iOSとかAndroidなら知ってるけど……クルマにもOSあったの!? 車載OSの謎教えます

■現行の技術と開発中のOSは何が違うのか?

テスラはすでに車載OSをアップデートすることで機能向上させる方式を採用している
テスラはすでに車載OSをアップデートすることで機能向上させる方式を採用している

 クルマのコンピュータシステムを車載OSで統合すると何が嬉しいかというと、これは圧倒的にメーカーが嬉しい。

 ハード面でいえば、各システムごとに分散配置していたマイコン(ECU)を大幅に削減することが可能。実際、テスラはすでに自動運転用とメディアコントロール用の2つにECUを統合している。

 ま、そのぶん圧倒的に高性能(=高価)なECUが必須となるから、トータルでどのくらいコストダウンできるかは不明だし、冗長性のない統合ECUでどこまで安全性を担保できるのかも不透明なんだけど、流れとしては確実にECU統合化に向かっていると見て間違いない。

 もうひとつ、ぼくはこちらのほうが圧倒的に重要だと思うんだけど、ソフトウェアの生産性が向上する。

 OSの重要な役割はハードの違いをソフトで吸収すること。ウィンドウズが搭載されていれば、どんなコンピュータでもエクセルは動く。同じ理屈で、車載OSによってハードウェアを仮想化できれば、車種ごとに異なる制御ソフトを作らなくても済む(かもしれない)。

 もうひとつ、ECUのパワーを適切に配分するのもOSの重要な役割。エアバッグの展開や衝突被害軽減ブレーキの作動は、ミリ秒単位のリアルタイム性が要求されるが、パワーウィンドウの作動なんか1秒くらい遅れても全然問題ない。

 逆にいえば、ECUを統合化するには効率よく計算能力の振り分けができるOSが必須。車載OSと統合ECUは不可分の存在といってもいいわけですね。

■次世代OSの現状とは? 電動化で差別化が課題に

トヨタのアリーンOSはハードとソフトを分離。アプリ単独で進化可能になる
トヨタのアリーンOSはハードとソフトを分離。アプリ単独で進化可能になる

 自動車でコンピュータ利用が始まった当初、最重要テーマだったのは排ガス浄化システム。コンピュータなしで排ガス規制を乗り切ることはできなかった。

 やがて、エンジン出力の向上やクルマの運動制御にもコンピュータが使われるようになり、今では安全性向上にも大きく寄与するようになった。

 しかし、よく考えてみるとこれはらすべて「走り」に関わる機能だから、自動車メーカーにとっては門外不出の技術であり、他人(他社)が立ち入ることができない領域だったわけだ。ところが、車載OSはこの「壁」を切り崩す可能性がある。

 すでに、その兆候はカー・インフォテイメントでは現実のものとなっていて、インパネのセンターディスプレイがアップル・カープレイやアンドロイド・オートに侵食されているのはご存知のとおり。おかげで、低価格車では純正ナビは風前の灯だ。

現在開発中の次世代OS
現在開発中の次世代OS

 センターディスプレイの次は、クルマ全体のOSがターゲットになるのは必然。新興EVベンチャーに車載OSとカー・インフォテイメントがセットで供給される日はそう遠くないかもしれない。

 自動車メーカーが車載OSの開発を急ぐのは、こういうシナリオに強い危機感を持っているからだ。

 とはいっても、既存の自動車メーカーにとって見通しはそれほど明るくない。

 現行の内燃機関は、排ガス浄化システムにデリケートな制御が要求されるため、そこで消費されるECUパワーがかなり大きい。これに対して、モーター制御は圧倒的にECU負荷が軽く、パワートレーンでの差別化はエンジン時代より難しくなると予想されている。

 となると、残るは駆動力制御やサスペンションの電子制御化などを駆使してヴィークルダイナミクス性能で差をつけるか、通信機能を使ってメーカー独自のコネクティッドサービスを提供するか……、選択肢はそれほど多くない。

次ページは : ■OS覇権争いはあるのか? ヒントはテスラにあり!?

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