「対向車のヘッドライトが眩しい!」
特に街灯や施設がない暗い夜道を走ることが多いドライバーから、以前にも増してそんな声を聞くケースが増えてきた。
軽自動車から高級車まで、どんな車にも付いているヘッドライト。その種類はいくつかあり、実はここ15年ほどで主流は新しいタイプへと移行。かつてと比べて明るいヘッドライトを採用する車が劇的に増えている。
この「明るさ」は「眩しさ」と関係があるのか? 実はヘッドライトの誤った使い方も、「眩しさ」を助長する原因となっている。
文:永田恵一
写真:編集部、SUBARU
かつての主流派ヘッドライトは少数派に
今から15年ほど前までヘッドライトの主流はオーソドックスな電球を使うハロゲンヘッドライトだった。
ハロゲンヘッドライトの体感的な明るさは、ヘッドライトのレンズ(ケース)のカットなどによる差も多々あるが、「実用上問題ないが、暗く感じることもある」といったところだった。
そこで当時、自動車ファンに限らずよく行われたのが、明るいハイワッテージハロゲンバルブ(電球)への交換だった。
ハイワッテージハロゲンバルブへの交換は、5000円程度で済む費用対効果の高いチューニングだが、落とし穴もあった。
それは日本車では20年程前から採用が始まった色が青白いハイワッテージハロゲンバルブだ。
青白いハイワッテージハロゲンバルブは、雨の降っていない夜なら明るく、HIDヘッドライトのようなルックスがカッコよかったものの、雨の夜になると見にくく感じる場合が多く、当時「あれに交換したのは失敗だった」という声をよく聞いた。
今でも全体的なコストが安いハロゲンヘッドライトの需要は、価格の安い車を中心に根強い。
明るさは従来比2倍! HIDヘッドライトの出現
その一方で、ハロゲンヘッドライトに対し“プレミアムなヘッドライト”として台頭したのが「HIDヘッドライト」だ。
家庭の蛍光灯のような仕組みでハロゲンヘッドライトに対し、約2倍の明るさと20%以上の広い照射角を持つ。
電力消費は約3分の2、寿命は2~3倍という性能を持つHIDヘッドライトは、1990年代初めにル・マン24時間のような夜間走行があるレースで鍛えられた。
その後、日本車では1996年登場の日産テラノやX100系のマークII三兄弟のツアラー系(スポーツモデル)が先駆けとして採用。その高い性能に加え、青白い光や“ジワッと点く”といった見た目のカッコよさも魅力だった。
当時は価格が高く、高級車かスポーツモデルにしか純正装着されなかったこともあり、車好きには憧れの装備のひとつだったが、15年ほど前から200万円以下の車にも標準装備されるようになり、普及が進んだ。
今や軽にも普及! LEDヘッドライトの明るさは?
そして現在、HIDに変わる存在となっているのが「LEDヘッドライト」だ。
2007年登場のレクサス LS600hで世界初採用されたLEDヘッドライトは、HIDと明るさ自体はそう変わらない。
しかし、LEDヘッドライトは、ハロゲンヘッドライトの3分の1程度の消費電力で、寿命はハロゲンヘッドライトの約5倍。
小型化によるデザイン性の向上やオートマチックハイビーム機能との組み合わせやすさに代表される自由性の高さといった絶大なメリットを持つ。
デメリットとして考えられるのは、省電力ゆえヘッドライトケースに伝わる熱も少なく、雪が解けにくいことだろう。
LEDヘッドライトもHIDヘッドライトと同じく、登場当初は大変高価だったが、大量生産によるコストダウンにより、今では軽自動車にも標準装備されるほど普及が進んだ。
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