今年の「世界で最もデザインが優れた車」、注目のベスト3はマツダ、ポルシェ、プジョーの順!?
2020年4月8日に、「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」が発表され、マツダ3が受賞。これはワールドカー・オブ・ザ・イヤー(WCOTY)の部門賞で、いわば世界で最もデザインが優れた車ともいえる。
デザインの良し悪しは、個人の好みが影響する部分があるとはいえ、ポルシェの最新モデルよりも評価された、という事実はある意味、驚きの結果でもある。
これはいったいどのような賞で、どんな車が歴代受賞しているのか? それを見ていけばある程度、マツダ3がどのような評価を受けているかも見えてくるというもの。
ベストカー本誌で元日産自動車デザイナーの故・前澤義雄氏と「デザイン水掛け論」を、長年連載していた経験もある清水草一氏とともに、以下、歴代受賞車を見ていきたい。
文:清水草一
写真:MAZDA、Porsche AG、Jaguar Land Rover
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世界カーオブザイヤー 日本車は過去4度受賞

新型コロナの影響もあって、あまり注目は集めなかったが、先月、マツダ3が「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を獲得した。
これは、ワールドカー・オブ・ザ・イヤー(WCOTY)が選ぶデザイン部門の大賞。今年の選考は当然のように、ネット投票・ネット発表でありました。
WCOTYの歴代の大賞および各賞の受賞車の顔ぶれを見ると、とても良識ある選考がなされていると感じる。
まだ創設から十数年と歴史が浅いので、そのぶん余計なしがらみなく、世界のカーマニアたち(23国・82人の国際的自動車ジャーナリストによる選考)が、とても素直に選んでいる印象だ。
日本車も公正公平に扱われており、過去4回、大賞を受賞している。
せっかくなので、歴代の大賞(WCOTY)受賞車を列挙しよう。
2005/アウディ A6
2006/BMW 3シリーズ
2007/レクサス LS460
2008/マツダ デミオ
2009/フォルクスワーゲン ゴルフ VI
2010/フォルクスワーゲン ポロ 6R
2011/日産 リーフ
2012/フォルクスワーゲン UP!
2013/フォルクスワーゲン ゴルフVII
2014/アウディ A3
2015/メルセデスベンツ Cクラス
2016/マツダロードスター
2017/ジャガー F-PACE
2018/ボルボ XC60
2019/ジャガー I-PACE
2020/キア テルライド
個人的には。2006年の先代デミオの受賞が特に「わかってらっしゃる!」と感じる。あれはデザインも操縦性も実に秀逸なコンパクトカーだった。
もちろん、2016年のロードスターの受賞もスバラシイ。ただ、今年のキア・テルライドの受賞はサッパリわかりません。見たこともありませんので……。
今年はマツダ3が受賞! デザインオブザイヤーの歴代受賞車は?

一方、過去、ワールドカー・デザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞した日本車はというと、2016年のマツダ ロードスターだけだった(この年、併せて大賞も受賞)。今年再びマツダが、マツダ3で受賞したのは、日本人としてとても喜ばしい。
こちらも、歴代受賞車を挙げてみよう。
2006/シトロエン C4
2007/アウディ TT
2008/アウディ R8
2009/フィアット NUOVA500
2010/シボレー カマロ
2011/アストンマーティン ラピード
2012/レンジローバー イヴォーク
2013/ジャガー Fタイプ
2014/BMW i3
2015/シトロエン C4カクタス
2016/マツダ ロードスター
2017/ジャガー F-PACE
2018/レンジローバー ヴェラール
2019/ジャガー I-PACE
2020/マツダ3
ほとんど納得のラインナップだ。いかにも知的でハイブロウな選択だが、近年は、ジャガー・ランドローバーグループとマツダが、9回中合計7回受賞している。

これは、この2社が近年、自動車デザイン界のリーダーであるということを表しているのではなかろうか。
両社のデザインに共通するのは、「シンプルな美」という点である。決して大衆の好みではなく、時代の先端という感じですね。
1位がマツダで2位がポルシェ! 今年のベスト3&マツダ3の評価は?

ちなみに今年の採点はこういうものだった。
●マツダ3(179点)
●ポルシェ タイカン(177点)
●プジョー208(144点)
タイカンとの差はわずか2点。僅差だったが、当然と言えば当然の勝利だろう。
タイカンのデザインは、ポルシェのEVと言われれば「うーむ、なるほど」ではあるが、パナメーラの派生車種のように見えないこともなく、フォルムにそれほどの斬新さがあるわけではない。
最低地上高が猛烈に低いように見えるけど大丈夫? なんて思ったりして。こういうスポーティなクルマは、シャコタンにすると自動的にカッコよく見える部分もあるので。
素人目には、「マツダがポルシェに勝ったの!?」とビックリかもしれないが、近年の実績を見れば、デザインでマツダがポルシェに勝つのは当然と言っていい。

プジョー208も魅力的なデザインで、「プジョーらしいプジョーが帰ってきた!」という感じはする。ただその良さは、あくまでプジョーらしい小粋さの復活というレベルで、マツダ3には比べるべくもない。
マツダ3のデザインは、猛烈にシンプルでありながらインプレッシブで美しく、邪念を徹底的に排除してたどり着いた悟りの境地のようなもの。考え抜いた末の無念無想とでも申しましょうか。もはや、どこか宗教的にすら感じる。

海外でもマツダ3のデザインに対する評価は高い。その割にパワートレインが物足りない(SKYACTIV-Xを含め)という評価も日本と同じだが、デザインだけを見ればピカイチで、タイカンに勝つのは当然ではないだろうか!
ということで、マツダ3が2020年のワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞したのは、至極順当だと思います。