中国EVの全世界を見据えた大攻勢がはじまった トヨタ ホンダ 日産… 国内メーカーはどう受けて立つ??【第4回/全4回】

■「未来のクルマ」を「ガソリン車の延長」と考えない国が勝者となる

 このトヨタとソニーに関する記事は、いずれも「アメリカ発」のニュースであり、日本を代表する両社を肯定的に捉えた記事だった。

 そこで私は、『日経新聞』を両手に持って、左右の記事を見比べながら思案したのだ。果たして「EV戦争」の勝者となるのは、トヨタだろうか、ソニーだろうか?

 どちらかの株を買えと言われれば、私ならソニー株を選ぶ。

 なにせ株式の時価総額で見た場合、いまやトヨタばかりか、日本車7社を合計しても、創業して20年未満でEVしか作っていないテスラの半額程度にすぎないのだ。

 これは、市場がすでに既存の自動車メーカーを見限っていることを意味しないだろうか?

 そんなことを思っていたら、3月4日に「続報」が飛び込んできた。

 ホンダとソニーが今年中にEVの合弁会社を設立し、2025年にEVを発売するというのだ。

 両社の創業者である本田宗一郎と井深大が生涯の友だったことを鑑みれば、両社の「邂逅」は肯ける。いや、もし本田&井深両氏が健在ならば、もっと早期にタッグを組んだことだろう。

 EVをガソリン車の延長と考えるホンダと、エンターテイメント空間の延長と考えるソニーは、発想と立場が異なる。それでも、相乗効果を生むだろう。かつ、自動運転が普及するまではホンダが主導し、普及後はソニーが主導していく気がする。

2021年12月14日、16台のモックアップモデルとともに2030年までのEV戦略を発表したトヨタ。EVでも世界を驚かす準備はできている……!?
2021年12月14日、16台のモックアップモデルとともに2030年までのEV戦略を発表したトヨタ。EVでも世界を驚かす準備はできている……!?

 いずれにしても、来たるEV時代、自動運転時代においては、「既存の自動車メーカーvsIT系企業」、「日本vs中国」という二重の戦いが、いっそう熾烈になっていくのは間違いない。

 5~10年後に自動運転時代が本格化していけば、現時点で予想するかぎり、「IT系企業>既存の自動車メーカー」「中国>日本」となる可能性がある。つまり、「日本のガソリン車の王者」が敗者になるということだ。

 なぜなら、中国やIT系企業は、未来のクルマを「ガソリン車の延長」ではなく「走るスマホ」「スマートシティの一部」と捉えているからだ。

 スマホ製造で日本メーカーは敗北して久しいし、スマートシティで世界の最先端を走っているのは、中国のファーウェイだ。

 日本の自動車メーカーには、この先も先頭を走り続けてほしい。そう強く思う。ホンダとソニーの合弁会社設立は、日本の自動車メーカーが生き残るためのひとつの「解」なのかもしれない。

●近藤大介…1965年生まれ。東京大学卒業、国際情報学修士。講談社『現代ビジネス』『週刊現代』特別編集委員、編集次長。主著に『ファクトで読む米中新冷戦とアフター・コロナ』(講談社現代新書)、『アジア燃ゆ』(MdN新書)ほか

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