大きく変わる新車販売 新車発表と発売のズレによる弊害と事情


事前予約はメーカーの事情

 なぜ実車も見られない発売の数カ月前から予約受注を開始するのか。メーカーの商品企画担当者に尋ねると、以下のような返答だった。

「予約受注を行うと、生産を開始する前に、需要を予測できる。売れ筋のパワートレーン、グレード、オプションなども予めわかるから、生産計画を立てやすい」

 納得できる説明だが、以前は予約受注など行っていなかった。

日産のクロスオーバーEVのアリアは2021年秋の発売ながら、その約1年前にデザイン、機能を公開。これでは新車への期待感が薄まってしまう

 発表前に東京モーターショーなどで披露された場合を除くと、発売まで秘密を守り、新型車の情報は露出させなかった。

 その代わり発売と同時にCMを放送して、週末に販売店へ出かけると、展示車も用意されている。世の中がすべて新型車に染まった。

 三菱のOBは、「1976年に初代ギャランΣ(シグマ)を発売した時は、販売店の入口から歩道に長い行列ができた。警察から注意を受けたほどだ」と振り返る。

 新型車が登場すると、どこの販売店も盛況で、売れ行きも一気に伸びた。そして従来型は、新型車の発売まで、しっかりと売り切った。

日産は新車計画をほのめかす戦略をゴーン氏時代から一貫として展開。株価に影響を与えるためかもしれないが、新車効果が薄くない要因でもある

 だからこそ、従来型の買い控えを抑えるために、新型車は秘密を守る必要があった。

 カタログの色校正紙が漏洩して自動車雑誌にわたり、スクープ記事に発展した時は、メーカーが印刷会社を訴えて窃盗事件に発展した。編集者が警察から事情聴取を受けたりした。

納期が長引くことのデメリットは多岐にわたる

 それが今では数か月前に外観を披露して、次は販売店に行けば価格などがわかる予約受注を行い、価格や各種データを公表する発表を経て、納車も行われる発売に至る。

 ユーザーから見れば、従来型の販売がいつ終わり、新型車がいつ登場したのかわからない。これでは新車市場も盛り上がらない。

フィットは東京モーターショー2019で公開後発売を開始する予定だったが、不具合が見つかったため、2020年2月まで発売延期となった

 そして「予約受注を行えば、売れ筋のパワートレーン、グレード、オプションなどが予めわかる」のは、メーカーの需要予測能力が衰えたことを示す。

 予約受注によってメーカーが簡単に生産計画を立てやすくなる代わりに、ユーザーは注文から納車まで長い期間待たされる。販売店も顧客のケアに追われるのだ。

 今は新車需要の80~90%が乗り替えに基づき、ユーザーは車検期間の満了に合わせて納車を希望する。

ヤリスは東京モーターショー2019の直前に市販モデルを公開。しかしデビューは2020年2月だから、事前予約に費やした期間も長く初期受注の多さにつながった

 そうなると納期が長ければ、新車の納車前に、下取りに出す愛車が車検を迎えてしまう。車検を取り直したり、クルマを持たない期間を過ごさねばならない。

 納期が長引くと、下取り車の価値も下がる。予約受注の時に査定を受けても、納車時に改めて価値を判断する必要が生じる。数々の面倒が発生するのだ。

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