日産ジューク10周年! SUVのパイオニアが残した功績と複雑な事情


新型ジューク誕生も「日本ではキックス」

 しかし、その後フルモデルチェンジをされることなく10年近い歳月が過ぎたのである。そして昨年、欧州向けに2代目が誕生した。一方、日本へは導入されず、替わってキックスが今年発売された。

フルモデルチェンジをされることなく、歳月が過ぎ、2019年に欧州向けの2代目ジュークが誕生した。日本にはジュークではなく、翌年2020年にキックスが導入された

 欧州向けの2代目ジュークと、日本に導入されたキックスの車体寸法は、ほぼ同じといえる。キックスは全長がやや長く、全幅はやや狭く、全高が少し高い。

 全長と全高は、荷室や客室の空間をより大きくとった結果といえそうだ。全幅の狭さは、国内の道路事情などでより便利になるだろう。

 日産の広報は、2代目ジュークに替えてキックスを日本へ導入した理由として、「ジュークがより造形を重視した車種であるのに対し、キックスはSUVとしての実用性に勝る点で、日本の消費者の嗜好に合うと考えた」と述べている。

日本へ向けたキックスは、日産特有のハイブリッドシステム e-POWER車として販売となった。日産広報によると、「キックスはSUVとしての実用性に勝る点で、日本の消費者の嗜好に合うと考えた」とのことだ。

 そのうえで、日本へ向けたキックスは、日産特有のシリーズハイブリッドであるe-POWER車としての販売となった。これは、ノートやセレナでの高い人気を意識してのことだろう。

 それに対し、欧州のジュークや、ブラジルなどで先行発売されてきたキックスは、エンジン車のみでの販売だ。エンジン車を販売する国々は、コンパクトSUVといえば大衆車に近い感覚であり、販売価格に対し厳しい目線が送られる市場といえる。

 日本も、高すぎる車種では困るが、e-POWERのような付加価値があれば、消費者の購入動機につながる。実際、キックスが発売されると受注が殺到し、年内の納車が間に合うかというほどであった。

キックスを導入した日産の戦略とその価値は?

キックスe-POWERに搭載されたは大幅に改良された。単にモーターによる加速特性だけでなく、静粛性の面でも改良され、より電気自動車らしい雰囲気を味わえるようになった

 日産の戦略、ジュークからキックスへの転換は、的を射た成果といえるだろう。キックスは、昨今の日産車的な顔つきはもちろん、外観の造形もかつてほど度肝を抜くような様子ではないが、存在感は充分にあり、クルマ全体の調和もとれている。

 日産車として3台目となるe-POWERは、キックス搭載に当たり大幅に改良が施された。走行はモーターのみによって行い、必要な電力をガソリンエンジンで発電するのがe-POWERだが、従来はエンジン音がかなり耳に届き、モーター走行の静粛さを実感しにくかった。

 しかしキックスでは、搭載するリチウムイオンバッテリーの電力をできるだけ使い切る制御が採用され、市街地走行など低い速度域では可能な限りエンジンを始動しないようにしている。

 この結果、単にモーターによる加速特性だけでなく、静粛性の面でも、より電気自動車(EV)らしい雰囲気を味わえるようになった。

 一言で表現すれば、「充電の必要がないEV」とでもいえそうな、そんな感触だ。そして発電のためエンジンが始動しても、エンジン音をそれほど意識しないで済むようにもなっている。全体的な静粛性が改善されたといえる。

日産車共通の骨太な乗り心地で、確かな手ごたえと快適性が両立されている。さらに目線は高くてもカーブや車線変更で車体の傾きが少ない

 シャシー性能もよく作り込まれ、日産車に共通の骨太な乗り心地で、確かな手ごたえと快適性が両立されている。背の高いSUVだが、目線は高くてもカーブや車線変更で車体の傾きが少なく、乗用車感覚で運転できる。

 ジュークを継承するのではなく、それに代替することで充分に性能や商品性が練られたクルマにキックスはなっている。

 もちろん、2代目ジュークが気になる消費者もあるかもしれないが、キックス導入は、販売台数の推移を見ても正解であったのではないだろうか。

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