なぜトヨタbZ4Xは定額制だけ? EVとサブスクは本当に相性が良いのか

気になるEVのバッテリー劣化と再利用対策とは

 リチウムイオンバッテリーの劣化は、十数年前に、三菱i‐MiEVや初代リーフが発売された当時に比べはるかに改善され、中古車価格が大きく値崩れするようなこともなくなっている。

 中古車価格の下落の可能性はエンジン車も同じであり、新車時に不人気であったり、同じ車種でも車体色によって下取り価格に差が生じたりしてきた。下取り値段を気にする日本人の多くが、無難な白いクルマしか買わないといった様子が長年あった。

 しかし逆にいえば、数百万円もするような高額商品を買うのであれば、自分が好きな色のクルマを買ってこそ、満足感は高まるのではないだろうか。不人気車種でも、自分が好きだと思うクルマを買う方が、暮らしを活き活きできるのではないか。

 海外でも人気車種や人気の車体色はあるが、下取り値段を気にして好きな色を買わない話は聞いたことがない。海外では損得だけでなく、自分の人生をいかに充実させられるかに重点が置かれているといえる。一度買えば、数年は共にするクルマなのだから。

 廃車後のバッテリー回収について、リチウムイオンバッテリーは、EVとしての役目を終えたあとも60~70%の容量を残すため、そのまま廃棄したり、素材へリサイクルしたりしたのでは、製品を使い切らず捨てることにつながる。

 そこで、再生可能エネルギーによる発電の後ろ盾となる充電や、緊急時の停電防止の支援といった使い道がある。

初代リーフ発売前の2010年9月にフォー・アール・エナジー社を設立。リチウムイオンバッテリーの二次利用の事業を展開している
初代リーフ発売前の2010年9月にフォー・アール・エナジー社を設立。リチウムイオンバッテリーの二次利用の事業を展開している

 EV後のリチウムイオンバッテリーをいかに回収できるかが、資源の有効活用や、自然環境保護を踏まえた持続可能な社会づくりに役立つ。また二次利用では、製造での二酸化炭素(CO2)排出を考慮せず設置できる。EV製造時にすでに計算済だからだ。

 日産自動車は、初代リーフ発売の前にリチウムイオンバッテリーの二次利用に備えたフォー・アール・エナジー社を設立し、すでに事業をはじめている。JR東日本の踏切の警報装置の支援として、それまでの鉛酸からリチウムイオンバッテリーの二次利用品へ交換している。

 数年で交換が必要だっていた鉛酸バッテリーが、二次利用のリチウムイオンバッテリーなら10年近く交換せずに済むようになる。しかも充電時間は短く、導入原価も4割ほど安くできる。このため、無線設備などへの拡大採用なども検討されている。

 いっぽう、トヨタ自身、どのような二次利用の仕方があるのかまだわからないと述べている。事業化していないのだから当然だ。そして確実な回収こそがまず重要だとするが、EVはリーフの例にもあるように、どこでどのように使われているかは通信によってすべて情報を把握できている。

 サブスクリプションやリースのほうが回収作業は容易だろうが、販売しても回収できないわけではない。

 起業の都合で消費者の選択肢を制限するのは本末転倒だ。消費者は、常に自由な選択肢を得る権利があり、その後の対策は企業が責任を負うべきである。EVよりはるかに安いスマートフォンでも、メーカーが回収に携わっている。

 そのうえで、サブスクリプションやリースは、EVに限らず、今日の暮らしに浸透した物の利用形態であるのは事実だ。

サブスク時代へ 自動車業界はいかに

 過去20年以上所得が上昇しない現代にあって、手持ちの収入のなかでいかに快適で充実感のある暮らしを営むかというとき、使える金額の範囲内で利用できれば、日々喜びを引き寄せることができる。定額払いはそのための生活術だ。

 スマートフォンはもとより、音楽の配信や、スポーツジムの利用など、様々に定額利用による利便性と安心がある。

 これまで意識されることの少なかったクルマの利用においても、EVであるかエンジン車であるかを問わず、サブスクリプションという選択肢はあり得る。さらに広がるだろう。現金一括やクレジットと別の選択肢が、消費者に新たな機会をもたらす。

 クルマの利用にサブスクリプションやリースが日本で導入されることは歓迎だ。同時に、所有する喜びを味わいたい人もあっていい。ところがサブスクリプションやリースに限定するのは、企業の都合でしかない。無駄な手間はかけたくない、余計な損はしたくないという話だ。

 もちろん損をしないクルマの買い方を好む人もいていい。だが、EVだからエンジン車に比べ不安や心配が大きくなり、それを回避するには、定額料金の利用が無難だという発想は、もはや10年前の遺物といえるだろう。

 逆に、もしいまもそう自動車メーカーや輸入業者が考えるのであれば、現在の技術をもってしても、よほど商品に自信がない証拠といえるのではないか。

 EVの市場導入の遅れは、単に商品性の遅れだけでなく、意識の遅れともなり、将来に禍根を残すことになりかねない。選択肢が限定されるほど、顧客は離れ、他社のEVに目が行くことになるかもしれない。

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