12代目クラウン/2003-2008年
生誕50周年を前にした2003年の暮れに12代目のクラウンはベールを脱いだ。トヨタの総力を結集して開発され、デザインだけでなくメカニズムも大胆に変えている。キャッチフレーズは『ゼロ・クラウン』だ。
静から躍動への変革を掲げ、すべてをリセットしてゼロからスタートさせた。プラットフォームを作り直し、パワーユニットも伝統の直列6気筒に代えて新開発のV型6気筒DOHCを搭載している。
3Lエンジンに組み合わせるのはシーケンシャルシフト付きの6速ATだ。電動パワーステアリングを採用したことも大きなニュースと言えるだろう。また、エンブレムの書体も新デザインとしている。
誰が見てもクラウンと分かるデザインだが、動的性能は飛躍的に高められた。快適性を重視したロイヤルシリーズでも、欧州車のように軽やかなハンドリングを身につけている。技術の粋を集めて送り出されたV型6気筒エンジンも上質なパワーフィーリングだ。
運転が上手くなったと感じられるほど、クルマは素直に動く。エンジニアの意気込みほど販売は上向かなかったし、若いユーザーもさほど増えなかった。
が、日本の高級車の歴史を大きく変え、新たな1ページを開いている。オーナーを驚かせた革新的なクラウンが、12代目のGRS180系だ。
現行(15代目)クラウン/2018年~
14代目のクラウンは、イナズマのような切れ込みの入った個性的なグリルを採用して話題をまいた。これに続く15代目のGRS210系クラウンは、トヨタが不得手とする若い層を取り込むことに主眼を置いて開発されている。
エクステリアは、14代目の流れを汲むデザインだが、柔らかい面構成とした。欧州車を好むクルマ好きに目を向かせるためか、アウディが流行らせた6ライトウインドーを採用している。これに傾斜の強いリアピラーを組み合わせたから、見た目はスポーティだ。
マジェスタを統合したこともあり、ひと回り大きくなり、ホイールベースも延びた。キャビンは着座位置が低くなり、インパネも若々しいデザインとなっている。
パワーユニットは3種類あるが、3.5LのV型6気筒DOHCにモーターを組み合わせ、擬似変速も行うマルチステージハイブリッドを主役に据えた。パンチのある走りを見せ、熱効率40%以上を達成したハイブリッドも優れたドライバビリティの持ち主だ。
TNGAプラットフォームの採用により大きさを感じさせない気持ちいいハンドリングを手に入れている。
欧州の名門セダンと互角に渡り合えるトータル性能だが、クラウンの売りとなっていた押し出しの強さと重厚感は薄れてしまった。
「攻めの姿勢」の影に高級セダンとしては異例の金字塔
クラウンに限らず、トヨタのクルマは保守的で面白味に欠ける、と言われている。
が、クラウンは初代モデルを発売した1955年から21世紀の今まで、日本初、世界初のメカニズムを積極的に採用し、他のクルマに大きな影響も与えた。
観音開きドアの初代クラウンは前輪に独立懸架のサスペンションを採用し、2速ATのトヨグライドまでも用意していた。
2代目には日本初のV型8気筒エンジンも存在する。3代目からフロアを深くでき、衝突時に車室が保護されるペリメーターフレームを採用し、これを9代目まで使っていた。
世界初の4速ATやプログレッシブパワーステアリング、4輪ESC、電子制御エアサスペンション、ナビ機能を持つエレクトロマルチビジョンなど、今につながる電子デバイスを積極的に採用したのもクラウンである。
攻めの姿勢を貫いたから65年の間に700万台に迫る累計生産台数を記録できたのだ。高級セダンとしてはすごい台数である。驚異的な売れ行きを見せたから、次の世代のクラウンは攻めの姿勢を取れたし、新しいメカニズムも積極的に採用できた。
時には先走りすぎて失敗作の烙印を押されることもあるが、今になるとすごさがよく分かる。歴史を語れる日本が生んだ高級車がトヨタのクラウンだ。
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