日産の超名門「フーガ」はなぜ凋落してしまったのか

 現行型(Y51)フーガの2018年累計販売台数は1449台、フーガの前身であるセドリック/グロリア時代にライバルだったクラウンは、昨年40,240台。日産が誇るプレミアムセダンであるフーガは、目を覆いたくなるほど無様な売れ行きである。

 かつて日本を代表する高級サルーンの一角を占めていたはずのフーガは、なぜこんなにも凋落してしまったのか。元日産エンジニアであり現行フーガの開発にも関わった吉川賢一氏に分析していただいた。
文:吉川賢一


■フーガがモデルチェンジしない意外な理由

 まず現行型フーガについて、少し振り返りたい。

 現行Y51フーガは2009年11月に発売開始された日産の高級車である。2.5Lと3.7Lのガソリンエンジンと、3.5L+ハイブリッドの3種類を持ち、駆動方式はFRと4WDがある。

初代フーガは2004年10月、日産を支えた名門ブランドであるセドリック/グロリアの後継車としてデビューした。現行型(写真)である2代目は2009年11月に鳴り物入りで発売。この頃はまだフロントグリル中央部は「NISSAN」マークだった

 ハイブリッドのパフォーマンスは、2012年当時、0-400m加速にてポルシェパナメーラのタイムに勝利し、「世界最速の市販ハイブリッド」という名誉を獲得したほどだった(タイム13秒9031は当時のギネス世界記録に認定)。 

 なお、2015年のマイナーチェンジで外観デザインを大幅更新、その際に日産のCIを止め、エンブレムを北米やアジアで売られているINFINITI(インフィニティ)マークとした。

 日産の威信がかかった最新技術を搭載し、ブランドを代表するべき高級車であるはずなのに、デビューからすでに9年目に突入。それでも「新型フーガ」のウワサはいまだ聞こえてこない。ベンチマークであるBMW5シリーズのモデルチェンジ(2016年)を横目に、新型車を出さない日産に、ファンは怒りを通り越し、呆れかえり、欧州車やレクサスへ移行した例も多いはずだ。

 なぜここまでフーガは凋落してしまったのか? その理由は、「二度と会社を赤字経営にしたくない」という、日産の「自己保身」にあると考えられる。

2010年にハイブリッド仕様を追加、2015年にマイチェンを実施し、2017年に一部改良を実施。写真はその一部改良以降の現行型。フルモデルチェンジの話は聞こえてきていない

■なぜ新型フーガが出せないのか? 

 一般的には、クルマは7-8年スパンでモデルチェンジを迎えるため、新型フーガは、2017年にはデビューしていてもおかしくはなかった。モデルチェンジのタイミングはとうに過ぎている。それなのになぜ新型を出さないのか?

 通常のクルマの開発プロセスでは、新型車発売の2~3年前には車両コンセプトや仕込む新技術がまとまっていないと、量産車開発は成り立たない。しかもリーズナブルなコスト提案が大前提である。もちろん日産社内において、新技術の開発や、試作車を作って上層部にアピールする、などは幾度もされていたが、フーガ時期型車のプロジェクト開発が始動することはなかった。

 その一番の理由は、「新車開発の投資に見合う利益が見込めない」、つまり「儲かる見込みがない」と日産が判断していることにあると考えられる。

写真は現行型フーガ。走行性能やパッケージングに短所があるというわけではないが、さすがにデビュー10年目となると古さを感じるのと、やはりフロントの「インフィニティ」マークが、「アメリカ仕様のような感じ」を目立たさせてしまう

 日産には「倒産すれすれ」となった苦い思い出がある。そのため、「絶対に損をしないビジネスをする」という思いが強く、チャレンジする文化が委縮してしまっている傾向がある。しかも、「売れない」過去から「売れ高」を予測するので、当然、ポジティブなビジネスモデルなど出てくるはずもなく、悪循環をしてしまっているのだ。日産にモデルライフが長いクルマが多いのは、そういうことである。

 開発担当のひとりだった筆者は、こうした実情をまさに身をもって経験してきた。誰が悪いわけではない。「次期型を作りたい」という志を持ったエンジニアは社内に沢山いる。開発する力もある。しかし「リスクを背負ってでもチャレンジする勇気」が、日産社内には湧き起らないのだ。

■変わることができる絶好のタイミング

「現状維持は退化の始まり」である。昨今世間を騒がせている「ニッサンの棘」を自ら引き抜いた今、日産は、変わることができる絶好のタイミングではないか。日産には、ここで渾身の一撃をもって、ファンの心をもう一度揺さぶってほしい。

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