日本は地震、台風などの自然災害が多い国だ。被災地では、避難所以外にクルマの中で寝泊まりする場合がある。そのたびに車中泊による身体の危険性が取り上げられてきた。今回はエコノミークラス症候群の危険性とその対策について解説する。
文/吉川賢一
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■車中泊だけではない! エコノミークラス症候群は狭い場所で長時間同じ姿勢でいることで起こる
2023年2月6日未明にトルコ南部で起こった大規模な地震。連日ニュースで目にする光景は信じがたいものがあり、国連の発表によると、これまでに数万人が死亡、そして数百万人が家を失ったという。犠牲となってしまった方々に哀悼の意を表するとともに、被災された方々に一刻も早く落ち着いた生活が戻ることを祈っている。
今回の大地震で、家を失った方の多くは、クルマで極寒の夜を耐えているとのことだが、狭い車内での睡眠はエコノミークラス症候群になりかねない。日本でも大きな災害のたびに、車中泊によるエコノミークラス症候群の危険性が取り上げられてきた。
日本では今後も大規模な災害が起こる可能性は高い。ここで改めて、エコノミークラス症候群の危険性と予防法について、確認しておこう。
一般的に「エコノミークラス症候群」とよばれるこの症例は、医学的には「急性肺血栓塞栓症(きゅうせいはいけっせんそくせんしょう)」というそう。読んで字のごとく、血管のどこかでできた血栓(血液が固まった塊のこと)が剥がれ落ち、血管内を流れて、肺にある血管で塞栓(血液の塊が血管を塞いでしまうこと)が起こることを指すという。
肺塞栓症になると、急に胸が痛んだり、呼吸が苦しいなどの初期症状がおこる。重症の場合だと、突如、心臓発作のように失神し、生命に危機がおよぶ可能性もあるという。
長時間同じ姿勢でいると起こりやすいそうで、「エコノミークラス症候群」とはいうが、ビジネスクラスやファーストクラスであっても、また、バスや電車でも起こりうる。車中泊の場合も、狭い車内で長時間同じ姿勢でいなければならないため、血行不良が起こり、肺塞栓(はいそくせん)を引き起すリスクが高くなるという。厚生労働省によると、新潟県中越地震後に車中泊された方のうち、30%以上の方が発症していたことが報告されている。
災害1年後の検査結果では、避難所でのエコノミークラス症候群の発生を1とすると、セダン型および軽自動車では約1.5倍に、ワゴン車は0.4倍であったそうだ。避難所であってもエコノミークラス症候群のリスクがあること、そして、ワゴン車だと車内が広くて身体を動かしやすかった、ということが影響したと考えられる。
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