電動化に対抗し得る選択肢となるか!? マツダの新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」に、早くも改良版登場。気になるその進化とは?
菅総理は所信表明で2050年にはCO2排出量をゼロにすると明言した。欧州も中国(2060年)も同じような発表を行っていて世界の流れとなっている。こと自動車産業だけに目を向けるとEVというチョイスしかないように思われる。
しかし、EVは走行時にはCO2排出ゼロだけれども、そのエネルギー源となる電力を作るには火力発電をゼロにしなくてはならず、また車体の製造、特にEVの心臓ともいえるバッテリーの製造に多大なCO2を発生するので、製造→走行→廃棄までの生涯CO2発生量という見地ではEVもガソリン車(内燃機関)も変わらないというデータがあるのだ。
さらにEVを普及させるには充電に対するインフラの整備も必須で、なによりも現行バッテリーの主要形式であるリチウムイオン電池の生産が追い付いていないという現実がある。
特にリチウムイオン電池生産では政府の厚い保護を受けた中国企業がトップシェアであり、自動車産業における世界雇用の流れも変貌する可能性があるのだ。
仮にCO2ゼロが可能になるとしても30年先までの期間を何らかの方法で内燃機関の効率を上げる必要がある。
現在、多くの自動車メーカーのストラテジーはEVにのみシフトしていて、足元の内燃機関開発は止まっているようにしか見えない。
その原因となっているのが欧州におけるCAFÉなどの排出規制で、EVの数を増やすことで全体のCO2排出量を下げて対応しようとしているわけだ。
さて、そんな環境のなかマツダは昨年から発売中のSKYACTIV-Xの改良版を発表した。
文/松田秀士、写真/マツダ
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マツダ独自のSKYACTIV-X 改良ポイントは?
SKYACTIV-Xは、ガソリンエンジンでディーゼルエンジンのように圧縮着火させる技術。これによって少ないガソリンを完全燃焼させて環境性能の高いガソリンエンジンとしている。
この技術は世界の自動車メーカーがチャレンジしながらマツダだけが量産にこぎつけた高度な技術だ。では、どのような改良なのかというとハードウェアはそのままにソフトウェアのアップデートである。
今回の改良をマツダでは「SPIRIT#1.1」と命名していて、1.1の1の位はハードウェア、0.1の位はソフトウェアを表すのだという。つまり今回は1.0→1.1となりソフトウェアのアップデートなのだ。
試乗会場となったのは山口県・美祢にあるマツダのテストコース。元々はMINEというサーキットだった場所。このレーシングコースと観客移動用だったレーシングコースを囲むワインディング路だ。
まずSKYACTIV-Xエンジンを搭載する現行マツダ3から試乗する。ダッシュボード上のセンターディスプレイには4発並んだピストンのシルエットとSPCCIの文字が浮かび、圧縮着火状態の時はそれらが一斉にグリーン表示となる。圧縮着火をしていないときにはレッド表示だ。
SPCCIとは、火花点火制御圧縮着火といい、圧縮着火をスムーズに行わせるための気体膨脹に誘導する火花着火のことだ。これがマツダの独自技術で、プラグを持つがゆえに通常のガソリンエンジンのようにプラグ着火も行える。
サーキットコースゆえに遠慮なくアクセル全開で走り始める。6速ATモデルだ。いたってスムーズに6000回転強まで引っ張りシフトアップしてゆく。
感心するのは普通のガソリンエンジンと変わらぬ加速力で、センターディスプレイの表示もほとんどの領域でグリーン表示している。
ただし、アクセルオフ時と5000回転以上でレッド表示となる。つまりアクセルオフ時は燃料を使わないからレッド表示。5000回転以上は高回転の加速領域であるゆえにプラグ着火を行っているからこちらもレッド表示となる。
つまり5000回転まではどのようなアクセル操作をしようともほとんどグリーン表示となり、超希薄燃焼の圧縮着火を行っているのだ。2.0L・4気筒エンジンのパワーは180ps/224Nm。
2019年に行われたドイツでの試乗会ではアウトバーンでストレスなく160km/hまで引っ張った。一通りの走行ではまったく不満なくドライブできる。
サスペンションを含めたハンドリングもマツダ3ならではの軽快なフットワーク。
今回、車体側のアップデートはないということなので、着目はパワーフィールに絞られる。
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