もしもの事故の被害の軽減に貢献してくれるとされる衝突軽減ブレーキ(AEB)は、2021年11月以降に販売される新型車において装着が義務化されている。
クルマを使い際の安心・安全が高まるのは喜ばしいことなのだが、このAEBも万能ではない。悪い条件が重なると、当初の性能を発揮しにくいのだ。
そこで、ドライバーが注意すべき衝突軽減ブレーキの死角について解説しよう!
文/藤田竜太、写真/AdobeStock(トップ画像=Imaging L@AdobeStock)
■衝突事故が100%防げるわけではない!
2021年11月以降、国産新型車において装着の義務化がはじまっているAEB(衝突被害軽減ブレーキ)。
公益財団法人交通事故総合分析センターが、AEB有無別の10万台当り追突死傷事故件数を調べたところ、普通乗用車の場合、AEBの搭載により追突事故は51.3%も低減できるとされている。
このように、衝突事故の低減に非常に効果の大きいAEBだが、AEBが備わっていたとしても、約半数の衝突事故は回避できない事実がある……。
つまり、AEBがあれば衝突事故が100%防げるというわけではないということ!
にもかかわらず、AEBの普及初期に、「自動ブレーキ」という呼称が広まったために、JAFの実施したアンケートでは、2人に1人(45.2%)が、AEBのことを「ぶつからないように勝手にブレーキを掛けてくれる装置」と誤解、過信していることがわかっている。
そのため国土交通省では、「衝突被害軽減ブレーキは万能ではありません!」という動画を作成し、YouTubeにアップし、AEBは、走行中の周囲の環境や路面の状態等によって、障害物の認知や衝突の回避ができない場合があることを啓発しているぐらいだ。(リンク先)
■AEBの効果が得られにくい状況
具体的には、下記の場合ではAEBの効果が得られにくいとされている。
・メーカーが定める作動速度を超える場合(規定の速度より低速で走行する場合も)
・暗闇、逆光等のためカメラにより対象物を認知できない場合
・人や自転車の急な飛び出し、クルマの急な割り込み
・雨・雪・霧などの悪天候
・急な下り坂や滑りやすい路面を走行等
・運転者がアクセルペダルを強く踏み込んだ場合
その他、(独法)自動車事故対策機構では、下記の場合などもAEBが十分な機能を発揮しない例として挙げている。
・夜間や雨天の場合
・窓の汚れが有る場合
・ダッシュボード上に置かれた物が窓に反射している場合
・検出装置の前に遮断物がある場合
・精度保持のための専門店によるメンテナンスが不足している場合
これらのことから、交通事故総合分析センターでは、以上の3つをAEBの効果が得られにくい条件としてまとめている。
・制動力低下につながる要因(タイヤ摩耗、湿潤・積雪・凍結、急な下り坂、タイヤの空気圧低下、等)
・装置の認知性能低下につながる要因(暗闇、逆光、濃霧、カメラ・受信部の汚れ、センサーの向きのずれ、等)
・視認し難い対象(荷台が飛び出しているトラック、極端に小さい対象、等)
AEBに頼り切らないドライバー自身による安全確保の重要性を啓発しているところだ。
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