東京ドーム約35個ぶんの大工場! 「インドのベンツ」トラックは最新ラインで産まれている!【インドのダイムラートラック工場訪問・前編】

広大かつ最新設備を備えた若い工場

DICV・オラガダム工場の大型トラック生産ライン。写真はシャシーにキャブを結合する工程で「マリッジライン」の通称で呼ばれている
DICV・オラガダム工場の大型トラック生産ライン。写真はシャシーにキャブを結合する工程で「マリッジライン」の通称で呼ばれている

 さて、チェンナイ都心から陸路で1時間半ほどの新興工業団地に建てられたオラガダム工場は、敷地面積が161万8800平方メートルもあり、東京ドームの建屋面積でいえば34.6個ぶんに相当する広大さです。ダイムラーグループ最大の独・ヴェルト工場(敷地面積290万平方メートル)には及ばないものの、三菱ふそう川崎工場の約4倍、ダイムラー創業の地である独・マンハイム工場の約5倍という規模です。

 オラガダム工場は、トラック生産工場、バス生産工場、エンジン・トランスミッション生産工場、開発部門、物流センターなどで構成されています。従業員数は4000人以上で、もちろん現地採用が中心ですが、日本を含む世界のダイムラーグループ企業からの出向者も勤務しています。オンラインによる業務が頻繁に行われており、日独とリアルタイムで、VR(仮想現実)によるデザインおよび車両レイアウトの検討作業を行なうこともできます。

 トラック生産工場は、さらに大型トラック生産ラインと、中型トラック生産ラインがそれぞれ独立して設けられています。バス生産工場は、大型および中型のバスシャシー生産ラインに加えて、中型バスボディの生産および架装ラインがあります。
 
 広大な敷地に建てられた工場は、生産ラインとその設備が無理なく整然と配置され、屋内の通路も広々としています。それは、レイアウトを工夫して、限られた敷地を有効活用することが多い日本の工場では得難い、のびのびとした余裕を感じずにはいられないものでした。

 生産ラインの各種設備や検査機器には、ドイツや日本の工場と同じ最新設備を導入し、使われているソフトウェアは最新版にアップデートされています。さまざまな試験施設や、検査機器を校正するための専用施設も併設され、広いだけではなく、施設面でもかなり充実した工場です。

 大きく異なるのは、自動ピッキングラインが存在せず、自動搬送台車(AGV)もほとんどみられないこと。これは若年労働人口が多いので、自動化する必要がないためです。そのかわり、ピッキング作業(生産に必要な部品を倉庫から持ち出す作業)が正確・迅速に行なえるよう、部品には馴染みのある「食べ物」「地名」の名前を付け、識別しやすくしているそうです。

グループ最優秀の評価も

ディーゼルエンジンの組立工程
ディーゼルエンジンの組立工程

 クルマの中でもトランスミッション(T/M)は、特にハイレベルの機械加工と組立作業、品質管理が要求されるコンポーネントの一つですが、オラガダム工場のT/Mラインは、ダイムラーグループでも「ベストプラクティス(最優秀)」として評価されています。

 T/Mは当初、バーラトベンツ/FUSO用のみ生産していましたが、欧州向け中型トラック用T/Mの供給拠点として抜擢され、2015年以降、その生産をドイツから引き継くまでになっています。これには、より高度なAMT(機械式自動変速機)も含まれていますが、オラガダム製T/Mは、出荷後のクレームも少ないそうで、年々生産量が拡大しており、2022年は過去最高の年産23万基を達成する見込みです。
 
 ディーゼルエンジンは、バーラトベンツ/FUSO両ブランド車が搭載する、大型車用および中型車用のエンジンを生産しています。エンジン生産も、それに必要なレベルが高いので、現地スタッフのトレーニングを進めながら、段階的に生産量と生産モデルを拡大してきました。

 現在は、Euro-3~-5排ガス規制に対応する大型および中型エンジンと、Euro-6排ガス規制に対応する大型および中型エンジンの計4機種を、並行して生産できるまでになりました。これらは、原型こそメルセデス・ベンツあるいは三菱ふそうが開発したエンジンですが、インド市場および海外市場向けにDICVで再開発された、オリジナルのエンジンとなっています。

 オラガダム工場では、T/Mやエンジンのような目立つコンポーネント以外にも、さまざまな部品を生産しており、さらに日本や北米など全世界に対して、累計2億個もの部品が輸出されてきたそうです。DICVがダイムラーの一大パーツ供給拠点として機能していたとは初耳で、これには驚かされました。(後編へ続く)

【画像ギャラリー】ダイムラーが誇る広大かつ最新の生産拠点・DICVオラガダム工場で産まれる新興国向けトラック!(10枚)画像ギャラリー

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