なぜいまだに軽の64馬力規制はあるのか? いま乗るべき純エンジン軽自動車 ベスト3

軽自動車の馬力規制が生まれた背景といまだになくならない理由

 軽自動車にはボディサイズや排気量だけでなく、エンジン出力や最高速度などにも制限が加えられている。ボディサイズやエンジン排気量は、本格的に軽自動車の普及となった1960年代から徐々に拡大されてきたが、2000年まで高速道路での最高速度が80km/hに制限されていたため、スピードリミッターは120km/h(2000年以降は140km/h)で働くようになっていた。

 エンジンの出力制限が導入されたのは、1987年にスズキがアルトワークスを発売して、ミラターボTR-XXと馬力競争になる恐れがあったため、当時の64psを上限とした自主規制が導入されたのだ。それでも充分にパワフルで、しかも耐久性などのマージンが充分にあるため、少しブースト圧を上げてやると簡単にパワーが上がり、強烈な速さを発揮したものだ。

 そしてスバルはレックスにスーパーチャージャーを搭載し、三菱からはDOHC5バルブヘッドを採用したミニカダンガンZZが登場、軽スポーツ車の過激っぷりはますます拍車がかかっていった。

 90年代はエンジン排気量が660ccに拡大されるものの、最高出力は64psのままであった。しかし、そんなパワフルなエンジンを利用して、FRスポーツのスズキ・カプチーノやマツダ・AZ-1といった本格的なスポーツカーが登場。ホンダからは、NAながら64psを絞り出すエンジンをミッドシップ化したビートなど、走りの魅力を前面に押し出した軽スポーツが続々と登場した良い時代だった。

 衝突安全性を向上させるため、ボディサイズが現行モデルと同じ全長3.4m×全幅1.48mとされたのは1998年のことだが、このときにも馬力規制は解消されていない。この頃からは海外から日本の自動車市場における参入障壁の一つとして軽自動車の優遇ぶりが指摘されるようになり、これ以上の規制撤廃は軽自動車という規格の撤廃を迫られる恐れがあったからだ。

 結果として軽自動車という規格が存続する条件として、自主規制ながら64ps規制は維持されているのである。しかしエンジンではさらなる省燃費、電動化が求められている昨今、最新の軽自動車には規制撤廃の必要性はあまりなさそうだ。

今のうちに味わっておきたいエンジンを楽しむ軽自動車 3選

新開発のプラットフォーム、エンジン、CVTを採用して2019年に登場した日産デイズ。搭載するエンジンは自然吸気とターボの2種類で、トランスミッションはCVTが組み合わされている
新開発のプラットフォーム、エンジン、CVTを採用して2019年に登場した日産デイズ。搭載するエンジンは自然吸気とターボの2種類で、トランスミッションはCVTが組み合わされている

 スズキ・カプチーノやホンダ・ビートなど90年代の軽スポーツに今なお魅せられるコアなクルマ好きもいるが、買うのも維持するのも大変な旧車は、一般のクルマ好きにはオススメすることはできない。

 そこで軽EVの本格普及を前にして、エンジンの良さを味わえる軽自動車を「今のうちに味わっておくべき軽カー3選」として挙げさせてもらおう。

 まずは現行モデルの日産デイズだ。つまりEVのサクラとはプラットフォームを共有するエンジン車である。サクラほどの加速力は備えていないし、EVならではの低重心な走りとも違うが、日産が初めて作った軽自動車として、とにかくしっかりと作り込まれている。

 ボディ回りは基本的にはサクラに通じるものだし、エンジンはルノーと基本骨格を共有するブロックが与えられ、パワーユニット全体の剛性が非常に高い。走りの質感、エンジンの回転フィールともに軽自動車の中では非常に秀逸だと思う。

 2台目はホンダN-ONE、それもやはりRSグレードを推したい。ホンダS660のミッドシップスポーツとしての走りも当然魅力的だが、実用性の乏しさは誰にでも勧められるクルマではない。であればパワーユニットを共有し、ホットハッチとして実用性と攻め込めるボディをもつN-ONEは、走りが楽しめる軽自動車の最有力候補と言ってもいい。

 先代のN-ONEのRSでも充分に走りを楽しめるが、当然のことながら現行モデルの方がさらに熟成されており、なおかつよりダイレクト感ある6速MTも選択できる。

 最後の1台は、先代のアルトワークスと行きたいところだが、すでに人気もあり、ここで紹介するのは少々面白みに欠ける。なので、ここは初代ダイハツ・コペンを推しておこう。

 ご存知の方も多いだろうが、初代のコペンは登場当時、軽自動車としては異例なほど高価だが凝った作りがされたクルマとしてヒット作となった。

 軽自動車が高くなった今では、当時のコペンの価格は大したことないと思われるかもしれないが、今ほど装備が充実していない時代だけに、クルマの基本構造からしっかりと作り込まれている。そして当時でもすでに珍しいのだが、コペンに積まれているエンジンは4気筒で鉄ブロックの強靭なパワーユニットだ。

 最終モデルでもすでに10年落ちのクルマだが、現行のコペンよりも手応えが重厚で、軽自動車とは思えない乗り味は、未だに他車にはない魅力を感じさせる。以前は逆転現象で現行モデルより高いクルマが目立ったが、最近は走行距離が少なめな個体でも100万円前後で手に入るようである。初代のコペンに乗るなら、今が最後のチャンスと言えそうだ。

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