■新開発のハイブリッドシステムを採用した2.4Lターボハイブリッド
詳しいメカニズム解説をするにはスペースが足りないのでザッと説明すると、従来のTHSとはコンセプトが180度違うパフォーマンス型のハイブリッドシステム。
パワフルな2.4Lターボ(272ps/46.9kgm)に、前後にクラッチを挟んでモーター(82.9ps/29.8kgm)を配置。その下流に6速ステップATが接続される。
今度のクラウンは全モデル4WDだからリアには「eAxle」が装備されるが、こちらのモーター(80.2ps/17.2kgm)も2.5Lハイブリッドより4割以上強力だ。
というわけで、ワクワクしながらクラウンRSのスタートボタンをON。デジタルメーターにはタコメーターを表示できるモードがある。
エンジン回転がモーター出力との関係で制御されるTHSにタコメーターはほとんど意味がないが、新しいデュアルブーストハイブリッドはエンジンが「主」でモーターが「従」。
6ATのシフトにともない変化するエンジン回転数は表示する意味がある。
アクセルをそろりと踏み込むと、発進はTHSと同様にモーター走行で始まる。早朝の住宅街や人の多い商店街など、静かに走りたい時はこれがありがたい。
こういうマナーのよさは、THSと同様トヨタハイブリッドの美点と言っていい。
それが様変わりするのは、アクセルをぐいっと踏み込んだ瞬間だ。
目を覚ましたエンジンがフルブーストで前輪を駆動し、前後モーターもそれを全力でアシスト。
瞬間的にはトータル800Nm(約80kgm)近いトルクが4輪に供給され、クラウンRSはたちまち豪快な加速を開始する。
そのドライブフィールは従来のTHSとはまったく異なりダイレクト。6ATが2速、3速とシフトアップするたびに、息の長い加速感が持続する。
逆に追い越し加速ではシフトダウンせず粘り、モーターアシストで力強く加速するのが新鮮な感覚だ。
■4WDというよりFRっぽい? 歴代クラウン随一の「楽しめるハンドリング」に
シャシーも強力なパワートレーンをガッチリ受け止めていい味を出している。
2.5Lハイブリッドで感じた微少ストローク時のフルフル感は、AVSダンパーを奢ったクラウンRSではほぼ解消。感覚的にはサスのフリクションが大幅に低下したような印象がある。
ワインディングロードでペースを上げてゆくと、操舵初期からしなやかに足が動き、しかも大きな入力はしたたかに受け止めてバネ上を暴れさせないことに感心する。
さらにペースを上げてアクセルを開けると、リアモーターがしっかり後輪にトラクションをかけているのを体感する。
これは4WDというよりFRっぽい操縦感覚で、タイトコーナーでは「ひょっとしてカウンターまで行くかな?」と思うほど、後輪が積極的に曲がりに関与している。
もちろん、DRS(4輪操舵)とスタビリティコントロールが姿勢の乱れをチェックしているから、ドライバーの意図しない挙動に至ることはないが、アクティブにクルマを走らせている充実感はなかなかのモノ。
ファン・トゥ・ドライブという意味では、歴代クラウン随一の楽しめるハンドリングだ。
「ナルホド、これが造りたかったのね!」新型クラウン開発チームの真意を実感したクラウンRSの試乗でございました。
●トヨタ クラウンクロスオーバー(RS アドバンス)主要諸元
・価格:640万円
・WLTCモード燃費:15.7km/L
・全長:4930mm
・全幅:1840mm
・全高:1540mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:1920kg
・最小回転半径:5.4m
・最低地上高:145mm
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ、2393cc
・最高出力:272ps/6000rpm
・最大トルク:46.9kgm/2000-3000rpm
・フロントモーター出力/トルク:82.9ps/29.8kgm
・リアモーター出力/トルク:80.2ps/17.2kgm
・システム出力:349ps
・サスペンション:ストラット/マルチリンク
・タイヤサイズ:225/45R21
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