11月も後半に入り、朝晩は寒い日も増えてきた。だからというわけではないが、クルマのカタログや装備表を見ているとちょっと気になることがあるのが「寒冷地仕様」というオプションである。
寒冷地仕様は文字どおり降雪地帯に代表される寒冷地に対応した装備が加わるものなのだが、当記事では寒冷地仕様の具体的な内容やメリット&デメリットなどを、自身が最近購入したGRヤリスも寒冷地仕様を選択した筆者が解説する。
文/永田恵一、写真/TOYOTA、池之平昌信、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】後の祭りとならないように超重要!! 寒冷地仕様の性能向上ポイントを教えます!!
寒冷地仕様に加わる代表的な装備
寒冷地仕様がどのようなものなのかわからない人も多いと思う。そこでまずは、寒冷地仕様にするとどのような装備、機能が加わるのかについて、分野ごとに挙げていくと以下のようになる。
●エンジン関係
・冷却水のクーラント(不凍液)の濃度アップ
・オルタネーター(発電機)の強化
・バッテリーの強化
・エンジンを掛けるセルモーターの強化
●寒さ対策
・ヒーターの強化
・オプションでの選択が可能になる場合も含めたステアリングヒーターの装着
●視界確保
・ウォッシャータンクの大容量化
・セダンでのオプション装着が可能になる場合も含めたリアワイパーの装着
・オプションでの選択が可能になる場合も含めたリアフォグランプの装着
・ワイパーモーターの強化
・ウインドシールドデアイサーなどと呼ばれるフロントガラスの熱線
・ドアミラーヒーター
などとなっており、なかなか多彩である。
GRヤリスRZハイパフォーマンスの寒冷地仕様の内容
・クーラントの濃度アップ(-15℃で凍結する30%から凍結が-35℃となる50%)
・フロントガラスの撥水機能
・ワイパーモーターの強化
・ドアミラーヒーター
・ヒーターの強化
といった具合で、価格は1万7600円である。
筆者は雨の日の視界確保にもありがたいドアミラーヒーターと、前述のウインドシールドデアイサーが欲しかったため寒冷地仕様を選んだ。
しかし、5ドアのヤリスの寒冷地仕様にはウインドシールドデアイサーが付くためGRヤリスの寒冷地仕様にも付いていると思い込んでいたところ、納車翌日に見てみたらウインドシールドデアイサーはなかった。
筆者はカタログモデルのGRヤリスが出る前のファーストエディションを慌てるように注文したため、寒冷地仕様の詳細な内容までは把握できなかった。
GRヤリスの競技用グレードのRCの寒冷地仕様にはインタークーラーの冷却スプレーがオプション装着できないことから察するに、インタークーラーの冷却スプレーが標準装備となるためRZハイパフォーマンスにはウインドシールドデアイサーは付かないようだ。
あとの祭りではあるが、カタログモデルのGRヤリスのカタログで寒冷地仕様の価格を見ると標準のRZは2万3100円とRZハイパフォーマンスの1万7600円より高く、「その時にRZハイパフォーマンスの寒冷地仕様にウインドシールドデアイサーはないと気づけよ」というのがこの話の笑えるオチである。
まあ筆者がGRヤリスで寒冷地仕様を選んだことに関しては、ドアミラーヒーターが付くだけでも納得はしている。
寒冷地仕様のオモシロ&便利装備
寒冷地仕様に代表的な装備に加え特徴的なものが付くのはトヨタ車である。それ以前にトヨタ車は車種別Q&Aがあり、その中に寒冷地仕様の内容がPDFで詳細に紹介していることが偉い。
それでは具体的に何台か挙げていくことにする。
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・フロントフェンダサイドパネルプロテクタ
フロントフェンダーとボディの隙間をシールリングするもので、寒冷地でのドアヒンジ部の凍結防⽌に配慮し、雪の日のドアの開閉に問題が出ないようにする。
プロボックス
・クォーターストーンプロテクター
タイヤが跳ね上げた飛び石によるボディの傷つきを防止するための透明なテープ。
・リアのけん引フック
プロボックスは寒冷地でそんなに突っ込んだり、クルマを引っ張ってあげることが多いのだろうか?
ハイラックス
・ビスカスヒーター
エンジンの動⼒を使ってビスカス=粘性物質を掻き回して発熱させる、室内暖房の補助システム。
・ステンレス製ネット付きカウルルーバー
外気導入口からの雪が入るのを防止する。
ランドクルーザープラド
・ディーゼル車のバッテリーの強化
バッテリーが1つから2つ!
・ウォッシャー液レベルワーニング
ウォッシャー液の残量が僅かになると、警告が表示される。
ハイエース
・ボディのコート(塗装)の層アップ
粉塵が刺さった際の錆防止のため。
・ディーゼル車のマニュアルアイドルアップ
ヒーターの効きを早めるため。
・ステップ&ステップカバーロアスカッフ
スライドドアからの乗降の際の滑り止め。
・ガソリン車(標準幅)のスノーモード
滑りやすい道で発進しやすくするもの。
特にハイエースの寒冷地仕様でのきめ細かい対応は特筆モノで、寒冷地仕様ひとつとってみてもトヨタ車やハイエースが売れている理由がよくわかる。
寒冷地仕様のメーカーによる設定の違い
トヨタ、日産、ダイハツはオプション、ホンダ、マツダ、スバル、スズキ、輸入車は標準状態で寒冷地対応となっており、寒冷地仕様の設定はない。
寒冷地仕様のオプション価格は1万円から3万円が相場だ。
寒冷地仕様のデメリット
まずバッテリーの強化による重量増と交換の際の費用の高さはデメリットだ。
またクーラントの濃度アップもサーキット走行などのスポーツ走行をする際には水温が高い傾向になり、好ましくはない。
ただ、クーラントのほうは調整すればすむ話で、筆者のGRヤリスもクーラントの濃度は標準にしてもいいかと思っている。
寒冷地仕様のデメリットはこのくらいなのに加え、寒冷地仕様のオプション価格は内容を考えるとリーズナブルだ。
加わる装備に2つか3つ欲しいものがあれば、特に仕様を選べる新車を買う際には寒冷地仕様を選ぶことを勧める。