デロリアンは「デローリアン」だった!! 徳大寺有恒がデローリアンに乗った

■徳さんが見た、デローリアンの最大の問題点とは

 低いポジションだが、後方を含め、視界はそんなに悪くない。クラッチは軽く、気軽につなぐことができる。

 エンジンはPVR(プジョー、ボルボ、ルノー)共同開発のV6、2849ccだ。とりわけチューンナップされているわけでもなく、アメリカ流にいえば130馬力(AEネット)で、トルクは21.2kgmと驚くべきものではない。

 低速トルクはたっぷりとあり、フォースギアあたりでもスロットルを踏めばグイグイ車速を上げる力強さはあるが、あくまでも、このV6はヨーロッパの高級車向けに作られており、スポーツカー的な回転の上昇は期待できない。

 スティアリングはパワーアシスト付きで、ヨーロッパ車のようにしっかりとした剛性感を持つ。

 ただ残念なことにエンジンとサスペンションの設定がアメリカを意識したものになっていて、シャープさに欠ける。

 故コーリン・チャップマンが率いるロータスの技術陣の手によるシャシは充分なパフォーマンスを誇り、重厚で乗り心地がよく高速道路は余裕で走るが、ワインディングが楽しいというものではない。

 それではこのクルマを破産(正確には会社を)に追い込んだものはなんなのだ。このクルマの一番大切な問題点は実はそれなのだが……。

 私はデローリアンに1日、300km以上乗って、このクルマからデローリアンの主張や個性、香りや味というものをいっさい感じることがなかった。

 もしもデローリアンという名前でなかったら、3日もすれば跡形もなく忘れ去ってしまうような印象の薄さなのだ。

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でデローリアンが一般に認知されたのはDMCが倒産して3年後の1985年のことだった
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でデローリアンが一般に認知されたのはDMCが倒産して3年後の1985年のことだった

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