近年、日本で売れているのは燃費がよくて安全装備が充実したクルマがほとんど。そんな今、そういった売れ筋カーや定番カーにはない「クセの強ーい」現行車10選・中古車5選を紹介!
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※本稿は2020年9月のものです
文/岡本幸一郎、伊達軍曹、写真/ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年10月26日号
■PART01 現行新車で選ぶクセ強グルマ
(TEXT/岡本幸一郎)
よくいえば「個性」、悪くいえば「違和感」。「クセ」といえばラテン系のお家芸という印象が強いが、最近は一概にそうでもなくなったものの、それでもラテン系にかぎらず欧州のコンパクトカーにはいまだにクセのあるクルマが少なくない。
筆頭はフィアット500のツインエア。このクルマ、見た目からしてタダモノではないけど、乗っても21世紀のクルマとは思えない感覚。
デュアロジック(5連AMT)にクセがあるのは言うまでもないとして、2気筒エンジンのツインエアのあの「ボー」という音と独特の加速もひとクセある。
さらにはショートホイールベースで重心が高いから操縦性もおぼつかないけど、これらはすべてチンクの“味”として許せてしまう。
逆に、似たようなクセなのに許せないのがVW up!だ。AGS(5速AMT)は出た当初よりはよくなったとはいえ、依然としてクセモノ。
誰もVWにこんな味は求めてない。それはそうだ。現に最初はけっこう売れたのにすぐに中古車市場に流れたもんね。
でもクルマとしての完成度はさすがはVWだし、シンプルな“素”のよさがある。ミッションくらい大目に見てあげられる人へ。もしくはMTのGTIもあることだし。
あるいはルノートゥインゴ。こちらのEDCはAMTではなくDCTなんだけど、なぜかAMTのようなクセが見受けられる。
さらにトゥインゴは、このサイズで後輪駆動、しかもRRというのがポイント。
決してクセが強くて乗りにくいというわけではなく、操縦性がRRならではで独特ということで、よい意味でクセがあるということにしたい。
ちなみにとりわけフランス車はクセが強いと思われがちだけど、いま時はぜんぜんそうでもない。シトロエンも普通に乗れるし、プジョーもルノーもいたって普通だ。
そしてBMW i3。
これまたパッケージングが独特だけど、リアヘビーで、世界でコレだけという大径で細くて偏平なタイヤを履くせいか、運転がヘタになったような気がするほど高速巡行時にアッチコッチいったことを思い出す。
ワンペダルによる加減速の感覚もひとクセあり。クルマはちょっとくらいクセがあるほうが面白いという人へ。
さてほかに何があるだろうと考えた時に、思い浮かんだのがガラリと変わって、ロータスエキシージだ。
いま時の高価なスーパースポーツは、どれも快適でクセらしいクセがない。それはそうだ。快適に乗れないと買ってもらえないもんね。
ところがロータスだけは我が道を行く。とにかくスパルタン。パワステもなければ、クラッチも激オモ。
すべてが“素”の感じで、ステアリングのキックバックや路面からの衝撃など、あらゆるものがダイレクトに伝わってくる。
なかでもエキシージはエンジンが激ハヤで音も派手。このクセは好きな人ならやみつきになりそうだ。
スパルタンといえばスポーツカー界でも屈指の存在がメルセデスAMG GTだ。
最新版は最初ほどではないけど、出た当初の乗り心地ときたら、段差を通過するたび地響きを感じたほど。エンジンもハンドリングもハッチャケていて、ドライブフィールはチョー刺激的だ。
一方、高性能車が増えているSUVで、クセの強さという意味ではこのクルマの右に出るものはいない。アルファロメオ ステルヴィオだ。
とにかくハンドリングが驚くほどクイック。最強のクアドリフォリオだと、510psを叩き出したエンジンがまた強烈だ。ただし、決してクセがあって乗りにくいというわけではないので、誤解のないように。
あるいはシトロエン。C3系あたりはあまりクセもなく、C5エアクロスもクセが強いというと少々語弊があるんだけど、こんなに足回りがソフトでストローク感があって乗り心地が快適なクルマは他にない。
それに世のSUVが軒並みスポーティになるなかで、ゆったりと落ち着いた操縦感覚も独特なことから、乗り味があまりに印象的だったので選んだ。
そして本格オフローダーもやっぱり乗用車に比べるとクセは強め。ジープ ラングラーもスズキジムニーも現行型になって一気にクセが薄れた(特にGクラス)とはいえ、この2台は車内の雰囲気や運転して感じるいろいろな感覚に、よい意味で往年の味わいが色濃く残っているよね。
■旧型中古で選ぶクセ強グルマ
(TEXT/伊達軍曹)
ちょっと前までの中古車なら、特に「他人のことなど知らん! 俺は俺の生きたいように生きるぜ!」と考えている欧州人が作ったクルマであれば、クセ強系の(それでいてナイスな)クルマは簡単に見つけることができる。
例えばイタリアのフィアットが2000年代に販売していた2列×3人がけシートのMPVであるムルティプラ。
前期型の深海魚のようなフェイスは、さかなクンならずとも「ギョギョッ?」という感じで、初代BMW6シリーズが世界一美しいクーペであるならば、こちらは「世界一醜いクルマ」。
しかしその走りは超一級品で、上手い人が乗れば、下手クソが乗るスポーツカーをコーナーでぶっちぎることも普通に可能だ。
中身は素晴らしいのに顔のクセが妙に強いといえば、フランスはシトロエンのアッパーミドルである初代C5も忘れてはいけない。
これの次に登場した最終型C5は立派なイケメンになったのだが、初代はなぜか謎の東南アジア系フェイス。フランス人の高度すぎる(?)デザインセンスに世界が困惑した。
しかし、これまた乗ってみれば本当に素晴らしいセダンで、東南アジアフェイスと実力との落差はあまりにも味わい深い。
「……もう少しカッコいいクセ強中古車はないのか?」とのクレームも来そうなので、カッコいいやつをご紹介しよう。先代メルセデスベンツCクラスのAMGモデルであるC63 AMGだ。
昨今はAMGですらダウンサイジングターボを積極的に採用しているが、この時代のC63 AMGは怒涛の自然吸気6.2L V8。最高出力は457psで、ブレーキは強力だが、その気になればいつでも死ねるくらい猛烈に速い。
ただし税金も猛烈で、自動車税は年額11万円。このクセの強い(?)自動車税に耐える自信があるならば、ぜひとも入手したい名車だ。
逆に「エンジンと車体が小さすぎ!」というのがフィアット500だろうか。
現在売られているアレではなく、1950年代から1970年代にかけて「NUOVA500」として販売された、ルパン三世の劇中車としても知られるアレである。
エンジンは0.5Lの直2OHVと石器時代のようにシンプルで、全長はわずか2970mm。これに乗ればすべてが“非日常”へと変化するだろう。
国産の中古車でクセが強いといえば、やはりスズキX-90だろうか。
SUVなのに2シーター、都会派志向のクロスオーバー車なのにラダーフレームという、すべてが謎な、大変に素晴らしいクセ強名車(迷車)であった。