「納得できない!」 白バイ隊員が駐禁の取り締まり? 白バイ乗りが語る「暗黒時代の幕開け」

■白バイを降ろされた白バイ乗りたち

白バイ隊員の本業といえば、動いている違反車両を追いかけて取り締まること。白バイ乗りなのに白バイを降ろされ、徒歩で銀座の街を取り締まらなければならないのは、納得しがたかったという(※画像はイメージです Caito@Adobestock)
白バイ隊員の本業といえば、動いている違反車両を追いかけて取り締まること。白バイ乗りなのに白バイを降ろされ、徒歩で銀座の街を取り締まらなければならないのは、納得しがたかったという(※画像はイメージです Caito@Adobestock)

 1991年2月下旬、駐車違反の取り締まりはいよいよ本格化していった。

 警視庁交通部は、各交機隊にそれぞれ担当地区を割り当て、各隊はそこへ赴いての駐車違反の取り締まりに専念することとなったのだ。

 世間様には「警視庁は白バイ隊も動員して放置駐車違反対策を始めました!」と大っぴらにアピールしての取り組みで、そのモデル地区として各交機隊に受持ち地区が指定されたのだ。

 私が所属していた旧三交機は銀座、その他の隊は六本木、赤坂、渋谷、新宿、池袋という具合に東京都を代表する繁華街にそれぞれ分担が割り当てられたのだった。

 もちろん、白バイ警らによるその他の交通違反の取り締まりや、夜の飲酒検問もしっかりやりながらで、その上に銀座の駐車違反対策が加わった格好だった。

 そのため銀座の駐車違反対策に当たった小隊は、その日1日は銀座行きというスケジュールだった。当時、私は隊本部から離れた葛飾区内の本田分駐所に勤務していたので、銀座は遠かった……。

 そしてそれ以降、私の記録では、1993年いっぱいまでは、雨の日も雪の日も、そして寒風酷暑の中も、各交機隊員は、駐車違反対策の日には決められた担当地区へ赴き、放置駐車違反の取り締まりに当たることになる。

 旧三交機の場合、当初、主として白バイで活動していたが、対象が動かない駐禁車両なので、そのうち銀座管轄の築地警察署まで四輪(交パ、覆面)で向かい、現場では徒歩での活動が主流になってしまった。

 徒歩活動に慣れるにつれ、ヘルメットも白バイ用から、より軽くて通気性に優れる四輪用へ変わり、最終的には制帽になってしまった。

 また銀座用にと、新たなアイテムとして鍵付きステッカー(通称わっか)が白バイ隊にも配布され、チェック用のチョークを取り付ける伸縮式ステッキと共に各隊員の必需品となった。本来、白バイ乗りにはまったく必要ないアイテムだった。

 白バイに乗らない白バイ隊員が銀座の街中を、チョーク付きの伸縮式ステッキと黄色い鍵付きステッカーを何個も持ちながら、セコセコと駐車違反の取り締まりをしていた。

 しかし、やる時はやるのが警視庁交通機動隊。容赦ない駐車違反の取り締まりが連日行われ、駐車違反の切符切りの嵐が吹き荒れることになった。

 当初は大通り沿いだけの集中取り締まりだったが、徐々に裏通りまで広がっていくことになる。

 ひたすらチョークでチェック、鍵付きステッカーの取り付け、さらには違反者を待ち受けて現場での駐車違反切符処理の繰り返しだった。

 この切符処理の数が収穫であり、成果だった。

 交機の仕事は売上げこそが結果の全てである。駐車違反の取り締まりであろうとも、その姿勢は変わらない。

 1件の成果欲しさに当初は30分に設定していた猶予時間も、次第に10分、5分と短くなっていった。厳しすぎるとの違反者からのクレームもあったが、それらは全て管轄の所轄へと向けられていた。

 そんなわけで、所轄からは結構ひんしゅくを買っていたのだが。私も担当上司が、行け行け猛烈小隊長だった時は「今日は一人10件やって来いや~」というような日もあって、制限時間ギリギリまでアセアセとがんばった記憶がある。

 ひたすらチョークでチェックと言えば、とあるゴンゾウ(編集部註:どうしようもなくタチの悪い警察官の総称)班長は、銀座で寝込んでいる人までもチェックしていた。今のご時世ならSNSに投稿されて大問題になっていたであろう。

 勤務中、唯一の楽しみだったのは昼食の時間だった。制服の上着を脱いで、銀座の裏通りのラーメン屋巡りをしたものだ。

 華やかなあの銀座も、一歩裏通りに入るだけで意外と古い街並みが残っており、下町の繁華街と変わらないように思えた。

 さて、各交機隊によるモデル地区での駐車違反対策は、徐々に派遣回数、人員が縮小されていった。1993年の末頃には、各隊が指定担当地区を離れることとなる。さらば銀座だった。

 それにしてもあの頃のみんな、本当によく耐えて頑張ったなぁ。そして、この時代を知らない現役白バイ隊員たちは幸せ者だと思う。

交機隊よりも恐ろしかったのが女警さんたち。レッカー移動という必殺手段で、悪質な違反車を次々と片付けていった。ときに捜査中の警察車両が対象になることもあり、身内にすら恐れられていたという(※画像はイメージです Tomasz Warszewski@Adobestock)
交機隊よりも恐ろしかったのが女警さんたち。レッカー移動という必殺手段で、悪質な違反車を次々と片付けていった。ときに捜査中の警察車両が対象になることもあり、身内にすら恐れられていたという(※画像はイメージです Tomasz Warszewski@Adobestock)

*   *   *

 このあと2000年頃からは「種目別ノルマ」が登場し、白バイの勤務は激しさを増していくことになる。2005年に異動で交通機動隊を離れた時は、さすがにほっとしたという(おかしくない? 白バイ隊員に課せられる「取り締まりノルマ」ととほほなウラ話)

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●洋吾(ようご):元警視庁の警察官。交通機動隊や警察署の白バイ隊員を長く務める。運転技術はいまいち、ドジでオッチョコチョイだが、3年連続で取り締まり件数トップの実績もあり。ブログ「脱公務員の部屋・元白バイ乗り親父の話」を公開中。2022年10月『白バイ隊員 交通取り締まり とほほ日記』を上梓。同書のイラストは同ブログのマスコットキャラクター「ニャンコ白バイ隊」。

【画像ギャラリー】身内も敵に!? 90年代 駐禁と取り締まりのウラ話(4枚)画像ギャラリー

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