USオデッセイにスポーツグレード登場で考える「ホンダにとってオデッセイはどんなクルマだったのか?」

■北米でミニバンは「サッカーマミーズカー」と揶揄された

 北米では、初代オデッセイはほかのミニバンに比較して居住性が狭かった理由もあり、あまり売れなかった。そこで、2代目USオデッセイはボディサイズも大きくし、北米ニーズに着目した商品で企画検討して販売した。これが北米市場では一大ヒット商品になった。そのクルマを日本で販売したのが、ラグレイトであった。

北米版2代目オデッセイを逆輸入して1999年から2005年まで販売されたホンダ『ラグレイト』。日本国内向けオデッセイよりボディとエンジン排気量を拡大し「ゆとりある上級カナダ製ミニバン」として日本で販売された
北米版2代目オデッセイを逆輸入して1999年から2005年まで販売されたホンダ『ラグレイト』。日本国内向けオデッセイよりボディとエンジン排気量を拡大し「ゆとりある上級カナダ製ミニバン」として日本で販売された

 私が3代目USオデッセイのLPL(開発責任者)として北米市場を調査し、生のユーザーの声を聞いた時に感じたのは、ミニバンは一般的に「サッカーマミーズカー」(母親が子供のサッカーの送迎に使う足)として便利なクルマだったものの、格好よく思われていなかったというものだ。

 当時、そのようなユーザー心理もあり、北米では3列シートSUVの人気が出始めていた。ただし、SUVの3列目の居住性はミニバンほどの居住空間がなく、窮屈なレベルだった。このようにミニバンは便利な足だが、運転する人の気持ちを高揚させないクルマになってしまった状況を打破し、サッカーマミーズカーと揶揄されないクルマを企画して開発することを目指した。

■4代目BMW7シリーズを目標に開発された3代目USオデッセイ

2005年から2010年まで販売された北米版3代目オデッセイ。4代目BMW7シリーズを目標に開発された3代目は、北米で2008年から2年連続ベストセラーミニバンとなった
2005年から2010年まで販売された北米版3代目オデッセイ。4代目BMW7シリーズを目標に開発された3代目は、北米で2008年から2年連続ベストセラーミニバンとなった

 そのためには、環境安全性能をトップにするとともに、存在感のある素敵なスタイリング、「FUN TO DRIVE」を体感できる走行性能、快適で楽しさあふれる居住空間&装備を目指して、企画立案した。

 企画当初、ミニバン競合車を目標にするのではなく、当時、発表販売されたBMW7シリーズ(4代目E65 型)を目標にして開発した。

 3代目USオデッセイで目指した乗り味は、単にスポーティな走りではなく、ドライバーと路面/環境とのコミュニケーションがリニアで人車一体感があり、上質な乗り心地だった。その結果、発表販売前にカリフォルニアのテストコースでホンダディーラーの社長たちが試乗し、4代目BMW7シリーズを日頃乗っている社長が素晴らしい乗り味であると評価してくれた。

 また、北米では、タイヤがパンクしたら、交通事故や盗難などさまざまな危険性があるので、北米ミニバンとして初の量産ランフラットタイヤ(パンクしても低速走行できるタイヤ)を設定した。このランフラットタイヤは、3代目オデッセイのためにミシュランと共同開発したPAXタイヤであった。おかげさまで、ユーザーから好評だった。

 日本市場でのオデッセイは、多人数乗用車のなかでは乗用車ライクな乗り味を持っていたが、さらに上質な乗り味を目指して、「Absolute」グレードを設定した。「Absolute」は、多くのユーザーに評価され、オデッセイのブランドイメージ向上に貢献した。

 このように、オデッセイはスポーツカーと違って多人数乗用のミニバンという難しい条件でも、単なるスポーティではない上質な乗り味を提供してきた。それは日本、北米ともにそれを目指して実車を提供してきた。その評価もあって2008~2009年の北米ミニバン販売実績で3代目USオデッセイはトップに立つことができた。

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