日常と切り離された特別な空間を感じさせるセンチュリーの後席
一方センチュリーの後席にはそこまでの空間的広さは感じない。前席を仕切るパーティションの設定はなく、後席に座ると液晶モニターがマウントされた前席背もたれが見える。この前席背もたれ裏側は脚部にかけて大きく弓なりにカーブした形状で、後席乗員の膝スペースに余裕を作る。センチュリーの後席は、シートそのものは前後スライドしないのだが、背もたれのリクライニング角度に応じて3段階に座面が前方にスライドする機構となっているのが特徴的だ。
ちなみに車体サイズは以下の通り。
・センチュリー/全長:5205㎜ 全幅:1990㎜ 全高:1805㎜ ホイールベース:2950㎜
・レクサスLM/全長:5125㎜ 全幅:1890㎜ 全高:1955㎜ ホイールベース:3000㎜
意外なことに全長はセンチュリーのほうが80㎜長い一方、ホイールベースはレクサスLMが50㎜長い。LMの全高1955㎜は圧倒的だ。
センチュリーには車体後方の荷室スペースとの間にバルクヘッドが設けられていて、リクライニングが一定の角度を超えると背もたれがバルクヘッドと干渉する。そのため座面とともに背もたれを前方にスライドさせてリクライニング角度を確保必要がある。具体的にはリクライニング53度までは座面は動かない。実際53度まで倒してみたが、高速道路のSAで仮眠するときに運転席をバタンと倒す程度の深い角度で、通常ここまで倒せば充分と感じるだろう。オットマンを展開しても前席と干渉することはなく、足を真っすぐ延ばしてリラックスした姿勢をとることができるのだ。
電動リクライニングはこの53度のポジションで一旦止まる。再度スイッチ操作をすると座面が前方にスライドしながら背もたれが倒れる。この動作を3段階繰り返し、最終的に背もたれは77度まで倒れる。体感的にはほぼフルフラットだ。ここまで倒すとオットマンは前席と干渉するため、助手席を前に出す必要がある。後席をここまで倒した状態で走行することは現実的ではないだろう。
レクサスLMの後席リクライニングは制限なくほぼフラットまで倒れる。背もたれ後方は荷室スペースなので、積載物がなければフルフラットまで倒してもテールゲートに背もたれは干渉しないので、座面が前方にスライドする必要はないのだ。こちらもまた、このフルフラット状態で走行するというのは現実的ではない。あくまでも休憩時のポジションだ。
センチュリーの室内には得も言えぬ格式を感じるのであった
このように後席空間の広さと、パーティション部などに象徴される豪華さでいえばレクサスLMはセンチュリーを圧倒的に凌駕する。
しかしセンチュリーの後席、いや、前席も含めた室内空間にはLMには感じなかった「格式」のようなものがひしひしとあふれ出しているのだ。あえて前席との空間を遮断するパーティションは設けなかったのだという。
センチュリーの後席に座ってドアを閉めた瞬間、いっきに外界との遮断された感覚となった。一瞬自分が自動車の中にいることを忘れてしまったほどだ。何とも言えない静寂に包まれた。前席とのパーティションはないが、後部荷室とはバルクヘッドで隔たれている。上部には後部視認用の窓が設置されているが、遮音ガラスが使われている。LMのような圧倒的開放感ではない、程よい広さがむしろ心地よいプライベートルームのような感覚にするのかもしれない。
LMの後席後方には荷室となる広い空間があり、大きな開口部のテールゲートがある。当然遮音には気を遣ったというけれど、車室をバルクヘッドで完全に仕切ったセンチュリーほどの静粛性を得るのは難しい。ピシッと襟を正したような緊張感を抱きながらも、すっと落ち着いたリラックスを感じさせるのがセンチュリーの室内空間。レクサスLMにはパーティ会場のような華やかな空間を感じるのだ。これはもう、どちらが「いい」とか「上だ下だ」の話ではない。オーナーの好み、使われる場面で選ばれるべきものなのだ……、たぶん。
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