■GRヤリスの存在意義は
さてここからは、編集部から依頼があった「GRヤリスの存在意義」などを4つの項目に分けて考察していこう。
●トヨタは国産市販車最高のスポーツモデルを造ろうと思ってこのGRヤリスを開発したのか?
そのとおりだと確信している。そうでなかったら、いろいろな社内事情もある中で、トヨタが専用のボディとパワートレーン、専用に近いプラットホームを新たに開発した挙げ句、生産時の精度向上のため手作りに近い方法で生産するなんてことはしないだろう。
●GRヤリスはそのレベルに達しているのか?
サーキットのラップタイムに代表される速さが日本最強かは別として、すでに目標に対する非常にレベルの高い合格点はクリアしている。今後は市販したことで出た課題も解決しながら、その魅力や実力をさらに高めていくに違いない。
●GRヤリスの価格は安いのか高いのか?
絶対的に見たら、ヤリスという車名が付くコンパクトカーが(総支払い額で500万円を超える)この価格は、安くはない。しかし性能以上にこれだけパッションが詰まった、精魂込めて生産されるクルマの価格と考えれば、(「安い」というのは語弊があるにせよ)まったく高くはない。
●ライバルと言えるモデルはあるのか?
「価格や近い同ジャンル」という意味なら、近々マイナーチェンジされるシビックタイプRやメガーヌRSがライバルだろう。しかしGRヤリスはその成り立ちや存在意義などを考えると、今のところ直接的なライバルはない孤高の存在と断言できる。
とはいえ考えてみると、かつて存在したインプレッサWRX STIとランサーエボリューションは、お互い「宿命のライバル」といえる相手がいたからこそあれだけ成長した、という事実がある。GRヤリスの成長を考えると、早いうちに直接的なライバル車の登場を期待したい。
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■まとめ
本日めでたくGRヤリスが登場したわけだが、GRヤリスの周辺事情は諸事情により「来年のGRヤリスをベースにした新型WRマシンの投入」が見送りとなったあたりからなのか、うまく回っていないところもあるようだ。
こういったクルマは「クルマそのもの」というハードウェアが第一なのはもちろんだが、そのいっぽうでモータースポーツ参戦やそのサポートに代表される周辺の動きも重要だ。
だから新型WRカー投入など、周辺の動きもうまく行かないと(筆者のようにGRヤリスを買って普通の街乗りに使うユーザーには大きな影響はないにせよ)、競技のために買ったユーザーやファンにとっては「凄いクルマだけど、何のためのクルマだったんだ?」ということにもなりかねない。
それだけにGRヤリスがそうならないように、トヨタのGR部門にはいろいろ分野で頑張って欲しい。
また、GRヤリスをベース車両としたトヨタの新型WRカー投入は、本来2021年から…を予定していたが、これが諸事情により幻となったことも事態を難しくしている。
従来なら、投入が先送りになったのであれば「翌シーズンから投入する」ということになるのだが、いっぽう2022年から始まるWRCの新レギュレーションはWRカーのハイブリッド化の予定があるなど、かなり大きな転換点になる。なんとしても2021年シーズンに間に合わせたかった…というのがトヨタ側の事情だろう。
現在のコロナウイルス禍を考えると、「参戦するメーカーが対応できるのか?」という懸念もある。この点を考えると「レギュレーションを変更したけど、新レギュレーションに対応できるメーカーが少なく、結局現行レギュレーションが延長された」ということになる可能性もあると、筆者は思っている。そうなると晴れてこのGRヤリスをベースとしたWRカーが参戦することになるのだが…。
事態がどうなるのか、予断を許さない状況だ。
このような「変革」は、ピンチも生むがチャンスも訪れる。かつてこういったチャンスをものにしたのがマツダのル・マン24時間レース総合優勝(1991年)だったわけで、GRヤリスのWRカーにも同じような大逆転が起きる可能性もなくはない。
もし当初の予定どおり、GRヤリスが新型WRカーのベース車両となる場合には、参戦のためのホモロゲーション(連続する12ヶ月にGRヤリスを2万5000台以上生産したという証明)が必要になる。大逆転が起きるよう、GRヤリスに興味のある方や応援してもらえる方は、ぜひこの車両の購入を検討してほしい。
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