紆余曲折の創業90周年……「技術の日産」は強い武器!! EV戦略どうなるの!? 日産の「今とこれから」

■内田体制の日産はどう評価される?

トロイカ体制から始まり2トップに移行して、ついにワントップとなった内田社長。その手腕が問われる
トロイカ体制から始まり2トップに移行して、ついにワントップとなった内田社長。その手腕が問われる

 日産の内田誠社長は、今通期(2023年4月〜2024年3月)業績予想を売上高が前期比23%増の13兆円、営業利益は64%増の6200億円、連結純利益は72%増の3900億円になる上方修正見通しを発表した。

 内田社長は「2020年度からスタートさせた日産再生への事業構造改革計画『NISSAN NEXT』の完遂を目指す」と、気を引き締めた表情で語った。

 日産はゴーン長期政権の後期のグローバル拡大戦略の歪みから業績を悪化させ、さらにその後の経営陣の混乱から社長に抜擢されたのがダークホースの内田氏だった。

 2019年12月に社長に就任した内田氏は、日商岩井出身で直前まで専務執行役員・中国マネジメントコミッティ議長・東風汽車総裁として中国・武漢に駐在していたが、急遽、日本の本社に呼び戻された。

 内田日産体制のスタートは最悪の状態からで2019年度に日産の純損失は6712億円で新型コロナ感染症の影響による各国の市場低迷も業績悪化につながった。

 内田社長CEO(最高経営責任者)を支えるCOO(最高執行責任者)に三菱自工COOから復帰させたアシュワニ・グプタ氏(ルノー出身)、副COOに中国事業統括で内田氏の前任だった関潤氏の布陣だった。

 が、関氏はすぐに退任し日本電産(現ニデック)社長から台湾・鴻海(ホンハイ)入りし、グプタ氏も今年の株主総会後の6月27日付けで退社してしまった。

 内田日産を支える当初の布陣が去るなかで、同志社大学神学部卒で商社から日産入りという異色の内田誠社長はカリスマ性は強くはないが名前のように誠で不退転の覚悟により、質の販売への転換・固定費削減・選択と集中などの構造改革を行う。

 営業利益率5%に向けた事業構造改革を進めた結果、今期の営業利益6200億円見通しは営業利益率4.8%(2018年度は2.7%)となり、一定の評価はするべきだろう。

 ただ、円安による為替益の押し上げが400億円もあり、日産全体純利益の34%も占める中国事業が一転して厳しい状況となり、次期中期経営計画の公表を延期するなど懸念材料も抱えている。

 まさに内田日産は、2024年度からの次期中期経営計画が正念場となる。

(TEXT/佃義夫)

■ゴーンという男の功罪

 カルロス・ゴーン。言うまでもなく1999年のルノー・日産資本提携でルノーから再建ために送り込まれて、瀕死の日産をV字回復させたゴーン流経営は見事なものだった。世界的にも「名経営者ゴーン」の名をほしいままにした。

 筆者も2000年代初めにゴーン・インタビューをしたが、筆者より小柄な外国人が英語でまくしたて通訳がついていくのが大変なほどの自信家だった。

 その後20年近くゴーン長期政権が続いたが、ゴーンをよく知る日産元COOの志賀俊之氏は「彼が名経営者だったのは2005年頃までだった」と言う。

 日産の社長・会長からルノー会長も兼ね、さらに三菱自を日産の傘下に収めて三菱自の会長にもなり、ルノー・日産・三菱自の3社連合の名実ともにトップの座を確立させて3社連合で世界制覇へと、本人は有頂天だったのだろう。

 だが、後期のゴーン世界拡大戦略のツケが日産の赤字・無配転落へ。この人ほど“毀誉褒貶”が激しい人はいない。2018年11月19日、金融商品取引法違反などの容疑で突然、逮捕されてゴーン被告となった。

 あれから丸5年が経過したが、レバノンに逃亡したゴーンという男は、所詮はフランスで真のエリートになれなかったことで日産を私物化し、金の亡者になったのだろう。

(TEXT/佃義夫)

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