自動車を所有していると常について回る「税金」の話。日本の自動車ユーザーには9種類もの税金が課せられている。
この20年間あまり平均賃金が上がっていない現在、これでは自動車ユーザーの数は先細りするばかり。日本自動車会議所の定時総会議事内容から「自動車に関する諸税」の今後を考える。
文/山田清志、写真/AdobeStock(トップ画像=Dilok@AdobeStock)
■9種類もの税金が自動車ユーザーに課せられている現状
「自動車産業は、厳しい経営環境の中にあっても、カーボンニュートラルやSDGsの実現をはじめ、新たな課題に対して、ひとときの休む間もなく、チャレンジをし続けていかなければならない状況にある。
特に『税制』については、本年は車体課税抜本見直しが本格的に議論されるタイミングを迎え、活動を前倒しして展開することを含め、最大の事業として取り組んでいく」
日本自動車会議所の内山田竹志会長は今年6月に行われた第88回定時総会でこう挨拶し、自動車業界550万人の結束を訴えた。同会議所は550万人の自動車関連諸団体を束ねる総合団体の役割を果たしている。
現在、自動車に何種類の税金が課せられているかご存じだろうか。何と9種類もの税金が課せられているのだ。まず取得段階で環境性能割(自動車税・軽自動車税)と消費税、保有段階で自動車重量税と自動車税、軽自動車税、走行段階で揮発油税、地方揮発油税、軽油取引税、石油ガス税、そして消費税だ。
しかも、取得段階と走行段階では「Tax on Tax」という二重課税となっている。
例えば、ガソリンを例にとると、こんな感じだ。ガソリン自体の価格が101.6円とすると、本来の揮発油税と地方揮発油税が28.7円で、そこに上乗せ分の揮発油税と地方揮発油税25.1円が加わり、合計で155.4円。そのうえに10%の消費税15.5円が課税されて170.9円となる。
■増税、新税創設で複雑化を続けた自動車諸税
このように自動車に課せられている税金は、非常に複雑でわかりづらいようになっている。これは1954年度に道路特定財源制度が創設されて以来、国、道府県、地方自治体の思惑もあって、増税、新税創設が繰り返されてきた結果と言っていい。
何しろ税金ごとに徴収する先が異なっているのだ。例えば、環境性能割は道府県税と市町村税、消費税は国税と地方税、自動車重量税は国税、自動車税は道府県税、軽自動車税は市町村税、揮発油税と地方揮発油税は国税、軽油取引税は道府県税、石油ガス税は国税という具合なのだ。
しかもその総額は2021年度約9兆円で、国の租税総収入99兆円の8.7%にものぼっており、何かを減らせば徴収先のどこかが反対するという状況になっている。仮に減らすとなっても、その減った分をどこかで補えとなる。
もちろん、乗用車ユーザーが負担している税金額は世界のなかでも群を抜いている。日本自動車工業会の調べによると、イギリスの約2.2倍、ドイツの約4.9倍、米国の約30倍にもなるそうだ。
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