ガソリン代も電気代も急上昇! 本当にオトクなのはEVかハイブリッドか?

■ガソリン代は本来なら200円超えだが補助金で2割引、170円近辺で安定推移

 ガソリン、ディーゼル(軽油)の価格はどれくらい上がっているのでしょうか。電気料金と同様の過去5年の価格の推移のグラフは以下のとおり、直近の最安値から3〜4割上昇しています。

電気代と比べてこのところのガソリン、ディーゼル(軽油)の価格の上昇が緩やかなのは政府からの補助金によるところが大きい(資源エネルギー庁「給油所小売価格調査」より筆者作成)
電気代と比べてこのところのガソリン、ディーゼル(軽油)の価格の上昇が緩やかなのは政府からの補助金によるところが大きい(資源エネルギー庁「給油所小売価格調査」より筆者作成)

 しかし、次のレギュラーガソリン全国平均価格と補助金の額のグラフをご覧ください。グラフの濃紺の部分はレギュラーガソリン価格の推移、水色の部分は補助金額の推移です。

 本来であれば200円を超えているはずのレギュラーガソリンの価格は、政府から石油元売り各社に支払われる1リットルあたり39.0円【7月28日から8月3日までの水準、ハイオク、レギュラー、ディーゼル(軽油)同額】の補助金により、170円近辺で安定推移しています。

ガソリン補助金
ガソリン補助金

 ガソリン、ディーゼル(軽油)の価格は、補助金のおかげで本来の価格からおよそ2割引されている、と言ってもいいかもしれません。

 したがって、上昇を続ける電気代と比べ、補助金によって安定的に推移しているガソリン、ディーゼル(軽油)の価格が相対的に安くなっており、EVのランニングコスト面での優位性が燃料油への補助金支給開始前と比べて失われています。

■電費と燃費を比較してみると、やはりEVの優位性が失われてきている

 では、実際にEVとEV以外で、燃費を比較してみましょう。結論から言ってしまうと、標準的なドライバーが乗る場合、EVとハイブリッドの電費/燃費の差は、ひと月で900円程度とあまり大きく変わりません。

これまではEVの300万円以上の価格差を電費の良さで大きく相殺できていたが、ガソリン・ディーゼルへの補助金と電力料金の値上がりで事情が変わってきた。出典:各社HPより筆者作成、車両本体価格その他のデータは2022年7月31日現在
これまではEVの300万円以上の価格差を電費の良さで大きく相殺できていたが、ガソリン・ディーゼルへの補助金と電力料金の値上がりで事情が変わってきた。出典:各社HPより筆者作成、車両本体価格その他のデータは2022年7月31日現在
テスラ モデル3
テスラ モデル3

 細かくみていきましょう。最も普及しているEVの一つ、テスラのモデル3 RWDの電費はWLTCモードで127wh/km。

 東京電力の平均モデルでの8月の電力価格は、1kwh(=1000wh)あたり約35円(従量料金26.46円+再エネ促進賦課金3.45円+燃料費調整額(8月)5.1円)なので、カタログ値通りの電費であればテスラモデル3が1km走るのには35円×0.127=4.445円。

 日本の自家用車の平均年間走行距離は約6000kmなので、1ヵ月500km分の電気代は2223円となります。仮にカタログスペックより1割実際の燃費が悪かったとしても、2450円程度です。

トヨタ プリウス(S ツーリングセレクション 2WD)
トヨタ プリウス(S ツーリングセレクション 2WD)

 ではハイブリッド車はどうでしょうか。プリウスの売れ筋グレード、S ツーリングセレクション 2WDのWLTCモードでの燃費は27.2km。ガソリン代が170.4円とすると、1カ月500km分のガソリン代は3132円。909円しか変わりません。

 実燃費が0.9掛けだとすると3480円程度、テスラのモデル3よりも1カ月あたり1000円ちょっと高いということになります。

トヨタ プリウスPHV(S)
トヨタ プリウスPHV(S)

 PHEVだと、プリウスPHEV SのWLTCモード燃費は30.3km、1カ月の燃費2812円、実燃費ベースで3120円程度、モデル3との差は670円ほどに縮まります。

トヨタ カローラスポーツ(ガソリン・G CVT 2WD)
トヨタ カローラスポーツ(ガソリン・G CVT 2WD)
マツダ CX-3(XDツーリング)
マツダ CX-3(XDツーリング)

 ガソリンだと、カローラスポーツG CVT 2WDは同16.4km、5195円、実燃費ベースで5770円程度、モデル3との差は3320円となります。

 ディーゼルだと、マツダCX-3 XD Touring 2WD ATで同20.0km、3760円、実燃費ベースで4180円程度(ディーゼル1リットル150.4円で計算)、モデル3との差は1730円となります。

 現在のエネルギー価格がそのまま続くと仮定すると、テスラモデル3とプリウスとの燃料代の差は1年で1万1000円、5年で5万5000円となり、EVの電気代と、ハイブリッドのガソリン代の差があまり大きくないことが分かります。

 やはり、電気代が1年半で4割近く上がってしまったのに比べ、直近ガソリン、ディーゼル(軽油)価格は政府からの補助金で安定推移していることが大きく影響しています。

「EVは価格が高いけれど、ハイブリッドや純内燃機関車に比べて電費が大幅に安いので、コスト高が相殺される」というこれまでの常識は、燃料油価格への補助金の支給によってやや変わってきていると言っていいと思われます。

次ページは : ■EVのランニングコストはしばらく上昇する可能性が高く、優位性が徐々に失われる

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