元GT-R開発ドライバーがGRヤリスの走りに脱帽! 「参りました! 絶対欲しい」って!!

元GT-R開発ドライバーがGRヤリスの走りに脱帽! 「参りました! 絶対欲しい」って!!

 滅多なことでは走りを誉めない元GT-R開発ドライバーの鈴木利男氏に「参りました」と言わせたいだけのこの企画。編集部が自信を持って薦められるクルマを用意して利男氏に乗ってもらうもので、今回はスバルWRX S4 STIスポーツR EX、GRヤリスRZハイパフォーマンス、ベンツC220dオールテレインの3台を用意した。

※ベストカー2022年10月26日号より(スペック、価格などは掲載当時のものです)

PHOTO/奥隅圭之

WRX STIなき今、スバル最強のスポーツセダンがWRX S4。275psを発揮する2.4Lターボと前45: 後55mのトルク配分をベースに4輪を自在に駆動するVTD AWDの組み合わせ。価格477万4000円(CVT)

●スバルWRX S4


 最初に乗ったのはWRX S4。ステアリングに違和感があると言う。

「中立付近にヘンな遊びがあるんですよね。ステアリングを切ると、一瞬遅れて荷重がかかる感覚。ノーマルモードとコンフォートモードではそんなことないのに、スポーツモードにすると出てくる現象です。特に下りの旋回で前荷重がかかっている時により感じます」(発言はすべて鈴木利男氏)

 モードの切り替えでステアリングの重さも変わるが、その制御がうまくいっていないのかも。ただし、撮影現場まで運転していった編集部員は「全然気づきませんでした」とのことなので、鬼センサーを持つ利男氏だけが発見できる弱点なのかもしれない。

 全体的なハンドリングはどうか?

「車高が高いクルマの感覚。サスペンションがストロークした時に、下に沈むのではなく上に返される感じがあります。ダンパーの問題ではなく、ジオメトリーなど基本設計からくるものだと思います。それと、姿勢が前下がりでリアに荷重を移しにくい。終始弱アンダーで、ドライバーのワザが使えないんですよね」

 エンジンはパワフルだが、官能性には欠けるとの評価。SPT(スバルパフォーマンストランスミッション)の名がついたCVTはダイレクト感があっていいとのこと。だが、違和感のあるステアリングフィールと腰高感のあるハンドリングで「参りました」とはならず。

WRX STIなき今、スバル最強のスポーツセダンがWRX S4。275psを発揮する2.4Lターボと前45: 後55mのトルク配分をベースに4輪を自在に駆動するVTD AWDの組み合わせ。価格477万4000円(CVT)
WRX STIなき今、スバル最強のスポーツセダンがWRX S4。275psを発揮する2.4Lターボと前45: 後55mのトルク配分をベースに4輪を自在に駆動するVTD AWDの組み合わせ。価格477万4000円(CVT)

●トヨタGRヤリス


 そう簡単な相手(利男氏)ではないのは重々承知。業界内で絶賛の嵐が吹きまくっているGRヤリスならどうか?
 試乗車はオプション込み約508万円のRZハイパフォーマンス。「高いね〜」とまずは価格の感想。

 走り出す。ひとつ目のコーナーを曲がった瞬間「リアサスいいね!」と声が出た。
「リアに荷重がちゃんと乗るから前後のサスペンションのストローク量を合わせやすい。コーナーでボディが下に沈むんですよ」

 隣に乗っていても、飛ばすほどにボディが路面に吸い付いていくような感覚がわかる。ドスの効いた重低音を響かせるエンジンもめちゃくちゃ元気がいい!

「エンジンも凄いね。繊細さはないけど、1.6Lとは思えないパワーでどこからでもトルクが出ます」

 ノーマルモードでも圧倒的な速さだが、スポーツモードも試してみる。アクティブトルクスプリット4WDを搭載するGRヤリスは、走行モードにより前後のトルク配分が変わる。ノーマルモードは前60:後40だが、スポーツモードでは前30:後70とリアの駆動力が増大する。

「ああ、これは明確に変わりますね。スポーツモードはリアの駆動力がかなり上がって、さらに運転しやすくなります。けっこうなペースで走っても全然挙動が乱れず、段差の通過もサスペンションが上手にいなしてくれます。でも、ノーマルモードでも充分な速さだよね」

 利男氏の知り合いにGRヤリスに乗っている人がいて「速くて乗りやすいけど、スポーツカーを操っている感覚があまりない」と言っていたとか。それもあって「予想していたのと全然違って驚いた」と利男氏。そして「これは楽しいクルマ。買っちゃおうかな?」という言葉まで飛び出した!

「タイヤ(ミシュランパイロットスポーツ4S)とのマッチングが凄くいいんですよ。ただ、ステアリングが常に重めでグリップ感がつかみにくいところもありますね。限界を超えた時にどうなるかがわかりにくい。サーキットでぜひ試してみたいね」

 そんな“武闘派”なのに乗り心地がいいのも特筆すべきポイント。サスペンションは相応に硬いのだが、路面からの突き上げをうまく吸収してくれる。それもタイヤとのマッチングのよさを示しているのだろう。この企画、3回目にしてついに利男氏が絶賛するクルマが現れた!

世界的にも珍しい直3、1.6Lターボエンジンを搭載。WRC直系のアクティブトルクスプリット4WDを搭載する。6速i-MTはエンスト防止のほか自動部リッピングも行う秀作だ。456万円(6MT)
世界的にも珍しい直3、1.6Lターボエンジンを搭載。WRC直系のアクティブトルクスプリット4WDを搭載する。6速i-MTはエンスト防止のほか自動部リッピングも行う秀作だ。456万円(6MT)

●ベンツC220dオールテレイン


 最後はジャンルが大きく変わってベンツCクラスのオールテレイン。エンジンは2.2Lディーゼルターボだ。

「まぁ……ベンツですね」
 というのが第一声。隣に乗っていてもその感想はよくわかる。特に前の2台がガソリンターボの本格スポーツで、それ相応の走り方でチェックをしていたから、あらゆる面でユルさを感じてしまう。
 しかし、気持ちも身体もこのクルマに慣れてくると、このユルさが心地いいことがわかってくる。

「トータルでよくできたクルマ。ゆっくり走っても快適だし、飛ばしても安定しています。ベンツはすべての操作が軽いから長距離を走っても疲れない。クルマに何を求めるかですよね。1台ですべてをこなせるという意味では、最高のクルマじゃないですか?」

 ハンドリングにも独特の魅力がある。
「コーナリングでは曲がり始めは柔らかいんだけど、荷重をかけていくとジワーッと沈んでいって、あるところでロールが収まります。旋回中に段差があっても姿勢に与える影響がほとんど出ません。また、小回りするとよくわかるんだけど、ボディとタイヤが別々に動くんですよ。だから姿勢変化が出ないんですよね」

 すべてがベンツの方程式どおりというか、こちらが「ベンツだったらこうだよね」と想像するとおりにできているということだ。トルクフルな2.2Lディーゼルターボエンジンも期待にそぐわぬ完成度。誰もが納得の出来である。

Cクラスステーションワゴンの最低地上高を約40mm高めた4WDクロスオーバー。日本では2.2Lディーゼルターボ+ISG(マイルドハイブリッド)のワングレードとなる。価格796万円(9AT)
Cクラスステーションワゴンの最低地上高を約40mm高めた4WDクロスオーバー。日本では2.2Lディーゼルターボ+ISG(マイルドハイブリッド)のワングレードとなる。価格796万円(9AT)

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