2019年2月に行った、フルモデルチェンジともいえるビッグマイチェンを行った三菱の「デリカD:5」が好調だ。日本自動車販売協会連合会(自販連)が発表している直近3カ月の販売台数見てみると、
2019年12月:1324台
2020年 1月:1365台
2020年 2月:1091台
2020年3月:2014台
最新(3月)の販売台数データでは2000台を超え、三菱のラインナップでは登録車単独1位の販売台数を維持している。
オラオラ顔に変わり、新開発2.2Lディーゼルのみのラインナップとなったがが、それが大当たりしたようだ。しかし、このクラスのミニバンでは、ライバルとして王者のトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」、日産「エルグランド」、ホンダ「オデッセイ」などが顔をそろえている。
なぜデリカD:5は堅調な売れ行きをキープできているのか? その理由を、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が分析する。
文/渡辺陽一郎
写真/編集部、MITSUBISHI
【画像ギャラリー】歴代デリカと販売好調の現行型デリカD:5の詳細を一挙紹介!!
■脈々と受け継いだ見かけ倒しではない悪路走破性能
最近はSUVの人気が高い。2020年1月と2月には、コンパクトSUVのトヨタ「ライズ」が小型/普通車の販売1位になった。ホンダの「新型フィット」はSUV風の「クロスター」を設定しており、今後はヤリスにも同様のタイプが加わる。
これはSUVの特徴でもある。「フィット」や「ヤリス」のようなコンパクトカーでも、大径タイヤにオーバーフェンダーを加えることで、SUVにアレンジできる。もともとSUVは悪路を走るクルマで、その目的のために大径タイヤなどを装着したが、今は悪路走破力を重視しないSUVも増えた。
このSUVの可能性に古くから注目していたメーカーが三菱だ。同社は1950年代にアメリカのウイリスオーバーランド社と契約を結び、ジープのノックダウン生産を開始した。1956年からは国産の三菱ジープを手掛け、1982年には洗練されたオフロードSUVの「初代パジェロ」を大ヒットさせている。
そして同じ年の1982年は、3列シートを備えるワンボックスボディの「デリカスターワゴン」に4WDを加えた。基本的な4輪駆動機能はパジェロと同じだから、悪路で駆動力を高める副変速機も装着する。最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)には190mmの余裕があり、悪路のデコボコも乗り越えやすかった。この後、デリカスターワゴンは1986年にフルモデルチェンジしている。
1994年にはミニバンスタイルの「デリカスペースギア」に発展した。ミニバンながら後輪駆動を採用して、センターデフを使ったフルタイム4WDを搭載する。パジェロと同じく駆動力を高める副変速機も備わり、ミニバンでは悪路走破力が抜群に高かった。
■店舗数から考えればライズに匹敵する人気車となったデリカD:5
2007年には現行型の「デリカD:5」に一新された。プラットフォームは、基本的にSUVの「アウトランダー」や「エクリプスクロス」と共通だ。駆動方式は前輪駆動と4WDに変わり、アウトランダーなどと同じく副変速機は装着されないが、悪路走破力は依然として高い。
多板クラッチで前後輪に駆動力を配分する4WDシステムには、クラッチの締結力を強めるロックモードが備わり、最低地上高も185mmだから悪路のデコボコを乗り越えやすい。今でもミニバンではナンバーワンの走破性能を発揮する。
デリカD:5は発売から13年を経過するが、今でも売れ行きは堅調だ。2019年12月に1324台、2020年1月には1365台、2月には1091台を登録した。
今のデリカD:5の売れ筋は、直列4気筒2.2Lクリーンディーゼルターボを搭載する4WDだから(2WDと4WDのガソリンエンジン車は2019年12月に生産を終えて今は在庫販売)、売れ筋価格帯も420~450万円に達する。この価格帯のなかで見ると、デリカD:5の売れ行きは、「アルファード&ヴェルファイア」「クラウン」「CX-8」に次いで多い。
しかも今の三菱は、国内の販売店舗数が少ない。トヨタは4系列を合計すると約4900店舗だが、三菱は約600店舗にとどまる。そうなるとデリカD:5の1店舗当たりの1カ月平均登録台数は2台以上だから、価格を考えると十分なボリュームだ。トヨタ全店が1店舗平均で2台を売れば、約1万台だから、デリカD:5は店舗単位で見ると大人気のトヨタ「ライズ」と同様の扱われ方をしている。国内の三菱を支える基幹車種だ。
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