■前方視野の広さで運転環境が大幅進化
多人数で乗車できて荷物も積みやすいミニバンは、国内の売れ筋カテゴリーだ。新車として売られる小型/普通乗用車の内、20~25%をミニバンが占める。
そのミニバンの主力車種がステップワゴンだ。初代モデルは1996年に発売され、全高が1800mmを超えるミニバンでは、最初の前輪駆動車となった。この後、ほかのミニバンも、後輪駆動から空間効率の優れた前輪駆動へ移行している。
ステップワゴンはフルモデルチェンジを重ね、2022年5月には6代目へ刷新された。プラットフォームは先代型の5代目と共通で、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2890mmだから等しい。
その一方でボディサイズは拡大された。先代ステップワゴンの全長は、標準ボディが4690mm、スパーダは4760mm、全幅は両ボディとも1695mmだった。それが新型では、先代の標準ボディに相当するエアーの全長が4800mm、スパーダは4830mmだ。全幅も両ボディとも1750mmになる。
先代型の標準ボディは5ナンバー車だったが、新型のエアーは全長が110mm、全幅も55mm拡大され、全車が3ナンバー車になった。ここまでボディを拡大した理由を開発者に尋ねると、以下のように返答された。
「全長は衝突安全性を向上する目的で拡大した。全幅は、外観の存在感を際立たせるため、先代型に比べるとドアパネルを外側へ張り出させた。従ってボディは大きくなっても、室内空間はあまり広がっていない。それでもサイドウインドーの部分では、室内幅が拡大している」。
このように新型ステップワゴンは、ボディを拡大させながら、車内の広さは実質的に先代型と同等だ。しかし新型の車内に入ると、先代型に比べて広々としている。そこには複数の理由がある。
まず1列目の運転席に座ると、先代型に比べて前方が見やすく開放感もある。フロントピラー(柱)の角度を先代型よりも立てて、取り付け位置を車内側へ70mm引き寄せたからだ。ピラーが斜め前方の視界を遮りにくい。
インパネの上面も平らに仕上げ、視界がスッキリとしている。ボンネットが少し視野に収まり、ボディの先端位置や車幅も分かりやすい。
インパネ周辺の質感も向上したが、e:HEVの操作性は悪化した。アコードなどと同様、押しボタン式のスイッチになるからだ。慣れの問題ともいえるが、日常的にレバーで操作していると、Dレンジに入れる時にボタン操作がスムーズに行いにくい。
■3列目シートの改良で開放感がすごい
セパレートタイプの2列目シートは、エアーの場合、シート本体を内側へ寄せると前後に865mmスライドできる。外側でも610mmだから、3列目に乗員が座らない時は、2列目の足元空間を大幅に拡大できる。先代型に比べてシートの造りも見直され、床と座面の間隔を10mm広げたから、着座姿勢が最適化された。
3列目は床下に格納するため、座面の長さ(奥行寸法)は、先代型と同じく1列目に比べて約70mm短い。この点は不満だが、新型では座面の厚みを20mm増したから、先代型の底突き感が解消されて座り心地は良くなった。
3列目の足元空間は先代型と同程度だが、身長170cmの大人6名が乗車した時、2列目に座る乗員の膝先空間を握りコブシ2つ分に調節すると、3列目の膝先にも同程度の余裕が確保される。座面は短いが、座り心地は悪くない。床と座面の間隔も20mm拡大され、着座姿勢も快適になった。
車内の視覚的な開放感にも注目したい。新型は先代型に比べて背もたれの上側を少し細くデザインして、圧迫感を抑えた。サイドウインドーも水平基調で、前述の通りフロントウインドーから見える視界も拡大したから、乗員が周囲を見やすい。視覚的な面でも快適性を向上させた。
コメント
コメントの使い方