企業同士の取引の場で行われる「商談」。個人の消費活動では、ほとんど行われることのない行為である。この企業活動で使われる商談文化が、個人の消費活動に根強く残っているのが、自動車販売だ。
各販売店の決算時期を迎え、クルマの商談が本格化する時期がやってきた。そこで本稿では、「商談」を行う上で注意したい、営業マンがイラっとくるひと言について解説していく。元ディーラー営業マンの筆者自身も頭に血が上った、怒りのスイッチを入れる言葉の数々を紹介していこう。
文:佐々木 亘
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■営業マンが行う「商談」と、ユーザーが行う「交渉」が違う
コンビニでおにぎりを買うのに商談はない。それはコンビニが140円で売っているおにぎりに対して、消費者が「その値段なら買うよ」と即時合意をしているからだ。合意をしない場合は、140円を払わない代わりにおにぎりが手に入らない。あまり意識はしていないが、消費者は常にお店と「合意」して、モノを買っているのである。
この「合意」を行うために、交渉や相談を行うのが「商談」だ。基本的に商談は、売り手が自社のサービスやモノに対するプレゼンを行い、買い手に購入(契約)の意思決定をしてもらう場の事を指している。
つまり、営業マンから「このクルマは、良いところがこんなにあって、これだけの価格のものを、今ならこれだけ安くするので、買ってくださいよ」というのが商談のあるべき姿。ユーザーがお店にやってきて、「このクルマをこれだけ安くしろ!そうしたら買ってやる」と一方的に言いつけるのは商談とは言わない。よく言えば「交渉」であり、場合によっては文句やクレームの域に達するものもあるわけだ。
■「あっちの方が安かった」はNGワード
ディーラー営業マンは、「商談」をするために、日々鍛錬している。丹精込めてプレゼンし、クルマを買ってもらうために、技術や知識を磨き上げているのだ。
そんなところに一番やってきて欲しくないのは、来店早々にコミュニケーションもなく見積もりを作らせ、言葉を浴びせる客である。筆者がよく受けていたイライラワードはコレだ。
「あっちの店の方が安いから、ここではそれ以上の値引きじゃなければ買わない」
同様に、「他の店ではもっと頑張っている」「ここは高いな、やる気あるのか」といったものも基本的には避けたほうが良い。
営業マンとの熟成された関係性があれば話は別だが(この裏には、他のところにはいかないから、もう少し安くしてねという気持ちが見えるから)、一見さんや初取引のお店で使うべきワードではないのだ。
正直、こういう人に対して、筆者は「だったらあなたの言う安いところで買ったらいい」と思っていた。「他のところでも同じように言って値引きを求めているのだろう、であれば深追いはしないからご自由に」と交渉を受けずにお引き取り願う。
複数社で値引き競争をさせたいユーザーは、特に注意すべきだ。比較するなら営業マンからのプレゼンを受けた後にすること。他社の金額だけではなくプレゼン内容全体を比較する「商談」をして欲しい。
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