万が一の事故の際、私たちの身体を守ってくれるシートベルト。衝突の際にフロントガラスやハンドルなどに衝突してしまうことを避けるほか、車外放出のリスクからも守ってくれます。そんな安全装備のひとつであるシートベルトですが、使い方を間違えれば凶器と化すことも。特に気を付けたいのが幼児への使用です。
文:吉川賢一/アイキャッチ画像:写真AC_MST052607/写真:Adobe Stock、写真AC
身長が140センチ未満だと、シートベルトは危険
シートベルト(座席ベルト)の使用に関しては、道路交通法第71条3の3において、「自動車の運転者は、幼児用補助装置を使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならない」と定められています。この「幼児」とは、同法14条3において「6歳未満のものをいう」と規定されており、要するに6歳未満の幼児を乗せる際は、ドライバーは幼児用補助装置(いわゆるチャイルドシート(3歳から4歳頃まで使われるもの)やジュニアシート(3歳から4歳以上を対象とするもの)など)を使用しなければならない、ということになります。
そのため、6歳を迎えたあとは、大人と同じく、幼児にもクルマに装備されているシートベルトを着用させているという人は多いかと思いますが、JAFによると、クルマに装備されているシートベルトの適合身長は140センチ以上。116センチ程度が平均身長(厚生労働省による)とされる6歳の子供には適合せず、身体を守ってくれるどころか、凶器となってしまう可能性があるのです。
肩ベルトは首に、腰ベルトは腹部に激しく食い込んだ
6歳以上の子供がジュニアシートを使用しない危険性については、JAFがユーザーテストによって、検証をしています。
実験では、2体の6歳児ダミー人形を、ミニバンの後席(2列目)に、ジュニアシートを使用した状態と、ジュニアシートを着用せず、シートベルトを着用した状態でそれぞれ載せ、走行速度55km/hでフルラップ前面衝突実験を実施。その結果、ジュニアシートを使用しないでシートベルトを着用していた後席のダミー人形は、衝突の衝撃で体が前に押し出されたことで、肩ベルトは首に、腰ベルトは腹部に激しく食い込み、大変危険な状態に陥ることがわかったそう。
ジュニアシートを使用していたダミー人形は、衝撃をしっかりと受け止めることができていたとのことで、やはり身長(座高)が適合しない幼児は、ジュニアシートを使用することで座高を上げ、鎖骨や胸郭、骨盤などの衝撃に耐えられる箇所でシートベルトを着用できるよう調節しなければ、かえって危険である、ということがわかります。
このユーザーテストでは、同時に、助手席に10歳児を想定したダミー人形を、シートの背もたれを少し寝かせた状態で座らせてシートベルトを着用させて座らせ、衝突するとどうなるか、という検証も行われています。その結果、この10歳児ダミーは、背もたれを寝かせていたことで、衝突の衝撃で、シートベルトの拘束から身体が抜けてしまい、座席から滑り落ちて足元に潜り込んでしまう「サブマリン現象」に陥ったそう。グローブボックスを破壊するほど膝を強打しており、着座時の姿勢も重要であることがわかります。
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