJクルーザーのように足りない部分を残し、ユーザーが「工夫して作り上げる」ことが、自動車文化の醸成には、必要だと思うのだが。
ソアラ
ソアラは、トヨタが本気で作った、最後の高級クーペだと思う。また、レクサスだけではなくトヨタもここまでやるぞという、気持ちの入ったクルマだった。
現在のラインナップでは、GR86やスープラといったスポーツクーペは存在するが、ソアラのようなラグジュアリークーペはない。販売台数は限定的でも良いから、ソアラのようなクルマがあると、そのブランドが明るくなるように思う。
収益確保のために無駄を省くというのが、今の王道的やり方だが、結果同じようなクルマが増え、クルマを見ることが楽しくなくなった。ディーラーのショールームには、ソアラのような「魅せる」クルマを飾っておきたい。
ソアラが活躍していた時代と比べて、「クルマを観に行く」ということが減った昨今。顧客の来店型営業スタイルを貫くのなら、「見る」ではなく、「観たい」と思えるクルマを揃えたいところだ。
時代が変わり、人々の興味が変わって、絶版となっていった個性豊かなクルマたち。簡単に復活は望めないかもしれないが、今よみがえればどう受け入れられるのか。そんな想像をしてみるのも面白い。
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