ディーラー側からみる値引きと利益の話
ディーラーが車両販売時に得る利益(ディーラーマージン)は、ユーザーが思うよりも大きい。故に、よほどの小型車や軽自動車でない限り、大幅値引きをしたとしても、ディーラーが赤字で販売するということはないだろう。
ただし、あなたが値引き要求をして削った利益のなかには、そのディーラーを支えるお金や、ディーラーで働く人を支えるお金が入っていることを忘れてはならない。
誰しも、何かしらの財やサービスを提供して利益を得る仕事をしていることだろう。循環する経済のなかで、値引きを要求することは、追々自分自身が受けるはずの利益を削ることにもつながりかねない。
現在のディーラーでは、値引きゼロでクルマを販売することは、ほとんどないと考えていい。ディーラーでは、あらかじめ値引きのパーセンテージを決めているから、黙っていても該当するパーセンテージまでは値引きを入れて契約書を作ってくれるはずだ。車両本体なら2~3%、メーカーオプションなら5%、ディーラーオプションなら10%程度が相場となるだろう。
また、販売する側から見ると、過大な値引きを求めてくるユーザーと相対していると、悲しみがこみ上げてくる。自信をもって提供している商品の価値を否定されているように感じるのに加えて、営業マンとしての自分の価値、ひいては人間としての自分の価値まで疑うこともあった。
こうしたときには、「これだけの値引きをしなければ、この人には、このクルマも私も価値が合わないということか」と考え、筆者は身を引くようにしていた。
販売をしてから、オーナーと濃密な時間を過ごす自動車営業の世界では、売ったあとの方が大事な時間となる。値引き中心のお客様とは馬が合わないので、筆者個人としては目先の利益よりも、仕事のしやすさを優先に、商談を進めていた形だ。
一昔前は、利益や台数を求めて、値引きに走る営業マンが多かったが、最近のディーラーを見ると、全てのお客様を「平等・公平」に扱うお店(営業マン)が増えてきたと思う。消費者側の質が高まったことも、一つの要因となっているはずだ。
一過性であり、不公平感の強い値引きよりも、公平で質の高いサービスを提供するお店を、ユーザーが選ぶようになっている。特に若い世代は、値引き競争はせずに、雰囲気やアクセスなどの利点でお店を選び、クルマを購入している印象だ。
正直、クルマの「値引き」文化は、売る側にも買う側にも、どちらにも得を生んでいないと思う。サービスの質を下げ、ユーザーの評判を下げ、揚げ句に大切な愛車の下取り価格も下げてしまう。
完全競争市場は存在しないが、少なくとも、ユーザーが買うか買わないか、その判断を正確に行うだけで、モノの価格はある程度、適正に決まっていくのだ。悪しき「値引き」の慣習は令和で終わりにして欲しい。
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