あぁ・・・マーチよ どこで道を間違えた? 日産名門コンパクトカーの栄光と挫折

絶好調だったのに… 現行型マーチが生産終了した一番の理由とは

2010年7月に登場した現行の4代目マーチ。タイで生産して日本へ輸入するという方式をいち早く導入したモデル
2010年7月に登場した現行の4代目マーチ。タイで生産して日本へ輸入するという方式をいち早く導入したモデル

 この流れを大きく変えたのが、2010年に発売された4代目の現行マーチだ。東日本大震災の2011年をはずして2012年の登録台数を見ると、1カ月平均が約3300台だから、3代目のモデル末期を下まわった。

 現行マーチが売れ行きを下げた一番の理由は、さまざまな質に不満が伴ったからだ。インパネの周辺は造りが粗く、後席の背もたれを前側に倒すと、広げた荷室の床に隙間ができた。操舵に対する車両の反応も曖昧で、カーブではボディが唐突に傾いた。街中を普通に走るだけでも、妙に気を使う。

 そして日産は、2013年に三菱と共同開発した軽自動車のデイズを発売している。当時の販売店からは「マーチの内外装や乗り心地に不満を感じるお客様には、デイズを推奨する。デイズの後席はマーチよりも広く、内装の質も高いから、軽自動車でも満足していただける」という話が聞かれた。2014年には全高が1700mmを超えるスライドドアを装着した軽自動車のデイズルークスも加わり、マーチはさらにユーザーを減らした。

 現行マーチの登録台数は、2015年には1カ月平均が約1300台だから、2012年の40%まで落ち込んだ。コロナ禍になる直前の2019年は約600台だ。近年の日産では、価格の求めやすい車種は、ノート/ノートオーラ/デイズ/ルークスに集約している。マーチは戦力外とされ、改良もほとんど実施されずに売れ行きを下げた。

 販売店によると「マーチはすでに(タイからの)輸入を終了させており、10月には在庫車も売り切る。今後のマーチに関する話は何も聞いていない」という。マーチは終了すると考えるのが妥当だろう。

 今の日産は、効率化のために車種を減らす戦略だ。コンパクトカーでは、ノートを日本向けに開発した。ベーシックなノート、上級のノートオーラ、SUV風のノートオーテッククロスオーバー、スポーティなノートオーラNISMOと多彩にそろえて幅広いユーザーをカバーする。

 ただしパワーユニットも、効率化のためにハイブリッドのe-POWERのみにした。ノーマルエンジンは用意しないから、ノートシリーズはコンパクトカーなのに、価格はすべて200万円を超える。

 そこで先に述べた軽自動車も用意され、デイズの価格帯は132万7700円から191万5100円、ルークスは141万5700円から213万2900円だ。以上のようにデイズ+ルークス+ノートシリーズを並べると、130万円から300万円の価格帯を網羅できる。

 以上のようにマーチは、かつて日産コンパクトカーの主力として高い人気を得たが、次第にティーダなど小型車が増えて売れ行きを下げた。さらに軽自動車も設定されてユーザーを奪われ、現行マーチは造りが粗いから、売れ行きを一気に落ち込ませた。これは日産にとって想定の範囲内で、マーチの廃止に至った。

 この車種を集約する戦略は、開発と生産のコストを最小限度に抑えるうえでは合理的だが、ユーザーの選択肢は減ってしまう。この点を考えると、欧州向けのマイクラを日本で売る方法もあったが、車両の性格はノートオーラと重複する面もある。

 その意味で、やはりマーチは、ノートよりも安いベーシックなコンパクトカーであるべきだ。現行マーチの造りを粗くしたことが、廃止に向かう始まりであった。

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