紆余曲折の創業90周年……「技術の日産」は強い武器!! EV戦略どうなるの!? 日産の「今とこれから」

■ルノーとの提携関係見直し完了で今後どうなる?

CMFプラットフォームを開発し、日産、ルノー、三菱で共用化。例えば旧型ノートとルーテシアは同じVプラットフォームを使用することで、コスト削減などのスケールメリットを生み出している
CMFプラットフォームを開発し、日産、ルノー、三菱で共用化。例えば旧型ノートとルーテシアは同じVプラットフォームを使用することで、コスト削減などのスケールメリットを生み出している

 日産自動車は、11月8日に提携先の仏ルノーと、双方が15%ずつの出資とする資本関係の見直しが完了したと発表した。ルノーの日産に対する出資比率43.4%を15%に引き下げ、相互に15%ずつを出資する。

 ルノーは、保有する日産の株式43.4%のうち、28.4%をフランスの信託会社に移した。これにより、両社が対等に議決権を行使できるようにした。

 両社は7月26日に資本関係見直しで最終契約を結び、年内に手続きを完了することで合意していた。このほどすべての契約で必要な規制当局の承認が完了し、11月8日付で新たなアライアンス契約を発行した。

 つまり今回のルノー・日産の資本提携見直しは、これまで長年に渡ってルノーが支配してきた子会社日産という日仏提携関係が“対等”の立場に変わったということなのだ。

 日産にとって1990年代末の瀕死の状況を救済してくれたルノーだが、ゴーン長期政権に代表される“ルノー支配”からようやく脱することになる。

 1999年3月27日は「日産がルノーを選んだ日」だった。日産が外資提携のいくつかの選択肢から最終的に仏ルノーを選び、この日、当時の日産・塙義一社長とルノー・シュバイツァー会長による提携調印と発表会見が行われた。

 筆者も当時の提携会見に出席したが、ルノーが日産に6340億円を出資することで窮地にあった日産の再建に手を差し伸べたのが提携の実態だった。

 しかし、日産はルノーから送り込まれたゴーン流経営で早期再建し、ゴーン長期政権に委ねられ、その功罪とともにルノーの筆頭株主であるフランス政府の意向に左右されるルノーの傘下という実態にあった。

 はっきり言えば、いつでも日産は仏政府ぐるみで「ルノーに吸収経営統合」される弱い立場にあり、事実ゴーン政権末期にゴーンが仏政府の意を受けて統合の道を模索した時期もあったのだ。

 それが今回の資本関係見直しで両社が対等の立場になったことで、実質的な力関係が上位にある日産が三菱自工を含む日仏3社連合で新たなリーダーシップを執ることができるかが焦点になりそうだ。

 ルノーと日産が15%ずつの対等出資となり、日産が三菱自に34%出資するという3社提携新関係で「ルノー・日産・三菱自にとって極めて重要な一歩だ」(スナール・ルノー会長)と、「電動化をはじめとする事業戦略を支える取り組みで、新たな成長機会を追求することが可能になる」(内田誠日産社長)とのコメントを発表している。

(TEXT/佃義夫〈佃モビリティ総研代表〉)

■日産のBEV戦略は今後どうなる?

 2010年末に発売されたリーフは、事実上世界初の量産EV。テスラ・モデルSよりほぼ1年半先行していた。

 カルロス・ゴーン肝いりの企画だっただけに、初代リーフへの力の入れ具合は並々ならぬものがあった。

 勝負のカギが電池にあることは当時からわかっていたから、日米欧3カ所に電池工場を建設する計画すらあったほど。ただ、そのタイミングがあまりに時期尚早だったのが、初代リーフがつまずいた最大の原因と言われている。

 その後の栄枯盛衰は皆さんよくご存知のとおり。驚異的な伸びを示したテスラとは対照的に、リーフの販売台数はなかなか伸びず今に至っている。

 このへんの経営判断のミスについては、さまざまな分析がなされているからここでは述べないが、重要なのは「日産はEVビジネスの難しさについて多くを学んだ」ということだろう。

 EVを取り巻く市場環境は初代リーフ開発時の予想とはかなり異なってきているものの、その一方ですでに日産はEVに大きな投資を行ってしまった。

 手持ちのリソースを有効活用して激しく変化する市場環境に対応するにはどうすべきか? その答えとして生まれたのがノートe-POWERだったわけだ。

 ノートのエンジンにリーフ用のモーターやパワコンを組み合わせることで、無駄な投資をせずにハイブリッド車を作ることに成功したノートe-POWERだったが、ここでまた日産は重要な技術的な知見を得たと思う。

 すなわち、ハイブリッドで圧倒的なアドバンテージがあるトヨタと同じことをやっていては勝てない。e-POWERは強力なエンジンと巧みなモーター制御技術でライバルに対抗すべき。

 そこに打ってつけだったのが、日産が長年開発を続けてきた可変圧縮比ターボだったのだ。

 一方、BEVに関しても戦略を大きく転換している。

 リーフは「普通のクルマをBEVに置き換える」コンセプトだったが、中国製EVが強力なコンペティターとして台頭してきた今、そこは最も競争激甚なレッドオーシャン。

 無駄な争いは避けて、日本固有の軽自動車枠でミニマムBEVのサクラを造り、アリアをプレミアムな価格帯に投入。リーフの販売に苦労してきた日産ならではの戦略といえる。

 サクラは国内市場限定とはいえ予想以上のヒットとなったし、北米も欧州もBEVの伸びが鈍りつつあるなかでHEV/PHEVがしぶとく売れている。アウトランダーPHEVのリソースを活かした日産版PHEVが登場する日も遠くないだろう。

(TEXT/鈴木直也)

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