■静粛性の高さは「ダントツ」、乗り味の絶妙な味付けに感動!
まずは、30km/h以下の低速から。ノート(ノートオーラも)と同じシフトレバーでDレンジへいれ、走り始める。
最近国産他メーカーも採用しているデュアルピニオンアシスト式電動パワーステアリング特有の「軽めだが芯を感じるしっかりした操舵感」のハンドルを回していくと、最小回転半径がとても小さいことに気づく。
アリア2WDの最小回転半径は5.4m。大径19インチタイヤを装着したクルマではトップでエクストレイル(5.6m)よりも小さい。
「専用プラットフォームのおかげで、サイドメンバースパンを狭められた(日産自動車、中嶋光チーフヴィークルエンジニア)」とのこと。アリアの大きな魅力のひとつだ。
次にロードノイズが皆無であることに驚く。中嶋CVEは、「ラウンジのような快適な静けさ」と表現したが、まったくそのイメージ通りだ。
また、段差を乗り越える際には、タイヤの表面がソフトにたわむような、当たりの柔らかさがある。よくある表現だが、「毛足の長い絨毯の上を走る」かのような静けさだ。
遮音対策を施したボディ図を見せてもらったが、遮音ガラスや車体フロアカーペット、タイヤ、ホイールハウスインナーへの吸音材など、「音振性能エンジニアの執念」がうかがえる対策ぶりだった。元から静かなモーター音も低減したというから、よほど本気になったのだろう。
ただ、2トン近い車重(カタログ車重は1920kg、ドライバーである筆者に加えて後席に1名乗車)のためか、やや強めのブレーキングをした際や、ハンドル操作を急ぐと、「ゆさっ」としたボディモーションが残る。
よくいえば大型高級SUVが持つようなクルーザーのような大らかな動きなのだが、CセグメントSUVのなかでは、アリアはかなりのソフトな乗り味に設定されているようだ。
一般道へ出て60km/h程度でストップ&ゴーを繰り返すシーンでも、高速道路で100km/h程度まで速度を上げても、アリアの静粛性はバツグンに高い。
同じコースで他メーカー製のバッテリーEVに試乗していないので他メーカーとの比較はできないが、少なくともリーフとは比較にならない、驚くほどの静粛性だ。
また、不思議なことに中速以上になると、足回りに「しっかり感」がでてきた。低速で感じた「ゆさっ」とした動きはなくなり、乗り味が一気に引き締まったのだ。
「低速域では足は硬いが、高速域になると気にならなくなる」というのが一般的なのだが、アリアはその逆。
おそらく、駆動モーターの駆動反力でボディモーションを緻密に抑える「駆動力制振制御」のおかげだろう。低速での極上の乗り味と、中速以上での安心感、絶妙な味付けと感じた。
■リニアなフィーリングだが絶対的な加速力は「並み」程度
加速フィールは実にリニア。ドライブモードを「ECO」、「STANDARD」、「SPORT」と変えていくと、踏み始めの加速度は強くなるが、絶対的な加速力は「並み」程度。
バッテリーEVのなかには、圧倒的な加速力をウリにするモデルもあるが、アリアはそうしたところは狙っていないようだ。ただ、(高速道路での合流などではもう少し欲しいかな、とも思ったが)筆者は「ECO」で十分に感じた。
またe-PEDALは、3つのモードでどこでも「ON」にできるが、同乗者がいる場合は「OFF」が正解だ。
ボディモーションが大きく出やすいため、アクセルペダルに対する動きがリニア過ぎて、普通の乗用車の間隔でペダル操作をしてしまうと、同乗者が酔う可能性もある(特に踏み込みを戻すときが難しい)。
ただし、一人乗り、かつ、ワインディングなどの限られた場所で使うぶんには、実に楽しい装置となるだろう。
できれば、e-PEDALではない方法で、減速度を段階的にコントロールできる機能が欲しい。長く続く下り坂などでは、Bレンジやe-PEDALの減速度コントロールだけでやり過ごすのは難しく、強さをセレクトしたくなる。
ヴェゼルハイブリッドには、スポーティな走りのためだけではなく、4段階の現速度コントロールのためのパドルシフトがあった。パドルシフトでなくてもいいのだが、減速度を段階的にコントロールできる何らかのシステムは欲しいと思う。
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