軽トップ陥落はダイハツにとって死活問題
そうなるとダイハツでは、軽自動車販売1位に対する執着が薄れたのか。この点も販売店に尋ねた。
「小型車を堅調に売ることは大切だが、軽自動車の販売1位も守る。ブランドイメージと売れ行きに影響を与えるからだ。特に軽自動車は、ボディサイズ、エンジン排気量、ライバル同士の価格が近いから、ミライースとアルト、ムーヴとワゴンRという具合に選択に迷うお客様も多い」という。
その時に軽自動車販売ナンバーワンの実績があると、ダイハツを推奨しやすくなる。
「ダイハツの軽自動車販売1位は、まだ10年少々の実績だ。スズキは過去に30年以上1位だったから、再び1位を奪われると、軽自動車はやはりスズキが強かったという話になる。従って1位は譲れない」、と続けた。
つまり軽自動車販売の1位を一度取ったら、それを守り続けなければならないわけだ。同時にトヨタライズと競争しながら姉妹車のロッキーを、ルーミー&タンクと競いながらトールを売る必要もあり、厳しい戦いを強いられている。
軽自動車の第三勢力の台頭
このほかホンダと日産が軽自動車に力を入れていることも見逃せない。
ホンダN-BOXは国内の最多販売車種で、2020年1~7月の届け出台数は、累計で11万7676台に達した。2位のスペーシアは7万8661台、3位のタントは7万5361台だから、N-BOXには大幅に引き離されている。
これに伴ってホンダの軽自動車の販売総数は、2020年1~7月で18万9264台になった。ダイハツの29万4073台、スズキの28万9746台に比べると10万台以上少ないため、両社の軽自動車販売順位がホンダに抜かれる心配はないが、ユーザーは着実に奪われている。
例えば2013年に発売された先代タントは、2014年には先代N-BOXを押さえて国内販売の1位になったが、現行タントは2019年に登場しながら、2020年の売れ行きはN-BOXの64%だ。
以前は背の高い軽自動車はタントも定番だったが、今は圧倒的にN-BOXで、SUV風のギアを加えたスペーシアも伸びてきた。
いっぽう日産は2011年以降、新型車の国内発売を滞らせ、生産を終えたキューブ、設計の古くなったマーチなどのユーザーが、軽自動車のデイズやルークスに乗り替えている。
その結果、2020年1~7月には、日産の軽自動車届け出台数も11万6275台となり、日本国内で売られる日産車の42%を軽自動車が占める。
タントに買い得グレードを設定するも奏功せず
以上のようにタントを始めとする主力車種の販売不振、小型車の販売増加でダイハツは軽自動車の売れ行きが伸び悩んでいる。
そのいっぽうでスズキは、スペーシアなどの堅調によりダイハツとの台数差を詰めた。ホンダと日産も軽自動車に力を入れて、新規顧客を中心にユーザーを奪っている。
そうなるとダイハツは魅力的な新しい商品を投入せねばならない。
そこでタントは、2019年から2020年にかけて、モデル末期に設定するような格安の特別仕様車(セレクションシリーズとXスペシャル)を加えた。しかし売れ行きが持ち直さない。
今後はタフトが期待されるが、その売れ方次第では、さらに買い得な特別仕様車を加えたり、スペーシアギアに相当するSUV風の派生車種をタントに用意する必要も生じる。
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