新型からはストロングハイブリッドが消滅
そして2020年にスズキで最も多く売られた小型/普通車がソリオであった。ソリオは歴代モデルにわたり全長と全幅が小さく、なおかつ全高は1700mmを上回る。運転しやすいコンパクトなボディと、広い室内を併せ持つ。
後席側のドアは、2世代前からスライド式を採用して、スペーシアのような背の高い軽自動車、あるいはミニバンに準じた空間効率と使い勝手を備える。ソリオは軽自動車の空間効率を生かしたクルマ造りで、売れ行きを伸ばした。
ソリオは2020年11月にフルモデルチェンジを行ったから(発売は12月)、2020年の大半は先代型を売っていた。売れ行きが最も下がる時期だが、登録台数は1カ月平均で3362台となり、インプレッサを上回った。
先代ソリオは、2015年にマイルドハイブリッドを搭載して発売され、2016年にはストロングハイブリッドも追加した。2種類のハイブリッドを用意する車種は珍しい。
ところがフルモデルチェンジされた新型ソリオには、ストロングハイブリッドが用意されない。
これから2030年に向けて、規制に対応する意味でも燃費性能を向上させる必要があるが、新型ソリオは本格的なストロングハイブリッドを廃止した。背景にはどのような理由があるのか。
販社はストロングハイブリッドを積極的に売らなかった!?
この点を開発者に尋ねると、「ソリオ全体に占める(ストロングハイブリッドの)比率は、5~10%と低かった。売れ行きが伸びなかったから廃止した」という。
ストロングハイブリッドの比率が低い理由として、マイルドハイブリッドと比べた時の燃費と価格のバランスがあった。
先代ソリオのストロングハイブリッドの価格は、マイルドハイブリッドに比べて22万円ほど高かったが、当時のJC08モード燃費はストロングハイブリッドが32.0km/L、マイルドは27.8km/Lであった。
そうなるとレギュラーガソリン価格が1Lあたり140円、実用燃費をJC08モードの85%で計算して、価格差を燃料代の差額で取り戻すには27~28万kmの走行を要する。ストロングハイブリッド搭載車を購入しても、燃料代でトクをするのは難しい。
トランスミッションの違いもあった。ストロングハイブリッドに組み合わせるのは、5速AGS(オートギヤシフト)だ。1組のクラッチを使う有段式の電子制御ATになる。
このATは、マイルドハイブリッドが搭載する一般的なCVT(無段変速AT)に比べると、加速時のシフトアップが滑らかに行われにくい。シフトアップに時間が掛かり、エンジン回転を下げてしまうからだ。
そこでスズキの5速AGSは、シフトアップのタイミングを見計らって、反応の素早いモーターの駆動力を強める制御を行う。
この効果により、1組のクラッチを使う有段ATの中では加速を滑らかに仕上げたが、それでも多くのユーザーが使い慣れたCVTとは運転感覚が違う。アクセルペダルを穏やかに操作すれば不満はないが、ラフに扱うと違和感が生じやすい。
こういった事情があるため、販売店では、「お客様にストロングハイブリッドを積極的に推奨する売り方はしていない」という。販売比率も前述の5~10%と伸び悩み、新型ソリオはストロングハイブリッドを採用しなかった。
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