「納得できない!」 白バイ隊員が駐禁の取り締まり? 白バイ乗りが語る「暗黒時代の幕開け」

「納得できない!」 白バイ隊員が駐禁の取り締まり? 白バイ乗りが語る「暗黒時代の幕開け」

 警視庁に在籍した33年間中、実に22年間もの日々を白バイに捧げた元警察官の洋吾(ようご)氏。取り締まり件数において3年連続で警視庁トップに輝き、警視総監じきじきの表彰も受けた伝説の白バイ隊員だ。洋吾氏の警察時代の悲喜こもごも、厳しくも「とほほ」な日常を綴った著書『白バイ隊員 交通取り締まり とほほ日記』も上梓(小社刊)。

 今回は、1991年頃から白バイ隊員のノルマに加わった「駐禁の取り締まり」について。ある程度年を重ねた方なら誰もが知っているはずの、女警さんによる駐禁の取り締まり。これを白バイ隊員たちが請け負うようになった、その舞台裏。

文/洋吾、写真/洋吾、Adobestock(メイン写真=beeboys@Adobestock ※画像はイメージです)

■なぜ? 白バイで駐禁取り締まり

その当時の駐禁取り締まりといえば女警さんの十八番。それをなぜ白バイ乗りが?(※画像はイメージです Paylessimages@Adobestock)
その当時の駐禁取り締まりといえば女警さんの十八番。それをなぜ白バイ乗りが?(※画像はイメージです Paylessimages@Adobestock)

 1991年は、警視庁の交機隊にとっては暗黒時代の幕開けだったと思う。

 というのも白バイ隊による放置駐車違反の取り締まりがスタートした年だったからだ。

 ちなみに、ここで書く放置駐車違反の取り締まりの話は、2006年の道交法改正前の話で、現在のように民間の駐車監視員がデビューする前の時代のことである。

 白バイ隊員の本業は、動いている違反車両をサイレンをガンガン鳴らして追いかけて取り締まることであった。

 それなのに、当時の女警さんたちの十八番であった駐車違反の取り締まりにも参戦することになったのだ。

 駐車違反の取り締まりといえば、所轄の女警さんや交番のお巡りさんの仕事というのが当たり前と思われていた時代、これには交機の白バイ乗りたちは、みな大ブーイング。「そんなの、やってられるか!」という感じであった。

 ここで昔の駐車違反の取り締まりについて振り返っておきたい。若い方はご存じないだろうし、年配の方ももうお忘れかもしれない。

 2006年の道交法改正前の時代、放置駐車違反の取り締まり方法は、ドライバーが乗っていない駐車違反車両を見つけると、まずはそのクルマのタイヤにチョークで印をつけ、一定時間経過しても移動していなかったら違反車として検挙するという流れだった。

 一定時間の間があったからドライバー側も助かるチャンスがあって、今のしくみに比べると温情味があった。

 それでも当時は違反者からの文句が絶えなかったが。ところで、この一定時間は所轄ごとに相場みたいなものがあって、だいたい15分~30分が目安だった。

 内部の決めごとでは、5分以上経過(現認)していたら、取り締まってもOKということだったけど、人道的見地から5分ジャストではかわいそうってことでの5分以上の猶予を与えていた。

 ちなみに2006年6月の道交法改正後、現在の民間駐車員による取り締まり体制となる。チェックなんて必要なしで、直ちにアウト! ってことは皆さんご存じのとおりだ。

 1990年当時、都内は違法駐車の車両であふれかえっており、社会問題にもなっていた。

 また、この目に余る違法駐車をなくそうという、世の中の風潮が高まり出した頃で、警視庁のお偉いさんが「白バイ隊員にも駐車違反の取り締まりをやらせろ」と思いついたのではないかと想像している。

 こうして1991年は、警視庁交通機動隊の白バイ隊員による駐車違反取り締まり元年になってしまった。不幸にも私はその第一期生ってことになる。この時期の隊員はみな、私と同じ思いをしていたことだろう。

 私の記録だと、1991年の年明け早々1月には、本部員による隊員たちへの駐禁取り締まりの事前教養(勉強会)が旧三交機隊(編集部註:筆者が当時所属していた旧第三交通機動隊のこと。以下文中では旧三交機と表記)本部で実施されている。

 そして翌月の2月に入ってすぐに班長様、次席の先輩、そして私の計3人が白バイで、秋葉原を管轄する万世橋警察署へ派遣され、駐車違反の取り締まりを実施している。

 ということは、他の中隊、さらに他の各交機隊もこの頃から駐車違反取り締まりに駆り出されたと考えていい。

 駐禁取り締まりははっきり言って簡単だ。速度違反の取り締まりのように獲物を求めて走り回ったり、身を潜めて獲物が網にかかるのを待ったりする必要などないのだから。それほど当時の道路は違法駐車車両であふれていた。

 初となる白バイでの駐禁取り締まりの第一歩は、まず駐禁車両を1台、1台チェックすることだった。

 あの重たい白バイからの降車、乗車を繰り返すだけでうんざりだった。他の交通違反と違って、駐禁車両はかなりの数なので、いくらチェックしても切りがないほどだった。

当時筆者が乗っていたのは、スズキのGSX750P。車重は約300キロ
当時筆者が乗っていたのは、スズキのGSX750P。車重は約300キロ

 またドライバーからは「白バイも駐禁取り締まりするの?」って珍しがられたもの。改めて白バイでやるような取り締まりじゃないって思ったものだ。

 思えば駐車違反の取り締まりなんて何年ぶりだったろうか。警察官人生スタート時の交番勤務時代でさえ、110番の苦情以外で、自主的に駐車違反を取り締まった記憶がないぐらいであった。

 ただし、これはまだまだ軽いウォーミングアップの段階。のちに駐車違反取り締まりの本格的な舞台は東京都中央区の銀座地区へと移ることとなる。

次ページは : ■白バイを降ろされた白バイ乗りたち

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