憧れの新車を手にする最大のハードルが、高額な費用だろう。その負担を減らすべく、購入した新車でアルバイトをさせてくれる!!? 販売店があるという噂を耳にした。そんな嘘みたいな話の真偽を確かめるべく、さっそく実態調査に乗り出した。
【画像ギャラリー】すべては「顧客に選ばれる店」になるために…! 埼玉トヨペットの取り組みをギャラリーでチェック!!!
※本稿は2020年11月のものです
文/大音安弘、写真/埼玉トヨペット
初出:『ベストカー』 2020年12月26日号
■愛車にステッカーを貼るだけで稼げてしまう!?
「愛車に稼がせる」という夢のようなシステムを実現させたのは、埼玉県でトヨタ新車ディーラーを展開する埼玉トヨペットだ。
これは「ハルバイト」というシステムで、同店で購入した新車に、ただ宣伝用のステッカーを貼るだけで、一定期間、毎月バイト代が支払われるというもの。
お店の宣伝と聞くと、野暮なデザインのものを想像させるが、ステッカーデザインはお洒落で、貼るのもリアガラスやサイドガラスと、邪魔にならない箇所だ。
目撃した人は、販売店名に気づいても、まさかこれがバイトとは夢にも思うまい。
気になるバイト代だが、ステッカーのサイズや箇所により車種ごとに規定されている。
アルバイトの期間は、新車引き渡し後、3年または5年の契約。月々のバイト代は、最初の3年間だと2000円から5000円。
5年契約の場合、車検後の2年間は、当初の半額が月々に支払われる。ステッカーの確認は、定期点検時に行われるため、半年毎の支払いとなる。
具体例として、最もギャラのいいアルファード/ヴェルファイアだと、リアウィンドウ、サイドウィンドウ左右の3カ所に、専用のステッカーを装着するだけで、月々5000円が支払われる。その総額は3年間で18万円!
5年間だと、24万円にもなるというから衝撃的だ。
購入時に残価設定ローンである「ハッピーライフプラン」を利用し、定期メンテナンスパック「スマイルパスポート」とクレジットカード「TOYOTA TSキュービックカード」の加入が条件となるが、今や残価設定ローンでの新車購入者も多いだけに、ハードルに感じる人は少ないはずだ。
ちなみに、バイト代は、同店のみで使用できる専用ポイントとして受け取ると、よりお得になる。
■アルファードなどの人気車専門中古車店も展開!
埼玉トヨペットのユニークな取り組みは、中古車専門店「U-carランド一平」にもある。なんと一部の店舗が、車種専用化されているのだ。
例えば、一平大宮店はアルファード専門店。店頭を埋め尽くす約80台の在庫すべてが現行型アルファード! その光景は、まさに圧巻のひと言で、“珍”な光景が広がる。
このほかにもハリアー専門店(一平川越店)、ハイエース専門店(戸田支店)、クラウン専門店(一平与野店)などがある。
これは中古車を検討する顧客が、販売店一カ所で好みの一台を比較検討できるようにという配慮だそう。
品質と保証の面からディーラー中古車店にこだわるユーザーも多いだけに、嬉しい心遣いだ。
■コンプリートカーも製作! レースにも参戦!!!
さらに埼玉トヨペットでは、オリジナルカーの製作販売も行う。その代表例が、コンプリートカー「グリーンブレイズ」だ。
アルファードとクラウンをベースに、「クールホールディングス」と共同開発したエアロパーツやTWS製鍛造ホイールなどを装着。さらにボンネットには、グラインダーペイントまで施される。
これらは、埼玉トヨペットのモータースポーツ活動「グリーンブレイブ」の取り組みから誕生したもので、エアロパーツは、風洞試験を行い、開発した本格派。
そのクラウンのエアロは、今期よりスーパー耐久を戦うクラウンのレースカーにも装着されている。
■独自の手法でクルマの楽しさを提案
埼玉の一トヨタ販売店が独自路線を歩むのは、すべて顧客に選ばれる店になるための努力だ。
新車販売が減少するなか、トヨタ販売店の全車種取り扱いにより、販社同士の生存競争も激化。
そこでクルマを売るだけでなく、楽しさや買いやすさも提案。またイベントなどを通じて顧客との接点を増やし、リピーター獲得にも励んでいる。
「新車にアルバイトさせる」という奇想天外なアイデアは、激動の時代での生き残りをかけた販売店による驚きの戦略のひとつであった。