■大和トンネルがなぜ渋滞の名所に?
大和トンネルは下り線は下り坂なのだが、その前が上り坂になっている。これによりトンネルでの速度低下と上り坂での速度低下が重なり、渋滞が発生する。
しかし最近では通常は朝の通勤時間に少し渋滞する程度だ。それは後で述べる渋滞緩和策も効いているのだろうが、その前の横浜町田ICが渋滞することで、ボトルネックとなっていることも要因だろう。
下り線はよほど交通量が多くなければ渋滞することはないが、上り線は上り坂で速度が低下しやすいだけでなく、もう一つトンネルならではの渋滞発生要素が拍車をかける。それは暗く狭いところに入っていくという視覚効果によるもので、無意識にアクセルを戻してしまうドライバーも多いのだ。
大和トンネルはこのようにクルマが多く、上り坂、トンネルという三重苦の区間だから、渋滞の名所となってしまったのである。しかし、NEXCO中日本もそんな状態を黙って眺めていた訳ではなく、これまでに何度も渋滞を緩和させる対策をとってきた。
大和トンネルにおいては、東名の3車線化に続いて2021年には付加車線として合流用の加速レーンが延長されて事実上4車線化されている。これによる効果は大きくかなり渋滞は減ったが、依然として夕方や週末、連休などでは渋滞は起こってしまっている。
また高速道路においては自然渋滞の軽減には近年、さまざま様々な工夫が施されている。ドライバーは運転の情報の9割を視覚から得ていると言われる。そこで視覚から速度低下を防ぐ対策が施されているのだ。
看板により速度低下への注意喚起をしたり、LEDランプを点滅させたり矢印のパネルを速度を考慮した間隔で配置して、そのリズムで前方へと向かう意識を高めるなどがよく見られるものだ。
■ドライバーの運転次第で渋滞は大幅に削減できる!
これまで渋滞は交通量の増大のほか道路の構造や条件など環境面が原因と述べてきたが、実は適正な車間距離を保っていないドライバーが多いことが渋滞の一番の原因だ。
サグや上り坂、トンネルで前走車の速度が低下しても、車間距離をキチンと保持していれば、前走車よりも速度を落とさず、車間距離を一時的に縮めることで通過することができるのである。
ところが車間距離が短いと、「前走車の車速が低下したらまったく同じ分だけ減速する」、なんて芸当は一般のドライバーにはとても無理だから、前走車よりさらに少し車速が落ちる。それを繰り返していくと最後にはノロノロ走行の渋滞になってしまうのだ。
その証拠に東京大学先端科学技術センターの西成活裕教授の研究室はJAF、警察庁が2009年に渋滞を解消させる実証実験を行った。これはクルマ8台を使い、中央高速の渋滞の名所である小仏トンネルの渋滞で行われた。
渋滞箇所を通過する際に車間距離を広く取り、渋滞の最後尾に追いつかないように速度を落として2車線を4台ずつ走行させた結果、後ろに行くほど速度が上昇し、実験車両が通過した後にやってきた車両は渋滞前と同じ80km/hで通過できた。つまり見事に渋滞を吸収して解消させたのである。
■ブレーキ踏む回数を減らす? 車間距離をうまく保つ秘訣とは
手前味噌だが、筆者は箱根周辺での取材の際に東名高速を利用する場合、復路の東名区間では大体3回から5回程度しかブレーキペダルを踏むことがない。車間距離を適切に保っていれば、前走車が減速して近付いてもアクセルを戻すだけで空気抵抗により速度が落ちるため、ブレーキを踏む必要がないからだ。
ブレーキを踏むということは強制的に速度を落とすことになり、再度加速するためには燃料を多く使うことになる。
つまり車間距離をしっかりと取ることは渋滞を起こしにくくする効果があるだけでなく、結果として燃費は向上し、ブレーキパッドなども長寿命になるなど維持費の軽減にも貢献することになるのだ。車間距離をキチンと保っているだけで、こうした効果が望めるのである。
合流部分も車間距離を空けて一台ずつファスナー合流すれば、スムーズに流れて渋滞は少なくなる。しかし実際は、皆が先を焦って車間距離を詰めてしまうことで、合流時にはギリギリの車間距離で隣のクルマとの鍔迫り合いのように間隔を見極めながら合流するため速度が低下して渋滞してしまうのだ。
盆暮の帰省ラッシュでは、こうした渋滞の名所以外にも幅広く広範囲で渋滞は発生する。それは交通量が増えることが原因なので、ある程度は仕方ない部分もあるが、車間距離を保つだけで渋滞が減り時間的損失と燃費低下による金銭的損失が軽減されることを多くのドライバーに知って欲しいと思うのだ。
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