■まだまだこだわり盛りだくさん! タイヤ・ブレーキ編
ステアリングは最近のホンダが積極的に採用している電動パワステが大きな進化を見せていた。これまで以上にナチュラルな操舵フィールで、違和感はほとんどなし。
伝統的な一般の油圧ポンプ式パワステに比べても遜色はなく、むしろ、エンジンパワーをロスさせず、システムが軽量。
そして、アシストの追従遅れがないなどのメリットを考えると、スポーツカーにふさわしいすぐれものと思えた。
ブレーキもいい。ペダル剛性が高く、踏力に応した制動力がレスポンスよく発生してくれる。フロント16インチのベンテレーテッド、リア15インチの大容量ディスクパッドも高性能なタイプを使用。
サーキットを丸々2時間も走った試乗会だったが、フェードもなく、ストッピングパワー抜群であった。タイヤはフロント205/55R16、リア225/50R16の組み合わせ。
ハイパワー後輪駆動車の常識的セッティング手法だが、ハンドリングに好結果をもたらしている。
ターンインでのアクセルオフでテールスライドを抑え、パワーオンでも余分なテールスライドを防ぎ、バランスのとれたハンドリングとしているのだ。
素晴らしい乗り心地も、このBSの新開発タイヤに負うところが大きいと思う。
■S2000で切り開いた高性能FRの世界
FRスポーツとなれば、どれだけドリフト走行が楽しめるかも気になろう。しかし、これまでのFR車ほど容易にというわけにはいかない。
素晴らしいシャシ性能のおかげで、一般のワインディングでは相当な思いきりが必要。サーキットならダイナミックなドリフトが楽しめるが、公道ではけっこうリスキーだと言っておきたい。
それにしても、S2000の走りはファンタスティックだ。NA2L、FRのオープンモデルとして、これだけ速く、かつ完成度の高いスポーツカーは世界を見渡してもない。
9000回転を許容する刺激的なエンジンは圧倒的パワーと扱いやすさを両立し、オープンモデルとは思えない、ダイレクトでリニアリティ豊かなハンドリングを持っている。
走りのパフォーマンスは言うことなしである。ポルシェやフェラーリをしても決して作れないクルマに仕上げた。価格は338万円。作りの質感の高さを考えると、きわめてリ―ズナブルと思う。
近代スポーツカーは走り一辺倒ではなく、快適性が大事な要素だが、S2000はこの点も充分にクリアしている。
ステアリングやクラッチが重すぎることはないし、乗り心地もビシッと引き締まった心地良いもの。トップは電動で素早く開閉するし、クローズド時のコクピット内の静粛性も高い。
しかしである。走らせていない時のS2000からは、その高性能ぶりをアピールするようなムードが伝わってこない。シャープで個性的なボディは新鮮だが、高揚するというほどの迫力はない。
また、コクピットはきわめて平凡だ。S2000に最も欠けている部分は、このコクピットの演出。せっかくの高性能スポーツカーなんだから、もっともっと興奮させてほしかった。
オープン2シーターは日本においては、限られたユーザーをターゲットにしたクルマである。
ホンダが創立50周年を記念してスペシャルなオープンをプレゼントしてくれたことを感謝しつつも、S2000のエンジンを使ったFRセダンを期待したくなるのは私一人だけではないだろう。
ホンダとしては初めての高性能FRをこれだけ見事に仕上げたのだから、FR解禁後の第2弾、第3弾にもおおいに期待したい。
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