実質約445万円で買える ホンダの燃料電池車[新型CR-V e:FCEV]は本気で買いたくなるほどのデキだったのか? 

■インテリアの質感、居住性はどうか?

10.2インチのフル液晶メーター、やや小さい9インチのディスプレイを装備。質感は上質
10.2インチのフル液晶メーター、やや小さい9インチのディスプレイを装備。質感は上質

 インテリアは黒で統一された上質テイスト。シート地にプライムスムースを使ったり、ステアリングホイール表皮を合成皮革(シンセティックレザー)にしたりと、FCEVらしい環境への配慮だ。肝心の座り心地や握り心地も悪くない。

 メーターパネルは10.2インチサイズのフル液晶タイプ。サイズ・操作性ともに申し分なし。だが、HondaCONNECTディスプレーの9インチはやや小さいか。車格的には現行型アコードと同じ12.3インチが望ましいだろう。

 メニュー画面に水素ステーションの検索タブを配置してあるのは親切でありがたい。シートヒーターやステアリングヒーターを備える一方、シートベンチレーションはなし。マルチビューカメラシステムやワイヤレス充電器などは標準装備。パノラマサンルーフはメーカーオプションでも設定がない。

後席は座面下に水素タンクがあるのを感じさせない十分な広さだった
後席は座面下に水素タンクがあるのを感じさせない十分な広さだった

 後席は大人がゆったりくつろげる広々空間。身長175cmの筆者に運転席を合わせた状態で膝前空間はこぶし3つ分。頭上周りもこぶし1つ以上の余裕がある。座面下に水素タンクが潜んでいる影響でシートクッション厚を薄くする必要があったそう。だが、それを感じない出来映えには感心した。

 ハンズフリーアクセスパワーテールゲートを使ってバックドアを開ける。そうすると、異質なラゲッジ空間が出現。水素タンクを収めるため、奥側がボコッと出っ張っているのだ。悪目立ちすると言えばそうだが、フレキシブルラゲッジボードを上段にセットすれば、水素タンクを収めるエリアとの段差はなくなる。

2段式のラゲッジスペース。上段にフレキシブルラゲッジボードをセットすればよほど大きなものを積まないかぎり、日常使いでは不便さは感じないだろう
2段式のラゲッジスペース。上段にフレキシブルラゲッジボードをセットすればよほど大きなものを積まないかぎり、日常使いでは不便さは感じないだろう

 さらに、フルフラット時の段差もほぼなかったのが意外な良さだった。荷室に備わるDC給電口にHonda Power Exporterを繋げば、AC200V/100Vの給電が可能。最大で一般家庭の約4日分の電力が取り出せるという。とはいえ、AC100V/1500W電源が車内に欲しい。内側に1つあるだけでも利便性が大きく変わる。

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■CR-V e:FCEV試乗開始! アクセルを踏んだ瞬間から!!!

走り出しから上質さを感じるCR-V e:FCEV
走り出しから上質さを感じるCR-V e:FCEV

 というわけで試乗スタート。アクセルを踏んだ瞬間、このクルマの良さに気付かされた。スムーズかつスッキリした乗り味。これはイイクルマと確信し、公道へ出る。駐車場よりもザラついた路面状況だが、滑らかさは変わらない。

 今度は車線変更に合わせてステアリングを素早く切ってみる。車重2010kgはやや重く感じるも、素直な動きでシャシー性能のシッカリ感もある。上質な乗り心地と高い操安性の両立。重心高-11mm(同モデルハイブリッド車比)の恩恵や振幅感応型ダンパーの効果も大きい。

 では静粛性はどうか。この手のクルマはいつもと違うノイズが目立つはず…。しかし、フロントドアの遮音ガラスやノイズリデューシングホイールなど、徹底したノイズ対策のおかげで不快感はない。手元の減速セレクターを操ればアクセルオフ時の回生力が変化。最も強い減速度を選択してもワンペダル的に走ることは難しかった。

CR-V e:FCEVのシステム図。後席前と後ろに2本の水素タンクを搭載している
CR-V e:FCEVのシステム図。後席前と後ろに2本の水素タンクを搭載している

 CR-V e:FCEVの肝となるパワーユニットはフロントフード下にはGMと共同開発した新世代燃料電池システムにモーターギアボックスなどを一体化したもの。

 17.7kWhのリチウムイオンバッテリーのほか、補機類で構成するインテリジェントパワーユニット(IPU)を床下に配置。車両後方には約4.3kgの水素を充填できる高圧水素タンクを2本積む。

 そもそもFCEVとは、水素と酸素の化学反応によって作り出した電気でモーターを動かして走るというもの。排出するのは水のみ。CR-V e:FCEVは左前輪の後ろあたりからシステム側の判断で排水される。

サイドマフラーから水が排出される。クラウンFCEVのように任意のスイッチで水が排出されることはできない
サイドマフラーから水が排出される。クラウンFCEVのように任意のスイッチで水が排出されることはできない

 パワースペックは177ps/310Nm。モーターならではの高レスポンスと途切れのない加速感が心地よい。ぶっ飛んだ速さはないが、物足りなければSPORTモードを選べばいい。アクティブサウンドコントロールの演出とともにグッと前に引っ張られる加速を味わえる。

 コンソールパネルに備わるeボタン。「AUTO・EV・SAVE・CHARGE」の4モードを用意するが、基本はAUTOモードで問題なし。CR-V e:FCEVのストロングポイントはプラグイン機能を備えること。

 左フロントフェンダー部に備える給電機能付き普通充電ポートから充電すれば、それだけで約61kmも走れる。6.4kWの充電器を使えば2時間半で満充電できる。

水素は1㎏あたり1650円、満充填するは4㎏なので6600円、満充填あたりの走行距離は約621km
水素は1㎏あたり1650円、満充填するは4㎏なので6600円、満充填あたりの走行距離は約621km

 この仕組みはMIRAIやクラウンFCEVにはない。普段の生活圏は充電した電力を使って走行、ロングドライブ時は発電した電力もプラスして長距離を走る。水素の充填時間は約3分。ガソリン車の給油と同程度の時間で満充填できるのは嬉しい。トータルの航続可能距離は約621kmを謳う。

■ホンダCR-V e:FCEV(FF)主要諸元
ボディサイズ=全長4805×全幅1865×全高1690mm
ホイールベース=2700mm
車両重量=2010㎏
FC(燃料スタック)=125ps
モーター=130kW(177ps/310Nm)
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池17.7kWh
水素=一充填走行距離は約621km(水素タンク=荷室下56L、後席下53L)
EV=一充電走行可能距離は約 61km

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