■超高回転の切れ味が鋭いホンダVTEC
スカイラインGT-RのRB26DETT型に比べて、身近なスポーツエンジンとされたのがホンダのB型だ。
特に1995年に発売されたインテグラタイプRのB18C、1997年に設定されたシビックタイプRのB16Bは、きわめてスポーツ性の高いエンジンだった。DOHC・VTECだが、タイプRは専用パーツを数多く採用している。
インテグラタイプRが搭載したB18C型は、1.8Lの排気量ながら、最高出力は200馬力(8000回転)、最大トルクは18.5kg-m(7500回転)に達する。1L当たりの最高出力は、ターボのような過給器を使わずに111馬力というハイチューンだ。
VTECは5700回転で、低回転用のカムが高回転用に切り換わる。アクセルペダルを深く踏み込んで加速していくと、5700回転でエンジン音が豹変して、機敏な吹き上がりが一層シャープになった。
「5700回転以上回せ!」とドライバーを挑発するする面もあり、やや自制心が必要だったが、スポーツ性の強い刺激的なエンジンであった。最大許容回転時のピストンスピードは、1秒間に24.4mで、当時は世界最速といわれた。
さらにいえば、インテグラタイプRの旋回性能や安定性も、エンジンの性格に良く似ていた。
アクセルペダルを適度に踏み込みながら曲がっていくと、きわめて高い旋回性能を発揮するが、不用意に戻すと後輪の接地性が一気に抜ける。
今は安全を確保するためにスポーツカーでも後輪の安定性を優先させるが、当時のインテグラタイプRは、足まわりの設定がまったく違っていた。少々のリスクを伴っても、上手なドライバーが速く走らせることを優先していた。
インテグラタイプRに比べると、2年後に発売されたシビックタイプRは、バランス型というか走行安定性が勝っていた。
全長は4180mmと短いが、ホイールベースはインテグラの4ドアと同じ2620mmになるから、ボディの前後が切り詰められて慣性の影響を受けにくい。設計も新しく、後輪の接地性と走行安定性が優れていた。
シビックタイプRが搭載するDOHC・VTECエンジンの排気量は、インテグラよりも小さい1.6Lで、最高出力は185馬力(8200回転)、最大トルクは16.3kg-m(7500回転)となる。
最大トルクが控え目で発生回転数は高いから、速く走らせるには高回転域を保つ必要がある。運転技量を磨く楽しさも味わえた。
■世界唯一の量産ロータリーはマツダの最強DNAだ
クルマを育てたエンジンとしては、マツダのロータリーエンジンも挙げられる。特に13B型は、1973年に2代目ルーチェに搭載され、2012年にRX-8が生産を終えるまで、39年間にわたって造られた。
製造開始から間もない1975年には、昭和50年排出ガス規制に対応して、排出ガスを再燃焼させるサーマルリアクターを装着した。この時期には貴重な高性能エンジンであった。
この後は13B型の希薄燃焼タイプも生まれ、1985年には2代目サバンナRX-7がツインスクロールターボを備える13B型を搭載した。このエンジンは、最高出力を255馬力に高めて3代目のアンフィニRX-7にも搭載されている。
ロータリーエンジンはコンパクトで軽量だから、操舵感や安定性を高める上でもメリットが多い。RX-7はロータリーエンジンの可能性をさらに引き出すことも視野に入れて、性能を高めていった。
2002年にRX-7が生産を終えて、2003年に発売されたのがRX-8であった。ボディ形状は居住空間の後部に独立したトランクスペースを備える4ドアセダンだが、ドアは観音開きになり、スポーツクーペ風の外観と後席の優れた乗降性を両立させている。
この13B型エンジンは、メカニズムを大幅に変更した。従来の排気ポート(穴)はローターのハウジング(円周状の部分)に装着していたが、RX-8ではローターの側面に備わる。安定した燃焼効率が得られ、スムーズな回転感覚、クリーンな排出ガス、優れた燃費を両立させている。
ターボを装着しない自然吸気に戻したことも特徴で、RX-8では滑らかなロータリーエンジン本来の回転感覚を味わえた。
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