約20年でガソリンスタンド半減!! それでも不安なEVの「充電問題」 究極の打開策は?

ガソリン価格上昇中!! 希望は電気自動車にあり??

日本のEV普及を進めるきっかけとして期待される新型軽乗用EVの日産サクラ
日本のEV普及を進めるきっかけとして期待される新型軽乗用EVの日産サクラ

 ガソリンスタンド軒数が減ることによって給油に不便を覚えるようになるのはもちろん、燃料価格も高止まりする懸念がある。ドイツの事情に詳しい知人によれば、ロシアのウクライナ侵攻による燃料の高騰で、ドイツではガソリン価格が平均で296円/Lになっているという。

 ことに欧州は、ロシアに石油や天然ガスを依存してきたので、情勢次第ではこうした燃料価格にもなるということだ。また中東のUAEでも、ガソリン価格が60%も上昇し、EVが新車販売の30%を占めるようになったそうだ。

 そこに登場したのが、新型軽乗用EVの日産サクラと三菱eKクロスEVである。日産も三菱自も、国内市場の約4割を占める軽自動車のEV誕生に、大きな期待を寄せている。

 EVであれば、もはやガソリンスタンドへ行く必要はない。近場の移動や、通勤などでの利用が中心的になるとみられる軽乗用EVでは、自宅での基礎充電がなおさら前提となり、急速充電での課金に比べ、電気代はより抑えられることになるだろう。

 概算だが、日産サクラの1km走行あたりの電気代は、約3.7円と試算できる。ガソリンエンジン車の日産デイズは、7.6~8.4円(自然吸気エンジンと、ターボエンジン)/kmのガソリン代になる。

 自宅で充電すれば、燃料代がほぼ半分になるのである。三菱eKクロスはデイズより燃費性能がよいので、ターボエンジンでも6.7円ほどになるが、それでも電気代のほうが45%ほど安く済む。

 ガソリンスタンドの減少によって、地域によっては数キロメートルから十数キロメートルも離れたところまでわざわざ給油をしに行かなければならない事情も生じており、自宅で充電できれば移動の無駄もなくなる。

日本でのEV普及最大課題「充電インフラ」を解決するには?

 いっぽう、日本で最大の課題は、マンションやアパートなど多くの人が住む集合住宅の駐車場に、200V(ボルト)の充電用コンセントを設置できていないことだ。集合住宅の駐車場は、エレベーターなどと同様に住民の共同利用の場となるため、管理組合や理事会などで合意を得られないと工事ができない。

 EV所有者が、管理組合などへ設置を依頼しても否決される事例がいくつもある。理由は必ずしも合理的な内容だけでなく、自分に関係ないといった感情的な場合もあるようだ。

 こうなると、敷地外の急速充電器で充電するしかなく、ガソリンスタンドへ給油をしに行くのと同じことになり、充電時間の問題もあって、30分も時間を潰すのは無駄だという不都合な話にもなりかねない。こればかりは、社会の理解を待つしか解決の糸口が見つからなかった。

 しかし、日常の足としての軽乗用EVとなると、一つの解決策が考えられる。

 コロナ禍によるリモートでの仕事が増えても、現場での作業が必要な製造業などでは、通勤が不可欠で、その通勤用に軽自動車を利用する人は多く、これをEVにすることで個人も企業にも利点が生まれる可能性がある。

 事業所の従業員用駐車場に200Vのコンセントを企業が設置することで、通勤用の燃料代を抑えることができる。個人で支払っているなら社員の交通費の負担が減り、企業も交通費への支援を行っているのであれば、支給額を軽減できる。

 そのうえで、従業員の多くが通勤にEVを利用するようになれば、企業にとっては事業活動のなかでの二酸化炭素(CO2)排出量削減に貢献できることになる。同時に、それはSDGsにつながるともいえるだろう。EV用の充電コンセントの設置が社会貢献と結びつき、企業価値が高まり、投資を促すことにつながるかもしれない。製品に対する消費者の好感度も上がる可能性はある。

 そして就業中に充電を済ませることができれば、帰宅し、翌日の出社に必要な電力は賄えるだろう。日産サクラと三菱eKクロスEVの一充電走行距離WLTCで180kmは、それに見合う性能であるはずだ。

 就業中の充電は、何かほかのことをしている間に充電が完了するという、エンジン車ではできないEVならではの最大の特徴でもある。

 こうして街を走る軽乗用EVが増えていくことで、集合住宅の管理組合などはもちろん、月極駐車場を管理する不動産業界なども、駐車場へのコンセント設置に理解を示し、前向きに対応してくれるようになることを期待する。

 新型軽乗用EVの登場は、いまなお1%以下といわれる日本のEV普及をさらに促す礎になるのではないか。2年後の2024年には、ホンダから軽商用EVが誕生する予定である。

 それは、ガソリンスタンド経営にとってさらに厳しさを増すことにつながるが、軽EVの存在感が増すことで、EVへの世間の理解がいっそう進むことになるのも、時代の趨勢といえるだろう。

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