■多角的な戦略の日本 バイオディーゼル燃料の量産開発も推進
欧州での政治的な動きを受けて、欧州メーカーの中では英国のジャガーや、スウェーデンのボルボなど完全EVブランドへの転身を決断するメーカーも出てきた。
その一方で、フォルクスワーゲンやアウディは、I.D.シリーズやe-TronなどEVブランドを展開するのと並行して、日本市場向けには最新TDIを導入するなど、これまでどおり多様なパワートレインを導入する戦略をとっている。その理由は、販売する国や地域の社会実情には大きな違いがあるためだ。
これは、マツダも同様だ。マツダの丸本明社長は常々「社会インフラに応じて、導入するモデルやエンジンラインアップが異なるのは当然のこと」という経営方針を示してきた。
その上で、サスティナブルZoom-Zoom宣言を基に、2012年のCX-5を筆頭に始めたマツダ第六商品群、CX-30を皮切りとしたスモール商品群、そしてこのたびCX-60から導入を進めるラージ商品群のそれぞれで、クリーンディーゼルSKYACTIV-Dの熟成を進めてきた。
そもそも、SKYACTIV-Dは、ディーゼルエンジンのクリーン化で大きな課題であるNox(窒素酸化物)に対する高い対応力により、その名を世界に轟かせた。ドイツメーカー各社はSKYACTIV-Dに対して「排ガスの後処理でのコストが極めて低いことに驚く」とコメントしてきた。
最新型の縦置き3.3Lクリーンディーゼルについても「トルクアップと燃費、さらにエミッションの低減を実現している」(マツダエンジン開発幹部)という発想が欧州メーカーの度肝を抜いた。従来の2.2Lに比べて、全トルク領域で燃費が向上し、また高トルク領域でNoxを低減しているからだ。
マツダはSKYACTIV開発当初から「理想の燃料に向けたロードマップ」として、燃焼にかかわるさまざまなパラメーターに対する研究開発を愚直に進めてきた。その中で、クリーンディーゼルについてもマツダ独自の量産技術を確立してきたという自負がある。
その技術は、日本を含めてさまざまな国や地域のユーザーから大きな支持を得ている。そのうえでマツダは、これからもクリーンディーゼルを、EV量産と並行しながら、量産を続けている構えである。
さらに、日本のスーパー耐久レースを舞台に、バイオディーゼル燃料の量産化に向けて、ユーグリナや大学などと共同開発する社内プロジェクトを積極的に推進している。
また、日本自動車工業会としても、「敵は炭素」「頂点に向けた山の登り方はさまざまある」といった表現で、欧米でのCO2規制とは一線を介するかたちでの、EV、水素、クリーンディーゼルなど多角的な戦略でカーボンニュートラル実現を目指しているところだ。
このように、クリーンディーゼルは、これからもまだまだ進化するポテンシャルを秘めている。
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