徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回は日産 シルビア・ガゼール RS-Xを取り上げます。
2002年まで日産で生産されていた2ドアノッチバッククーペがシルビア。そして1979年、シルビアが3代目(S110型)にフルモデルチェンジした際、同時に発売開始された姉妹車がガゼールでした(こちらはやや短命で、1986年までの生産)。
シルビアとして4代目、ガゼールとしては2代目となるS12モデル最大の売りは、スカイラインRS-TURBO譲りのDOHC16バルブ2Lターボエンジン。その走りは強烈そのもので、ライバルのセリカはもちろん、同門のスカイラインを超えた加速、ハンドリングと賞賛されました。
そんなシルビア・ガゼールRS-Xの試乗記を『ベストカーガイド』1983年11月号よりリバイバル。
※本稿は1983年10月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
初出:ベストカー2016年12月26日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
■ドライバーに緊張感を与えるエンジンフィール
FJ20E-Tのフィールは国産ツウィンカムユニットの中でも独特のモノである。それはトヨタの3T-GEUなどと比べても、よくいえばレーシー、悪くいえばラフである。
超高速機関銃が火を噴いたときのようにダ、ダ、ダ、ダという音が連続する。レヴカウンターの針が4000を超えたらもうこっちのものだ。
よく締め上げられたサスペンションを持ってしても、ノーズアップして加速に移る。
そこから7000回転までFJ20E-Tは気持ちよくというより、ドライバーにある種の緊張を与えつつ登り詰める。
このフィールはどちらかといえば、マスプロのツウィンカムというより、スープアップされたユニットに近いものだ。どちらを好むかは、むろん好みの問題だが、私は箱根山中を気力をみなぎらせて走るには、FJ20E-Tのフィールはいいと思う。
とにかくシルビア・ガゼールRS-Xの走りは、その近代的なフォルムから受けるイメージよりもはるかに荒々しく、男っぽいものである。
FJ20E-Tはターボらしさをいくぶん、取り除く方向へと行き始めているが、それでもやはり本当のトルクは約4000回転から。これも私は文句ない。
問題はむしろギアレシオでローギアとセカンドギアのギャップが大きすぎる(3.321と1.902)ことなのだ。
まぁ、これでも100km/h以上のハイスピードドライブをするとか、サーキットなら問題はない。しかし、日本的なワインディングロードでスポーツドライビングを楽しむためにはちと困るのだ。
それにスカイラインRS-TURBOと同じものを使用するトランスミッションのフィールがよくない。そろそろ、このへんを解決してもらえないだろうか。
新型シルビアとガゼールのエンジンラインアップで望外だったのはCA18E-Tの出来だ。CA18Eにターボを与えたこのエンジンは、L型ベースのZ型エンジンの終焉を物語るものである。
迫力や速さという点ではFJ20E-Tに及ばないが、走りやすさという点ではCA18E-Tのほうが上位だ。吹け上がりがよくターボの利きがスムーズで、つながりのいいエンジンなのだ。
最高出力は135psだが、0〜400m加速は16秒82と充分に速い。ATとのマッチングもよく、価格も200万円以下からラインアップされるとお買い得だ。
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