2020年で発売9年目!! なかなかモデルチェンジしないトヨタのベストセラー車「アクア」が、同じコンパクトカーの「ヤリス」発売でも消滅せず、新型が開発される理由とは?
かつて販売日本一にも輝いたトヨタ アクアの発売は2011年12月のこと。その人気にも関わらず、昨今トヨタが車種整理をする方針もあり、アクアはヴィッツ=現在のヤリスとの統合で消滅するのではないかと噂されていた。
しかし、当サイトで既報のとおり、新型ヤリスの公開時に、『(次期アクアは)現在開発中です』という証言を開発者から得ており、新型アクアの開発は進められているとみられる。
なぜ、ハイブリッドのコンパクトカーという共通点を持つヤリスが登場してもアクアは消滅しないのか? 自動車評論家の渡辺陽一郎氏が解説する。
文:渡辺陽一郎
写真:TOYOTA、編集部/CG:ベストカー編集部
【画像ギャラリー】ポジション被る?? アクアとヴィッツ/ヤリスの変遷を写真と時系列で見る!!
アクアの存続巡る背景にトヨタの「車種半減」方針
日本国内で展開されるトヨタのディーラーは、2020年5月に全店が全車を扱う体制へ移行する。トヨタの販売会社には、メーカーに依存しない地場資本の企業も多いから、販売系列は残るが取り扱い車種の区分は消滅する。
従ってトヨタ店が扱う「クラウン」、トヨペット店の「ハリアー」、トヨタカローラ店の「カローラ」、ネッツトヨタ店の「ヤリス」などは、今は専売モデルだが2020年5月以降は全店が売る。
その主な目的はリストラだ。全店が全車を売れば、ヴォクシー/ノア/エスクァイア、アルファード/ヴェルファイア、ルーミー/タンクといった姉妹車を廃止できる。マークXのように単独で生産を終える車種もあるから、車種数は半減する。
まず「姉妹車」を廃止する。同様に性格が似通った車種もなくなる。
例えばカローラセダンがミドルサイズの3ナンバー車になった以上、もはやプレミオ&アリオンは不要だろう。
ルーミー/タンクとポルテ/スペイドも、背の高い5ナンバーサイズのコンパクトカーという点で共通性があり、どちらかを廃止できる。
アクアと被る? ヴィッツHVの登場と意外な反応
そうなるとアクアも消滅する可能性がある。アクアは1.5Lエンジンをベースにしたハイブリッドのみを搭載しており、新型のヤリスも新世代の直列3気筒1.5Lハイブリッドを用意するからだ。アクアとヤリスはボディサイズが同程度だから、車両の性格も重複する。
時系列で振り返ると、先代ヴィッツは2010年に発売された。この時点で搭載したエンジンはガソリン車のみで、2011年にはハイブリッド専用車のアクアを加えている。
両車ともボディサイズは似ているが、ガソリンエンジン車のヴィッツ、ハイブリッドのアクアだから重複はない。ところが2017年になると、ヴィッツにもアクアと同じハイブリッドシステムを加えた。ここでキャラクターが重複した。
それでも販売店の反応はさまざまだった。「アクアはヴィッツに比べて後席が狭い。今になってヴィッツにハイブリッドを追加するなら、最初から設定して欲しかった。そうすれば後席の狭いアクアは必要なかった」という意見があった。
その一方で「アクアはヴィッツよりも天井が低く、ボディは少し軽い。そのためにアクアの運転感覚には、ダイレクトな印象が伴ってスポーティだ。アクアとヴィッツハイブリッドで選択に迷っているお客様に試乗してもらうと、走りの良さに感心して、アクアに決まることが多い」という話も聞かれた。
以上のような顧客の反応の違いが、自動車ビジネスの特徴であり面白さだ。アクアとヴィッツハイブリッドでは、サイズも機能も似ているのに好みが分かれる。
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